AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査は、卵胞が分泌するAMH値を測定する検査であり、卵巣に残っている卵子の数の目安を把握することができます。この記事ではAMHの基礎知識やAMH検査の費用、受けるタイミングなどを解説します。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査とは
AMH検査は、卵巣内の卵胞が成長過程で分泌するホルモン(AMH:抗ミュラー管ホルモン)の値を測定する検査です。AMHの値は、卵胞の数を間接的に反映するため、AMH検査は卵巣に残っている卵子の数(卵巣予備能)を知るための指標となります。
AMH検査は採血で行えるため、体への負担は比較的少なく、婦人科や不妊治療専門クリニックの不妊治療検査やブライダルチェックで実施されています。
抗ミュラー管ホルモン(AMH)とは?
AMHは、卵子を覆う細胞から分泌されるホルモンです。卵子は卵巣内で卵胞と呼ばれる袋の中で育ち、排卵されます。
卵胞は原子卵胞という状態から前胞状卵胞、成熟卵胞の順番に発育していきます。AMHは前胞状卵胞の顆粒膜細胞という部分から分泌されるため、AMHの値は卵巣に残っている卵胞に比例します。このため、AMHは卵子のおおよその残数を推測する指標となります。
卵胞の数が減るとAMH値も低下するため、年齢が上がるにつれてAMH値も下がっていきます。
卵子は生まれる前に作られ、その後は新たに増えることはありません。年齢ごとの卵子数は、次のように変化します1)。
AMHの値を知ることで、卵子数のおおよその目安を把握できるため、将来の妊娠計画を立てる際の参考になります。
AMH検査でわかる「卵巣予備能」とは
卵巣予備能とは、卵巣にどれだけ卵子が残っているかを示す指標です。
AMH検査は、この卵巣予備能を推測できますが、あくまで卵子の数の目安であり、卵子の質や妊娠のしやすさは測れません。妊娠の可能性は年齢や卵子の質、排卵や受精の状態など、他の要因にも大きく影響されます。
AMH値だけで妊娠できるかどうかを判断するのではなく、超音波検査やホルモン検査などと組み合わせて総合的に評価することが大切です。
AMHについては以下の診療内容ページでも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
関連ページ:AMH
AMH検査の費用と保険適用
AMH検査は2022年4月の診療報酬改定で、主に体外受精など高度生殖医療の場面を想定した、「調整卵巣刺激療法における治療方針の決定」を行う場合に保険適用となりました2)。そして、2024年6月には「卵巣機能の評価および治療方針の決定」を行う場合も保険適用となりました3)。AMH検査の保険点数と3割負担の費用は以下のとおりです4)。
※6か月に1回に限り算定できる
一方、ブライダルチェックに含まれるAMH検査は、通常は保険適用とならず自費診療となります。ブライダルチェックの費用はクリニックによって異なり、どのような検査を含めるかによっても変わります。
簡易プランだとAMH検査を含んだ上で10,000〜20,000円のものもありますが、通常プランだと30,000〜50,000円が一般的です。フルメニューの場合はさらに高い金額になることもあります。
ブライダルチェックを受ける場合は、金額面だけでなく検査内容もしっかり確認し、自分の目的にあったプランを選ぶようにしましょう。
トーチクリニックではAMH検査を含むブライダルチェックも提供しており、検査結果についても専門的な立場から適切な情報提供をしてサポートします。
恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土曜日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
ブライダルチェックや不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。
関連記事:女性ブライダルチェック
AMH検査を受けるタイミング
AMHは生理周期の影響が大きくないため、必ずしも検査を受けるタイミングは限定されません。しかし、ブライダルチェックとして受ける場合は生理期間に評価する女性ホルモン値もあるため、事前に確認するようにしましょう。
特にE2(エストラジオール)、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)は、状態を最も評価できる時期が生理期間となります。
AMHを含むブライダルチェックは、将来的に妊娠を考えている人や不妊治療を検討している人、月経不順や排卵障害がある人に向いている検査です。
AMH検査を受けることで、卵巣に残っている卵子の数の目安を把握できるため、妊活の開始時期や不妊治療の方針を決める際の判断材料になります。
ブライダルチェックを受けるタイミングは以下の記事で解説しているのであわせて参考にしてください。
関連記事:ブライダルチェックを受けるタイミングは?
AMH検査の流れと受け方
AMH検査は、婦人科や不妊治療専門クリニック、ブライダルチェックを実施している医療機関で受けられます。
ブライダルチェックの一般的な流れは以下のとおりです。
AMH検査の結果からわかること
AMH検査を受けると、卵巣内に残っている卵子の数の目安がわかります。具体的には、以下のような不妊の原因となり得る疾患や状態を発見する手がかりになります4)。
- AMHが低い場合:早発卵巣不全(POI)や卵巣手術後など
- AMHが高い場合:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など
これらの状態を知ることで、妊活の開始時期を早めたり、不妊治療のステップアップを検討したりする際の判断材料となります。
ただし、AMH検査だけでは、卵子の質や妊娠のしやすさなどは測定できません。超音波検査やホルモン検査、医師の診断と組み合わせて総合的に評価することが重要です。
なお、低用量ピル内服中の方は、AMH値が低く出る場合があります5)。使用している場合は必ず事前に伝えておくようにしましょう。
AMH検査を受けるメリット
AMH検査を受けることで、以下のようなメリットを得られます。
- 将来の妊娠やライフプラン設計の参考になる
- 不妊治療の方針を決める際の判断材料になる
いつかは子どもを授かりたいと考えている方にとって、AMH検査は将来の妊娠計画やライフプラン設計に役立ちます。今すぐ妊娠を望んでいなくても現在の卵巣予備能を知ることで、将来に向けた準備と対策ができるメリットがあります。
不妊治療の方針を決めるうえでもAMH値は重要な指標です。値が低い場合、残りの卵子数が少ないことを踏まえ、より積極的なアプローチが必要になり、治療方針の判断材料となります。
AMH検査を受けるメリットは、以下の記事の「AMH検査の結果を活用するポイント」で詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。
関連記事:AMH検査は意味ないの?検査でわかることや活用するためのポイントを解説
AMH検査に関するよくある質問
AMH検査に関するよくある質問に回答します。検査結果に対する不安や、検査を受ける意味を理解するための参考にしてください。
Q:AMH値が低いと、妊娠は難しいのでしょうか?
必ずしも妊娠できないとは限りません。AMHは卵巣に残っている卵胞の数のおおよその目安を示す指標であり、妊娠には卵子の数だけでなく質も重要だからです。
AMHの値だけで妊娠の可能性を判断せず、年齢や他の検査結果とあわせて総合的に評価することが大切です。
AMH値の低下と妊孕性(にんようせい:妊娠する力)の低下は、必ずしも関連しないという研究報告もあり6)、一人ひとりに応じた適切な対応が重要となります。
AMH値が低くなる原因については、こちらの記事を参考にしてください。
関連記事:AMH値が低い人の特徴や低くなる原因とは
Q:AMH検査は独身が受けても意味ない?
独身の方でもAMH検査を受ける意味はあります。AMH検査を受けて、卵巣予備能(卵子の残り数の目安)を把握することで、将来の妊活やライフプランの設計に役立つためです。
例えば、妊娠の時期を先延ばしにする予定がある人であれば、早めに卵巣の状態を知ることで、妊活を始める時期を検討する際の参考になります。
AMH検査が意味ないと誤解される理由については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:AMH検査は意味ないの?検査でわかることや活用するためのポイントを解説
Q:AMH検査は生理中でも受けられますか?
AMH検査は生理中でも受けられます。AMHは生理周期に影響されにくいため、測定時期が限定されることはありません。
なお、ブライダルチェックとして他の女性ホルモンの検査と同時に行う場合は、むしろ生理期間中に検査を受けた方が良い場合があります。E2(エストラジオール)、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)は状態を評価しやすい生理期間中の検査が適しています。
これらの検査とあわせてAMH検査を実施する場合は、生理期間中を推奨しているクリニックも多いため、事前に確認するようにしましょう。
おわりに
参考文献
1)厚生労働科学研究 がん対策推進総合研究事業. 若年がん患者の妊よう性の温存. 厚生労働科学研究 がん対策推進総合研究事業ウェブサイト.
https://www.j-sfp.org/o-peace/patients/2_3_onzon.html
2)厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日保医発0304第1号 別添1(医科点数表). 厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984041.pdf
3)厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 令和6年3月5日保医発0305第4号 別添1(医科点数表). 厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001293312.pdf
4)厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 令和6年厚生労働省告示第57号 別表第一(医科点数表). 厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001251499.pdf
5)日本産婦人科医会. (3)卵巣予備能とは? No.112 基本から学ぶ不妊治療. 産婦人科医会ウェブサイト.
https://www.jaog.or.jp/note/(3)卵巣予備能とは?
6)Lin C, Jing M, Zhu W, Tu X, Chen Q, Wang X, Zheng Y, Zhang R. The value of anti-Müllerian hormone in the prediction of spontaneous pregnancy: a systematic review and meta-analysis. Front Endocrinol (Lausanne). 2021;12:695157.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8548671/