不妊検査だけしたい場合はどうすればよい?検査の流れや費用、助成金について解説

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
上野院 院長 婦人科 生殖医療科 医師
お二人の道のりが明るく照らされるよう「理解」と「納得」の上で選択いただく過程を大切にしています。エビデンスに基づいた高水準の医療提供により「幸せな家族計画の実現」をお手伝いさせていただきます。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

不妊検査を受けたいと考えていても、初めて医療機関を受診する際には「どのように進めれば良いのか」「どんな流れで検査が行われるのか」がわからず、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、検査を受けた後に必ず治療まで進める必要があるのかという点や不妊検査の流れ、助成金制度などについて解説します。

不妊検査だけしたい場合でも検査を受けられる?

医療機関によって詳細な方針は異なりますが、一般的に不妊検査を受けた後に治療を進めるかは、相談の上で決めることになります。

なお、すでに医療機関で検査や治療を進めている中で、特定の検査だけを別の医療機関で受けたいという場合は、個々の医療機関の方針によっては断られる可能性もあるため注意しましょう。

トーチクリニックでは、検査をお受けいただいても当然、治療を強要することはなく、患者様の選択を尊重してその後の方針を決めることになります。

不妊検査はどこで受けられる?

不妊検査は、主に以下の医療機関で受けられます。

女性 男性
・不妊治療を専門に扱うクリニック
・一般の産婦人科
・不妊治療を専門に扱うクリニック
・一般の産婦人科
・男性不妊に対応する泌尿器科

不妊治療を専門とするクリニックでは、女性・男性ともに詳しい不妊検査を受けられます。一般的な産婦人科でも不妊検査に対応しています。ただし、対応する範囲は施設によって異なるため、希望する検査が受けられるかを事前に確認しましょう。

男性の場合は、泌尿器科でより専門的な検査を受けられるケースもあります。選択肢のひとつとして検討するとよいでしょう。

医療機関を探すなら、こども家庭庁の公式ウェブサイトにある「不妊治療を実施している医療機関検索」が便利です。都道府県別の検索や、土日・夜間診療の有無なども確認できます。受診先に迷ったときなどは参考にしてみてください。

不妊検査を東京都で提供しているトーチクリニック

トーチクリニックは恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、女性と男性それぞれの不妊検査を実施しています。お一人での受診はもちろん、ご夫婦やカップルでの検査にも対応しています。パートナーと一緒に受けることで不妊につながる原因をより多角的に調べられます。

不妊の原因は女性側だけではありません。WHO(世界保健機関)による調査では、約半数が男性側も関係しているとされています。「なかなか妊娠に至らない」「将来子どもを授かりたい」という人は、性別に関わらずご自身の妊孕性(にんようせい:妊娠する力)を把握することが大切です。

トーチクリニックでは不妊検査や包括的な検査がセットになっているブライダルチェックも提供しています。今すぐ妊娠を希望していない人でもブライダルチェックを受けることは可能ですので、お気軽にご相談ください。

不妊検査やブライダルチェックの主な検査内容

不妊検査やブライダルチェックの内容は医療機関によって異なります。ここではトーチクリニックを例に、検査の主な内容についてご紹介します。なお、どの検査を実施するかは、不妊症状や選択するブライダルチェックのセット内容によって変わります。

女性不妊検査・ブライダルチェックの内容

女性の不妊検査やブライダルチェックでは、ホルモン検査や感染症検査、画像検査などを実施します。

検査項目 検査内容 検査の目的
ホルモン検査 LH(黄体形成ホルモン)
E2(エストラジオール)
FSH(卵胞刺激ホルモン)
卵巣機能や排卵状態を確認する
PRL(プロラクチン) 不妊症の原因である高プロラクチン血症の有
無を確認する
抗ミュラー管ホルモン(AMH) 卵巣の予備能(卵子の数の目安)を把握する
FT4(甲状腺ホルモン)
TSH(甲状腺刺激ホルモン)
女性ホルモンの分泌に関与する甲状腺機能に
異常がないか確認する
感染症検査 B型肝炎・C型肝炎
梅毒・HIV
母子感染のリスクを確認する
クラミジア 感染していると卵管の通りが悪くなり、不妊
の原因になるため確認する
風疹抗体 感染すると胎児が先天性風疹症候群(心疾患
や聴覚障害など)を発症する危険があるた
め、抗体の有無を確認する
一般血液検査 血算(白血球、ヘモグロビン、血小板など) 貧血の有無や状態を確認する
ビタミン
ホモシステイン
ビタミンDやホモシステインを調べ、妊娠に
適した栄養状態や、不妊の原因となってい
ないか評価する
ミネラル 鉄・フェリチン・亜鉛を調べ、貧血や着床し
づらい傾向がないかを評価する
画像検査 経腟超音波検査 子宮筋腫・卵巣嚢腫・子宮内膜症などの有無
を確認する
子宮卵管造影検査 卵管が詰まっていないか、子宮の形態異常が
ないかなどをX線検査で確認する
その他 子宮頸がん検査 子宮頸がんの有無を確認する

検査の項目について詳しく知りたい人は、以下のページもご覧ください。

関連ページ:女性ブライダルチェック

男性不妊検査・ブライダルチェックの内容

男性の不妊検査やブライダルチェックでは、精液検査やホルモン検査などを実施します。

検査項目 検査内容 検査の目的
精液検査
(一般)
精液量・精子濃度・運動率
総精子数・前進運動数
精子の量や動き、形などを評価する
精液検査
(精密)
DFI検査
TAC検査
精子の質を評価する
ホルモン検査 T(テストステロン) 精子づくりに関わる男性ホルモン値を調べる
LH、FSH 精子をつくる機能に異常がないか確認する
PRL 精子数の減少や性欲低下の原因がないか確認する
感染症検査 B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV 性交渉によりパートナーへの感染リスクがあるため、
女性と同様に男性も検査する
クラミジア
風疹抗体

検査の項目について詳しく知りたい人は、以下の記事もご覧ください。

関連記事:男性ブライダルチェック

不妊検査・ブライダルチェックの流れ

ここではトーチクリニックを例に女性と男性それぞれの不妊検査・ブライダルチェックの流れを紹介します。実際の検査の流れは医療機関によって異なるため、一例として参考にしてください。

女性側の流れ

女性不妊検査は以下の流れで行います。

初診日
1.予約 アプリまたは予約フォームからご予約ください。
2.来院・問診 看護師・心理士などのスタッフが問診します。
3.採血 検査内容に応じて採血などを実施します。
4.カウンセリング 医師が妊孕性について説明し、質問にもお答えします。
再診日(約1週間後)
5.検査結果の説明 医師が検査結果を踏まえ、ご自身の妊孕性について説明します。
不妊治療をご希望の方には、今後の治療計画も提案します。

初回の採血は月経期のホルモン値を確認する必要があります。初診が月経期でない場合は、月経期のホルモン検査のみ後日実施します。

男性側の流れ

男性不妊検査は以下の流れで行います。

初診日
1.予約 アプリまたは予約フォームからご予約ください。

※事前に精液カップの受け取りを希望の場合は、問い合わせフォームからご連絡ください。
2.来院・問診 看護師・心理士などのスタッフが問診します。

※事前に精液カップをお渡ししている場合は、受付時に検体を提出いただきます。
3.採血 検査内容に応じて採血します。

※検体を提出された方は、この後に精液検査の結果を説明することも可能です。
再診日(約1週間後)
4.検査結果の説明 ※精液カップの提出がまだの方は、検体をお渡しいただきます。

医師が血液検査・精液検査の結果を踏まえ、ご自身の妊孕性を説明します。
不妊治療をご希望の方には、今後の治療計画も提案します。

※DFI/TAC検査の結果取得には3週間程度かかります。


「精液カップ」とは、精液検査を行うための容器です。2〜3日間禁欲した後に精液を採取し、採取から2時間以内を目安に持参してください。精液カップを事前に受け取った場合は初診日に提出、初診日に受け取った場合は再診日に提出していただきます。

精液検査については、以下のページもご覧ください。

関連ページ:精液検査

東京都の不妊検査・ブライダルチェックに関する助成金制度

東京都の不妊検査やブライダルチェックに関連する助成金制度として、以下のようなものがあります。

  • 不妊検査等助成事業
  • TOKYOプレコンゼミ

それぞれ詳しく解説します。

不妊検査等助成事業

東京都では「不妊検査等助成事業」として、不妊検査にかかる費用の一部を助成しています1)

内容
助成金額 上限50,000円
助成回数 夫婦1組につき1回限り
助成対象期間 検査開始日から1年間
対象夫婦 法律上の婚姻関係にある夫婦、または事実婚関係にある夫婦
妻の年齢要件 検査開始日において40歳未満
検査実施場所 保険医療機関(保険診療を行う病院や診療所のこと)
必要書類 申請フォームへの入力+不妊検査等助成事業受診等証明書、住民票の写し、戸籍謄本

なお、ブライダルチェックの中でも将来の妊娠に向けてヘルスチェックを行いたい、といった検診目的で受けたものは対象になりません。医師が不妊を疑って行う検査が対象であり、助成金の申請に使用する証明書(不妊検査等助成事業受診等証明書)を医療機関から発行してもらう必要があります。

ブライダルチェックの位置付けや検査内容は各医療機関によっても異なるため注意が必要です。

ブライダルチェックと助成金については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

関連記事:ブライダルチェックで使える助成金とは?東京・神奈川・埼玉・千葉の制度や保険適用について解説

TOKYOプレコンゼミ

TOKYOプレコンゼミはプレコンセプションケア事業の一環であり2)、妊娠・出産に関する正しい知識を学ぶための講座です。

講座を受講し登録医療機関で対象の検査やアドバイスを受け、都が実施するアンケートに回答することなどの条件を満たすと、30,000円を上限に検査費用の助成を受けられます。

東京都の不妊検査等助成事業と異なる点のひとつとして、TOKYOプレコンゼミは結婚の有無にかかわらず参加できます。都内在住で対象年齢の18〜39歳の方であれば、受講が可能であり、助成金を受け取ることができます。

TOKYOプレコンゼミに関しては、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

関連記事:TOKYOプレコンゼミの検査と助成金とは?torch clinicで始めるプレコンセプションケア

不妊検査とブライダルチェックの違いは

不妊検査とブライダルチェックの主な違いは、検査を受ける目的や対象者です。

不妊検査 ブライダルチェック
目的 妊娠しづらい原因を調べ治療に
つなげる
妊娠・出産に向けて体の状態を確認
する
主な
対象者
一定期間で妊娠に至らない人 将来の妊娠や出産に向けて体の状態
を確認したい人


不妊検査とは、妊活しても妊娠に至らないカップルが不妊の原因を調べることを目的としています。一方ブライダルチェックは、将来の妊娠や出産に向けて今の状態を確認することを目的とした検査です。

検査の内容は同じものもありますが、不妊検査の場合は不妊治療の一環という位置付けもあり、妊娠しにくい原因が見つかれば、それに対する治療をして妊娠・出産を目指すことになります。検査内容によっても異なりますが、不妊治療の一環として実施された検査は保険適用となるものが一般的です。

ブライダルチェックは現時点で出産や妊娠に影響がある問題があるかを確認し、もし問題があった場合には対応を考えることになります。病気の方を対象にした検査ではないため、健康保険は原則適用されず自費での検査となります。ただし、ブライダルチェックの検査項目に保険適用に該当する症状があった場合は、部分的に保険適用される場合もあります。

不妊検査やブライダルチェックを受けるタイミングとは

ブライダルチェックを受ける適切なタイミングは、明確に決まっているものではありません。

しかし、将来的に妊娠や出産を考えている場合は、自身の妊孕性の状態を早いうちに把握しておくことは、ライフプラン設計において参考になります。

一方、すでに妊活を開始していて一定期間妊娠できない場合は、状況に応じて受診を検討するようにしましょう。

日本産科婦人科学会では、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合を不妊症と定義しています3)。この点から1年程度不妊が続く場合は何らかの検査を受けることを検討することが推奨されます。

また、特に女性の場合は年齢を重ねると妊孕性の低下が顕著になることが知られています。35歳以上で妊娠できない期間が続く場合は、1年を待たないタイミングでも検査を検討してもよいでしょう。

アメリカの生殖医学会は「定期的な性交を行っており、どちらのパートナーにも生殖能力の低下を示す要因がない場合、女性が35歳以上の場合は6か月後に評価を開始する必要がある」としているため4)、35歳以上では6か月が検査を受けるタイミングのひとつの目安となります。

おわりに

トーチクリニックでは、ブライダルチェックを提供しています。恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。

ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

ウェブで予約する

参考文献

1)東京都福祉局. 不妊検査等助成事業の概要. 東京都福祉局ウェブサイト.
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/funinkensa/gaiyou

2)東京都福祉局. プレコンセプションケア. 東京都福祉局ウェブサイト.
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/preconceptioncare

3)日本産科婦人科学会. 不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト.
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/

4)American Society for Reproductive Medicine. Definition of infertility. Practice Committee Documents. ASRM.
https://www.asrm.org/practice-guidance/practice-committee-documents/definition-of-infertility