不妊症の原因を特定するためには、まず検査によって体の状態を把握することが重要です。不妊症の原因は、女性側・男性側のどちらにも存在する可能性があり、複数の要因が関係していることも少なくありません。ホルモンの分泌や卵管・子宮の状態、精子の質などを総合的に調べることで、適切な治療方針を立てるための第一歩となります。
女性の検査
基礎体温測定
生理周期の中で、基礎体温が低温期と高温期に分かれ(およそ0.3〜0.5℃上昇する)、二相性を示しているかどうかを確認することで、排卵が起こっているかのおおよその目安になります。ただし、これは排卵日を正確に予測するものではなく、排卵があった可能性を確認するための指標にとどまります。自宅で簡単に取り組める点は利点ですが、毎日計測を続けるのは手間がかかるうえ、基礎体温だけで確実に排卵の有無を判断することは難しいとされています。
基礎体温について詳しい内容を確認したい場合は、下記のページをご覧ください。
ホルモン測定
血液検査では、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、卵胞ホルモン(E2)、プロラクチン(PRL)、抗ミュラー管ホルモン(AMH)など、妊娠に関わる複数のホルモン値を測定します。これにより、卵胞の発育や排卵の働きに問題がないかを推定できます。
たとえば、LHやFSHが低い場合は、脳下垂体から卵巣への指令が十分に伝わらず、卵胞が育ちにくくなります。一方で、これらが高値を示すときは、脳下垂体から強い指令が出ているにもかかわらず卵巣が反応していないことが考えられ、卵胞発育の不良が疑われます。さらに、プロラクチン(PRL)が高い場合は月経不順や排卵障害を引き起こすことがあり、妊娠していないのに乳汁分泌がみられるケースもあります。
ホルモン検査について詳しい内容を確認したい場合は、下記のページをご覧ください。
クラミジア検査
血液検査により、血液中のクラミジア抗体を調べます。クラミジア抗体(IgG)が陽性の場合、過去にクラミジアに感染しているということで、クラミジア抗体(IgA)が陽性の場合は現在も感染していると考えられます。クラミジアに感染すると卵管の通りが悪くなることがあります。クラミジアに感染していた場合、抗菌薬による治療が必要で、3週間後にクラミジアPCR検査(女性は内診、男性は尿検査で行います)で陰性が確認できるまでは性交渉とオーラルセックスを控えていただきます。
子宮卵管造影検査
レントゲン室で行う検査です。腟から子宮口に細い管(カテーテル)を入れて優しく造影剤を注入し、子宮の形や卵管に異常がないかを調べるX線検査です。絶対に妊娠していない時期(多くは生理が始まって10日以内)に行います。子宮卵管造影は自然妊娠をのぞむ時にとても大切な検査です。この検査により卵管の通りが改善して妊娠しやすくなることもあります。
子宮卵管造影検査について、詳しい内容を確認したい場合は下記のページをご覧ください。
甲状腺ホルモン検査
甲状腺ホルモン検査は、甲状腺の働きを調べるための血液検査で、不妊症の原因を探る際にも重要な検査のひとつです。甲状腺は体の代謝やホルモンバランスに関わる臓器で、その機能が低下または亢進すると、月経不順や排卵障害を引き起こし、妊娠に影響を与えることがあります。
不育症検査
妊娠しても、流産や死産を繰り返して元気な赤ちゃんが得られない状態を不育症といいます。不育症の定義は、「流産あるいは死産が2回以上ある状態。生児の有無は問わず、流産または死産が連続していなくてもよい」です。
主な検査項目としては、血液の凝固異常を確認する「凝固因子検査」や「抗リン脂質抗体検査」、ホルモンや甲状腺機能の異常を調べる「内分泌検査」、染色体の構造異常を調べる「染色体検査」などがあります。また、子宮の形態異常を確認するために「子宮鏡検査」や「子宮卵管造影検査」が行われることもあります。
着床不全検査
着床不全検査は、受精卵が子宮内膜にうまく着床しない原因を調べるための検査です。体外受精などで良好な胚を移植しても妊娠に至らない場合、着床の段階に問題がある可能性が考えられます。
主な検査としては、子宮内膜の状態を確認する「子宮鏡検査」や「子宮内膜組織検査」、免疫や凝固異常を調べる「血液検査」、さらに子宮内環境を評価する「子宮内フローラ検査」や「着床のタイミングを調べる検査(ERA検査)」などがあります。
ビタミン・ミネラル検査
ビタミン・ミネラル検査は、体内の栄養バランスを確認し、妊娠しやすい体づくりができているかを評価するための検査です。妊娠や排卵には多くの栄養素が関与しており、特定のビタミンやミネラルが不足していると、ホルモン分泌の乱れや卵子・精子の質の低下、着床しにくい状態につながることがあります。
検査では、鉄、亜鉛などのミネラル類に加え、ビタミンD、葉酸などのビタミン類を測定することがあります。ビタミンDは妊娠の成立や胎児の発育に深く関係しているため、重要な指標とされています。
男性の検査
精液検査
2~3日程度の禁欲期間(射精しない期間)の後に精液を採取し、精液量や精子の数、精子の運動率などを調べる重要な検査です。
所見によっては再検査を行うこともあります。
精液検査について、詳しい内容を確認したい場合は下記のページをご覧ください。