不妊症の検査について

最終更新日時:
2024-06-27
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

不妊治療を始める前に、不妊の原因を探すためスクリーニング検査を行うことが重要です。原因を検索せずに治療をはじめてしまうと、思わぬ原因が後から判明することもあります。まずはしっかり検査をして、自分たちのからだのことを知ることが大切です。代表的な検査は以下の通りです。

女性の検査

基礎体温測定

生理周期の間に、基礎体温が低い時期と高い時期(0.3〜0.5℃の上昇)に分かれているか(二相性を示しているか)を確認することが、排卵しているかの目安になります。しかし、あくまで排卵日を予測するものではなく、排卵したことの確認に留まります。受診せずにご自身でできる検査という意味では便利なのですが、毎日基礎体温を測るのは大変ですし、基礎体温だけでは確実に排卵しているかどうかは判断できません。

ホルモン測定

血液検査により黄体形成ホルモン(LH)や卵胞ホルモン(E2)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)、抗ミュラー管ホルモン(AMH)などの妊娠に関わるホルモンを計測します。この検査によって卵胞の発育や排卵に障害がないかどうかを推定することができます。

例えば、黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)は、低値の場合には、脳下垂体から卵巣へ指令が行かないため、卵胞(卵子)が育ちません。逆に高値の場合には、脳下垂体から指令がたくさん出ている状態で卵巣の反応が悪いことが推測されます。、卵巣の反応が悪い場合も卵胞が発育しない可能性があります。また、プロラクチン(PRL)が高値の場合には、月経が不順になったり、排卵が障害される可能性があります。妊娠していないのに母乳がでてしまう方はこちらが考えられます。

クラミジア検査

血液検査により、血液中のクラミジア抗体を調べます。クラミジア抗体(IgG)が陽性の場合、過去にクラミジアに感染しているということで、クラミジア抗体(IgA)が陽性の場合は現在も感染していると考えられます。クラミジアに感染すると卵管の通りが悪くなることがあります。クラミジアに感染していた場合、抗菌薬による治療が必要で、3週間後にクラミジアPCR検査(女性は内診、男性は尿検査で行います)で陰性が確認できるまでは性交渉とオーラルセックスを控えていただきます。

子宮卵管造影検査

レントゲン室で行う検査です。腟から子宮口に細い管(カテーテル)を入れて優しく造影剤を注入し、子宮の形や卵管に異常がないかを調べるX線検査です。絶対に妊娠していない時期(多くは生理が始まって10日以内)に行います。人によっては軽度の痛みを伴うこともありますが、torch clinicでは痛みをやわらげるよう工夫をしています。子宮卵管造影は自然妊娠をのぞむ時にとても大切な検査です。この検査により卵管の通りが改善して妊娠しやすくなることもあります。

甲状腺ホルモン検査

甲状腺ホルモンは女性ホルモンの分泌にも関係しており、甲状腺ホルモンの異常が月経不順や無排卵などを起こし、不妊の原因になることがあります。適切な治療を受けることで甲状腺ホルモンの分泌量が正常に戻ります。このため、Torchクリニックではブライダルチェックのオプションで甲状腺ホルモンの検査を実施し、体外受精を実施予定の女性には、スクリーニングで甲状腺機能検査と甲状腺自己抗体を測定しています。

不育症検査

妊娠しても、流産や死産を繰り返して元気な赤ちゃんが得られない状態を不育症といいます。不育症の定義は、2回以上の流産もしくは死産を繰り返す状態とされています。一般に100人が妊娠すれば10~15人は流産するといわれています。原因の多くは赤ちゃん側にあり、50~70%は赤ちゃんの染色体異常によるといわれています。ほとんどの染色体異常はたまたま起こるもので、繰り返されることはあまりありません。すなわち、流産を繰り返す場合は、赤ちゃんではなく、母親や⽗親、あるいは両親(夫婦間因子)に原因があることが多いです。

不育症の検査は多岐にわたり、染色体検査、子宮体検査、内分泌検査、抗リン脂質抗体検査などがあります。

着床不全検査

40歳以下で良好な受精卵を4個以上、3回以上移植しても着床しないことを着床不全といいます。着床しないことの原因のほとんどが胚(受精卵)の染色体異常と考えられていますが、それ以外に何かないかを調べる検査が着床不全検査です。子宮因子、免疫因子、着床のタイミングを調べます。

ビタミン・ミネラル検査

ビタミンD、亜鉛、鉄は妊娠・出産に深く関わっている栄養素です。特に、ビタミンDの働きには、胚(受精卵)が着床し胎盤が形成されるのを制御する役割があります。ビタミンDが不足すると着床しにくくなり、胎盤の形成が不十分になるという報告もあります。なお、日本人はビタミンDが不足している人が多いといわれています。血液検査によって体内のビタミンとミネラルを調べることができます。

男性の検査

精液検査

2~4日間の禁欲期間(射精しない期間)の後に精液を採取し、精液量や精子の数、精子の運動率などを調べる重要な検査です。

所見によっては再検査を行うこともあります。

不妊の原因や治療の経過によっては、一般的スクリーニングよりも更に専門的な検査(腹腔鏡検査や子宮鏡検査、各種免疫・内分泌検査など)を行うことがあります。

おわりに

トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週6日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております

また、すでに不妊治療を受けている方々のお悩みやセカンドオピニオンにも対応しております。セカンドオピニオンを含めたクリニックへのよくあるご質問はこちらをご参考ください。