AMHとは
抗ミュラー管ホルモン(Anti-Müllerian Hormone : AMH)は、もともと性器の発生に関わるホルモンとして1940年代に発見されました。1990年代に女性の卵子のはいっている卵胞からも分泌されていることがわかり、2002年には卵巣機能(予備能)の指標となることが報告されました。
現在では不妊治療の分野で注目されており、「残りの卵子の数」や、排卵誘発剤を使用する際に「反応する卵胞の数」を予想する指標として利用されています。

卵子の数の目安になりますが、必ずしも質の良し悪しを表すものではありませんので注意が必要です、ここを正しく理解しないとAMHの結果で一喜一憂してしまうことになるので注意が必要です。
AMHは、胎児の時期に男性へと性別が決まっていく過程で機能するホルモンです。男性の生殖器である精巣が存在する場合に、女性の内性器(腟・子宮・卵管)のもとになるミュラー管を退縮させる物質として発見されたことに由来し、ミュラー管抑制物質(Müllerian Inhibiting Substance : MIS)、ミュラー管阻害因子(Müllerian Inhibiting Factor : MIF)とも呼ばれます。
女性の体とAMH
AMHは女性の卵巣内にある、前胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌されています。
女性は、生まれつき約200万個もの原子卵胞(卵子の入ったふくろ)を持って生まれてきます。原子卵胞は120日以上かけて卵子を排出(排卵)することのできる成熟卵胞にまで成長します。AMHを分泌するのは、この成長の途中段階にある卵胞(一次卵胞~小胞状卵胞)です。血液検査でAMH値を測定することで、次周期以降に成長してくる成熟卵胞の数を予測できます。
AMH濃度は思春期から20代前半にピークを迎え、その後加齢に伴い低下し、閉経後はほぼ検出されなくなります。

出典:JISART 多施設共同研究での国内検討データ
AMH濃度は思春期から20代前半にピークを迎え、その後加齢に伴い低下し、閉経後はほぼ検出されなくなります。
AMHが低いと妊娠できない?
AMHは、あくまで卵子の数の目安であって、質の良し悪しを表すものではありません。
よくAMH値が低いと妊娠率も低くなると思われがちですが、卵子の質や妊娠率は年齢と一番よく相関します。AMHが低いと卵子の数が少ないことになるので、今後妊娠できる期間は短い可能性があります。ただ、人間はもともと四足歩行から二足歩行へと進化する過程で、骨盤内に赤ちゃんが二人以上入ることが難しくなり、複数個の卵子の中からひとつ(主席卵胞)だけが選ばれ排卵します。
特に自然妊娠、出産を経験された方はAMH値を測定していないだけで、実は低い値であったなんてことは珍しくありません。AMHが低くても妊娠できる可能性はあります。
大切なことは、それぞれの卵巣の状態を理解し、挙児希望の数にあわせた治療計画をたてることです。卵巣の状態にあわせた治療を選択するための判断基準となるものの一つにPOSEIDON(Patient Oriented Strategies Encompassing Individualized Oocyte Number)基準があります。POSEIDONグループは卵巣刺激での低反応が予測される患者さんの診断と管理について検討することを目的として設立されました。

当院では年齢、胞状卵胞数(AFC)、AMH値、そして家族計画(挙児希望の数)から、それぞれの患者さんに合わせた治療法の提案をさせていただいております。
当院の検査機器
外注業者に依頼する場合検査結果が出るまで数日を要します。当院ではAMH測定を自施設内で測定しているため、通常のホルモン検査(FSH、E₂等)と同様に診察の当日にAMHの結果をお伝えすることが可能です。当院ではロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の卓上型自動分析装置(cobas e 411)を導入しております。
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