ブライダルチェックを受ける割合は?受けるタイミングや助成金について解説

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
上野院 院長 婦人科 生殖医療科 医師
お二人の道のりが明るく照らされるよう「理解」と「納得」の上で選択いただく過程を大切にしています。エビデンスに基づいた高水準の医療提供により「幸せな家族計画の実現」をお手伝いさせていただきます。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

ブライダルチェックを受ける人の割合は、公的な機関から公表されているデータはありませんが、不妊症の検査や治療経験の割合などの調査結果は公表されています。この記事では夫婦調査の結果の詳細やブライダルチェックを受けるタイミング、メリット、費用などを解説します。ブライダルチェックを検討している場合はご覧ください。

ブライダルチェックを受ける割合は?

ブライダルチェックを受ける人の割合については、大きい規模で公的に集計されたデータは今のところありません。ブライダルチェック自体がクリニックによって定義や検査内容が異なるため、一律の統計を取ることが難しい面もあります。

ただし、参考になるデータとして不妊の検査や治療経験についての夫婦調査があります。国立社会保障・人口問題研究所が2021年に実施した第16回出生動向基本調査によると、不妊症の検査や治療経験がある夫婦の割合は22.7%、不妊の心配をしたことがある夫婦の割合は39.2%という結果が出ています1)

2002年に実施された第12回出生動向基本調査では、同じ質問に対する結果は、それぞれ12.7%と26.1%であり2)、約20年の間で不妊や妊孕性(にんようせい:妊娠する力)に対する関心は高まっていることがうかがえます。

調査名(実施年) 不妊症の検査や治療経験がある 不妊の心配をしたことがある
第12回出生動向基本調査
(2002年)
12.7% 26.1%
第16回出生動向基本調査
(2021年)
22.7% 39.2%

ブライダルチェックを受ける男女の割合は?

トーチクリニックにおけるプレコンセプションケア・ブライダルチェック外来をご受診された患者様の割合は、女性が53.7%、男性が46.3%という結果でした(2022年7月〜2024年6月における期間の割合)。

ブライダルチェックは女性の方が中心という印象もありますが、実際には男性の受診も一定数あり、男女ともに関心が広がっていることがわかります。

ブライダルチェックを受けるべきタイミング

ブライダルチェックを受ける適切なタイミングは、一律に決められるものではありません。しかし、将来的に妊娠や出産を考えている方にとって、自身の妊孕性の状態を早いうちに把握しておくことは、ライフプラン設計において参考になります。

特に、女性の場合、30歳を過ぎると妊孕性は徐々に低下し、35歳以降になるとその傾向が加速することが知られています3)

こうした背景から、結婚を意識し始めたときや、将来の妊娠に向けた検査を検討することを考えている場合には、ブライダルチェックを選択肢の一つとして早めに情報収集しておくことが役立つでしょう。

ブライダルチェックを受けるメリット

ブライダルチェックを受ける主なメリットは以下のとおりです。

メリット 詳細
病気の早期発見と不妊に関するリスクを把握 妊娠や出産に影響を及ぼす感染症、遺伝リスク、潜在的な
病気をいち早く見つけ、予防や治療につなげられる
将来に向けて計画が立てやすくなる 夫婦で健康状態を共有できるため、子どもの人数や授かる
時期、費用を含めた家族計画やキャリア設計を具体的に
立てられる
パートナーと協力して健康改善に取り組める 女性はホルモンバランスや鉄分不足、男性は精子の状態
などを確認することで、生活習慣の見直しや改善に取り
組むきっかけとなる

このように、検査結果を参考に不妊治療の方針を立てたり、日々の生活習慣を整えたりすることで、不安を軽減し妊娠に向けた準備を進めやすくなります。

ブライダルチェックの検査内容・費用

ブライダルチェックの費用は、医療機関や検査の組み合わせによって異なります。

一般的には、15,000~50,000円程度が費用の相場です。ただし費用が安いという理由だけで判断すると、必要な検査を受け損ねる可能性があるため、ご自身の目的に合った検査項目が含まれているか確認するのが重要です。

ここでは、トーチクリニックの検査プランを例に、具体的な検査内容と費用をご紹介します。

女性のブライダルチェック

トーチクリニックでは、目的や状況に合わせて3つのプランをご用意しています。

プラン(費用) 内容
ライトセット(12,200円) 卵子の数や子宮・卵巣の状態を知りたい方向けのプ
ラン。超音波検査、AMH(抗ミュラー管ホルモン)
検査が含まれる
妊活セット(46,100円) これから本格的に妊活を考えている方や、現在妊活
中の方向けのプラン。ライトセットの内容に加え、
以下を行う。
・女性ホルモン基礎値
・プロラクチン
・クラミジア抗体検査
・風疹抗体検査
・感染症検査(HIVなど)
・甲状腺検査
・ビタミンD検査
・ホモシステイン(妊活に必要な栄養が体内で代謝
されているかのチェック)
・血算(貧血や感染症等)
・ミネラル(鉄、フェリチン)
フルスクリーニングセット(56,200円) より詳しく妊活に関わる検査を受けたい方向けのプ
ラン。ライトセット、妊活セットのすべての内容に加
え、以下の検査を行う。
・ミネラル(鉄、フェリチン、亜鉛)
・子宮頸がん(細胞診)
・血糖(随時)
・HbA1c

女性のブライダルチェックの詳細に関しては、こちらのページをご覧ください。

関連ページ:女性ブライダルチェック

男性のブライダルチェック

男性のブライダルチェックも、状況に合わせた3つのプランから選べます。

プラン(費用) 内容
ライトセット(3,000円) 将来に備えて、気軽に検査したい方向けのプラン。精
液検査が含まれる。
妊活セット(20,500円) これから本格的に妊活を考えている方向けのプラン。
ライトセットの内容に加え、以下を行う。
・男性ホルモン基礎値
・クラミジア抗体検査
・風疹抗体検査
・感染症検査(HIV等)
フルスクリーニングセット(42,500円) より詳しく妊活に関わる検査を受けたい方向けのプ
ラン。ライトセット、妊活セットのすべての内容に加
え、以下を行う。
・DFI検査(精子のDNA損傷を調べる)
・TAC検査(精子の酸化ストレスを調べる)

男性のブライダルチェックの詳細に関しては、こちらのページをご覧ください。

関連ページ:男性ブライダルチェック

ブライダルチェックにおける保険適用の有無

ブライダルチェックは、病気の治療を目的とした検査ではないため、基本的に健康保険は適用されず、全額自己負担となります。

ただし、検査の過程で何らかの病気や異常が見つかり、保険診療に該当する症状があった場合には、部分的に保険適用される場合もあります。念のため、保険証を持参するようにしましょう。

ブライダルチェックに利用できる可能性がある助成金(東京都)

ブライダルチェックは自費診療ですが、自治体によっては助成制度を利用できる場合があります。東京都では、以下のような助成制度があります。

助成制度 内容
不妊検査等助成事業 都内の医療機関で行う不妊検査や一般不妊治療にか
かった費用の一部を助成する制度。夫婦1組につき1
回、上限50,000円まで助成される
TOKYOプレコンゼミ ・プレコンセプションケアに関わる取り組みの一環
で行われている、都内在住の18~39歳までの男女を
対象とした、妊娠・出産に関する無料の講座
・講座を修了し、検査のことを正しく理解した上で
希望する方は、自己負担額のうち最大30,000円の助
成を受けられる

ブライダルチェックと助成金については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

関連記事:ブライダルチェックで使える助成金とは?東京・神奈川・埼玉・千葉の制度や保険適用について解説

ブライダルチェックを受ける際のクリニックの選び方

ブライダルチェックは各医療機関によって検査内容や範囲が異なるため、「こう選べば良い」という明確な基準はありません。ただし、考え方の例として以下に挙げたようなポイントを考慮するのが良いでしょう。

確認事項 詳細
専門性、経験があるか ・ブライダルチェックに関する専門知識と経験があるか
・不妊治療に精通した医師が在籍しているか
どこまで検査が受けられるか ・最新の医療機器を備え、さまざまな検査が一度に行えるか
通いやすさ ・駅からのアクセス
・土日、夜間の診療に対応しているか
プライバシーへの配慮 ・個室の有無
・スタッフの対応

ブライダルチェックは男女で受けよう

ブライダルチェックは、女性だけでなく男性も一緒に受けることでメリットがあるケースがあります。

その理由として、不妊の原因は必ずしも女性側に多いわけではないという点があります。WHO(世界保健機関)の報告でも、不妊の原因の約48%は男性側もしくは男女両方にあるとされており、男女で検査することが重要といえます。

他にも、助成金の観点からも男女で受けるメリットがある場合があります。自治体で設けられている助成金制度では、夫婦の双方が検査を受けていることが条件となることがあります。

そして、男女のカップルで同じ情報を共有できるということにも意味があります。お互いの健康状態を理解することで、妊活や将来の家族計画について話し合いがしやすくなり、協力して取り組むきっかけにつながります。

ブライダルチェックを男女ペアで受けるメリットについては、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

関連記事:ブライダルチェックは男女ペアが良い?カップルで受けるメリットや検査内容について解説

ブライダルチェックに関するよくある質問

ブライダルチェックに関するよくある質問についてまとめました。

Q:ブライダルチェックは生理中でも受けられる?

医療機関によって詳細な方針は異なりますが、検査する女性ホルモンの種類によっては月経1~5日目での血液検査が推奨されるものもあります。そのため、生理中の受診が適しているケースもあります。医療機関のサイト等で確認するようにしましょう。

Q:ブライダルチェックと不妊検査の違いは?

ブライダルチェックと不妊検査は、目的が異なります。

ブライダルチェックは、これから妊活を予定している方が妊孕性や妊娠・出産に影響する病気がないかを確認するための検査です。

自覚症状がない段階で、幅広く健康状態を確認する検査であり、ご自身の状態を把握することができます。妊娠を考える上でのリスクの有無などを確認でき、将来の計画を立てるのに役立ちます。

一方、不妊検査は一定期間にわたって性行為があっても妊娠しない場合の原因を探るための検査です。もし不妊の原因が見つかれば、治療して妊娠・出産を目指します。

特に現時点で特定の問題を感じてない場合は、まずはブライダルチェックが選択肢のひとつとなります。

Q:プレコンセプションケアとは?

プレコンセプションケアとは、将来の妊娠に備えて、妊娠前から自身の健康状態を整えておく取り組みのことです。厚生労働省や日本産婦人科学会でも推奨されています。

具体的には以下のものです。

カテゴリ 具体的な取り組み
自身の健康 自分の健康状態や体のことについて把握する
生活習慣の見直し 食事、運動、ストレス管理など、日常生活を改善するため
の具体的な行動について把握、見直しを行う
医療機関との連携 自分のかかりつけ医を持ち、自分の健康状態を相談する
ライフプランの策定 将来の家族計画やライフスタイルを考慮し、自分に合った
健康管理を行う

東京都が実施している「TOKYOプレコンゼミ」は、東京都に住む18〜39歳の男女が無料で参加できる、プレコンセプションケアに関する講座です。パートナーや性別の有無にかかわらず受講でき、正しい知識を学ぶ機会となります。

TOKYOプレコンゼミに関しては以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。

関連記事:TOKYOプレコンゼミの検査と助成金とは?torch clinicで始めるプレコンセプションケア

Q:AMH検査で調べる内容は?

AMH検査(抗ミュラー管ホルモン検査)は、卵巣に残っている卵子の数を推測するための検査です。この数値は卵巣予備能の目安とされています。

ただし、AMHの数値が低くても妊娠できないわけではなく、逆に数値が高くても妊娠しやすいとは限りません。あくまで卵巣の年齢を測るための目安として考えましょう。AMHの検査結果によっては、治療が必要となる場合もあるため、詳しいことは医師に相談することが大切です。

AMH検査については以下の記事でも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

関連記事:AMH検査とは?目的や流れ・費用・受けるタイミングを解説

Q:精液検査で調べる内容は?

精液検査では、精子の量や精子の濃度、運動率、運動の質、精子の形などを調べます。

禁欲期間を2~3日程度設けた後に、マスターベーションで採精容器に精液の全量を採取していただきます。その後、顕微鏡を使って、精液量や精子の数、運動している精子の割合などを詳しく測定していきます。

精液検査の詳細については、以下のページをご覧ください。

関連ページ:精液検査

おわりに

トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

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また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考にしてください。

ブライダルチェック
ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

参考文献

1)国立社会保障・人口問題研究所. 第16回出生動向基本調査報告書(2021年調査). 国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_ReportALL.pdf

2)国立社会保障・人口問題研究所. 第12回出生動向基本調査報告書(2002年調査). 国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト
https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/DATA/pdf/129001.pdf

3)一般社団法人 日本生殖医学会. Q22.女性の加齢は不妊症にどんな影響を与えるのですか? 日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa22.html

4)東京都福祉局. 治療への初めの一歩〜医療機関探しについて~. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.ninkatsuka.metro.tokyo.lg.jp/column/column02.html