不妊の原因の約半数は男性にも起因するとされており、男性側の不妊検査や治療でも自治体によって助成金制度を利用できる場合があります。本記事では、東京・神奈川・埼玉・千葉の一都三県における男性不妊に関連した助成金制度や、対象となる検査や治療、ブライダルチェックなどについて解説します。
※制度は改定されることがあるため、最終的にはお住まいの自治体の最新情報をご確認ください。
不妊の原因の約半数は男性にもある
不妊の検査・治療の経験がある夫婦は約4.4組に1組といわれ、妊娠を希望するカップルにとって、不妊は身近な問題です。
また、WHO(世界保健機関)による不妊の原因の調査では、男性のみに原因があるのが24%、男女ともに原因があるのが24%であり、約半数が男性にも起因しているとされています。
このような状況から、これから妊活を本格的に開始する場合やなかなかパートナーが妊娠しない場合、男性側にも不妊検査やブライダルチェックなどで問題がないかを確認することが推奨されます。
男性の不妊検査・不妊治療で使える助成金はある?
2026年1月現在、男性の不妊検査・不妊治療で使える助成金があるかどうかについては都道府県・市区町村ごとの地方自治体によって異なります。また、助成金の制度があったとしても、助成金の対象者や対象となる治療、助成内容も各地方自治体によって異なります。
代表例として東京都を挙げると、東京都では「東京都不妊検査等助成事業」として、男性女性問わず不妊検査・不妊治療で活用できる助成金があります。
もし、お住まいの地域における男性の不妊検査・不妊治療で使える助成金の情報について知りたい場合は、お住まいの地域の地方自治体のサイトをご覧になるか、直接地方自治体にご確認ください。
本記事で全ての地方自治体の助成金についての情報を掲載することは難しいため、ここでは当クリニックの所在地である東京都を中心とした一都三県における各地方自治体の、男性の不妊治療・不妊検査で使える助成金の有無と概要を記載します。
東京・神奈川・埼玉・千葉の男性不妊に関連する助成金制度
東京・神奈川・埼玉・千葉における、男性不妊に関連する助成金制度を紹介します。
東京都:不妊検査等助成事業
東京都では、子供を望む夫婦が早期に検査を受け、必要に応じて適切な治療を開始することができるよう、「不妊検査等助成事業」を実施しています1)。
助成の対象となる内容
保険医療機関において実施された不妊検査や、薬物療法・人工授精などの一般不妊治療が対象です。治療に伴い、保険薬局で調剤された薬剤費も含まれます。
男性の不妊検査は、以下のような検査が対象です。
・精液検査
・内分泌検査
・画像検査
・精子受精能検査
・染色体・遺伝子検査 等
助成額と回数、期間
助成額は、夫婦1組につき1回限り、上限50,000円で、検査や治療に実際に払った自己負担額の範囲内で助成されます。
助成の対象となる期間は、検査開始日から1年間です。
対象となる方
検査開始日から申請日まで、夫か妻のいずれかが東京都に住民登録している法律婚または事実婚の夫婦が対象となります。そして、検査開始日における妻の年齢が40歳未満であることが条件です。
申請時の注意点
申請には、住民票や医療機関が発行する証明書類などが必要です。
東京都不妊検査等助成事業については、以下の記事でも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
関連記事:東京都で不妊治療をしたら最大5万円の助成金を受け取れる?対象者や助成を受けられる検査・治療、必要な書類を解説
東京都:TOKYOプレコンゼミ
東京都では、若い世代がプレコンセプションケアに興味・関心を持ち、取り組むきっかけとなるよう、妊娠前からの健康管理や不妊に関する基礎知識を学ぶ講座、TOKYOプレコンゼミを実施しています2)。
TOKYOプレコンゼミを受講し、検査について理解した上で希望する場合に、東京都が指定する検査を実施すると、検査費用などが助成の対象となります。
主な要件として、18〜39歳の都内在住者が対象です。また、前述の不妊検査等助成事業と異なり、独身の男性でも助成の対象となります。
男性は以下のような検査の費用が対象です。
・精液一般検査(精液量、精子濃度、総精子数、白血球数、総運動率、前進運動率、正常精子形態率)
・精液精密検査(DFI検査)
・男性ホルモン検査(テストステロン、LH、FSH、プロラクチン)
・精巣超音波検査
助成金額は、男女ともに上限3万円です。医療機関での相談時の診察費用や指定の検査の費用も助成対象に含まれます。
TOKYOプレコンゼミについては、以下の記事でも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
関連記事:TOKYOプレコンゼミの検査と助成金とは?torch clinicで始めるプレコンセプションケア
東京都:特定不妊治療費(先進医療)助成事業
東京都では、保険診療で体外受精及び顕微授精を受ける際に併用される「先進医療」の費用の一部を助成する制度を設けています3)。
助成の対象となる治療・条件
体外受精及び顕微授精を保険診療で受けた場合に、あわせて実施される10割自己負担の先進医療が対象です。対象となる先進医療は厚生労働省で告示されているものになります。また、厚生労働省が指定している医療機関で治療を受けることも条件となります。
体外受精や顕微授精を保険適応外で受けた場合には、対象外となるので注意が必要です。
助成の対象となる方・回数
1回の治療開始日の妻の年齢が43歳未満である、東京都に住民登録のある法律婚または事実婚の夫婦が対象です。
治療開始日の妻の年齢が39歳までの夫婦は6回まで、40歳から42歳までの夫婦は3回まで助成を受けることができます。
助成金額
先進医療にかかった自己負担費用の 10分の7 について、 15万円を上限 に助成されます。
助成対象となる先進治療や対象の医療機関、助成の条件など詳細については、東京都のホームページに記載されているのであわせてご覧ください。
神奈川県:不妊検査や不妊治療への助成金ないが、市町村で実施しているところもある
神奈川県では、体外受精や顕微授精による不妊治療が2022年から健康保険の適用となったことを受け、県として実施していた不妊治療費助成制度は終了しました。そのため2026年1月現在は、県独自の助成金制度は設けられていません4)。
一方で、県内の市町村の中には、不妊治療にかかる費用の一部を助成している自治体があります。
藤沢市、横須賀市など複数の自治体が保険診療とあわせて行われる先進医療の費用を助成しています。
横浜市や川崎市は、2026年1月現在は不妊症の助成は実施していませんが、2回以上の流産を繰り返す等の不育症に対する検査を助成しています。
助成の内容や金額、申請条件は自治体ごとに異なるため、居住地の市町村ホームページで最新情報を確認してください。
埼玉県:早期不妊検査費助成事業
埼玉県では、「新ウェルカムベイビープロジェクト」の関連事業として、早期不妊検査費助成事業を実施しています。不妊検査を受ける夫婦を対象に、検査費用の一部が助成されます5)。
事業の概要
本事業は県が制度設計を行い、市町村が窓口となって運用されています。申請手続きや対象となる検査内容の詳細は、市町村ごとに異なる場合があります。
対象と助成額
対象は、申請時に法律上の婚姻関係または事実婚関係にあり、男女そろって不妊検査を受けた方です。不妊検査開始時に女性の年齢が43歳未満であることが条件とされています。助成額は、女性の年齢が35歳未満の場合は上限3万円、35歳以上では上限2万円です。
事業の詳細や実施市町村一覧などの情報は埼玉県ホームページからご確認ください。
千葉県:不妊検査や不妊治療への助成金ないが、市町村で実施しているところもある
千葉県では、2022年から体外受精や顕微授精が健康保険の適用となったことを受け、県独自の不妊治療費助成事業は終了しています。そのため2026年1月現在は、県として治療費を直接助成する制度はありません6)。
一方、県内の一部市町村では、不妊検査や不妊治療にかかる費用の一部を補助する独自制度を設けています。
例として、千葉市はプレコンセプション健診費用助成事業にて、将来の健康や妊娠・出産に備えるための検査が助成対象、柏市ではプレコン(ゼミ・健診)で健診費用の助成や特定不妊治療費(先進医療)助成事業があります。
参考ページ
千葉市:プレコンセプション健診費用助成事業
柏市:はぐはぐ柏 妊娠を希望する方
詳細な要件や事業の内容は異なるため、各自治体のサイトでご確認ください。
男性不妊の不妊検査やブライダルチェックはどのようなことをする?
男性のブライダルチェックでは、妊娠に関わる基本的な検査を行います。中心となるのは精液検査で、精液量や精子の数、運動率などを確認します。血液検査で、ホルモンバランスや感染症の有無を調べる場合もあります。また、生活習慣や既往歴を確認する問診や、医師による検査結果の説明も含まれることが一般的です。
男性不妊の検査がどこでできるか、検査内容などの詳細については以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
関連ページ: 男性不妊の検査はどこでできる?検査内容や費用、受けるタイミングについても紹介
男性不妊の治療はどのようなことをする?
男性不妊の治療は、原因を把握できた場合には、主に手術や薬の投与で治療します。例えば、男性不妊の代表的な原因である精索静脈瘤は、手術での治療も一般的です。勃起不全の場合には薬が処方されます。
また、精子の数や運動率の改善を目的として、生活習慣の見直しに取り組む場合やホルモン療法などで治療をすることもあります。
原因が明らかでない場合や、早期の妊娠を希望する場合には、不妊治療である人工授精や体外受精、顕微授精を検討する場合もあります。
人工授精
人工授精は、採取した精液を洗浄、濃縮などの処理をして、状態のよい精子を排卵の時期に合わせて子宮内に注入する治療法です。
軽度の乏精子症、性交障害、タイミング法が成功しなかった場合などに、適用になる治療法です。
人工授精の詳細については、以下のページもあわせてご覧ください。
関連ページ:人工授精
体外受精
体外受精は、採取した卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮内に戻す治療法です。人工授精で妊娠に至らなかった場合や、人工授精では効果が期待できない程度に精子濃度が低い・精子運動性が不良なケース、両側卵管閉塞と診断された場合などで適用されます。
体外受精の詳細については、以下のページもあわせてご覧ください。
関連ページ:体外受精
顕微授精
顕微授精は、顕微鏡を使いながら良好な精子を1個選択し、採取した卵子に対して直接精子を注入し受精させる治療法です。
男性不妊のケースでは、精子の数が極端に少ない場合や運動率が低い場合、体外受精で受精が成立しにくかった場合などに適用されます。
顕微授精の詳細については、以下のページもあわせてご覧ください
関連ページ:顕微授精
男性不妊に関するよくある質問
男性不妊について、よく聞かれる質問への回答をまとめました。
Q. 保険適用の不妊治療・不妊検査だと助成金は使える?
保険適用の不妊治療・不妊検査に助成金が使えるかどうかについては、都道府県・市区町村によって異なります。地域によっては、保険適用外のみ助成金が使える場合もあるので、お住まいの市区町村へお問い合わせください。
Q. 精液検査やブライダルチェックは助成金の対象になる?
精液検査やブライダルチェックが助成金の対象になるかどうかは、個人の状況(不妊検査として実施しているか)や、検討している助成金の制度、各自治体の要件によって異なります。東京都を例に挙げると、「不妊検査等助成事業」や「TOKYOプレコンゼミ」精液検査を含む検査費用が助成対象となる場合がありますが、各助成の詳しい要件や医療機関の対応状況なども確認するようにしましょう。
おわりに
参考文献
1)東京都福祉局. 不妊検査等助成事業の概要. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/funinkensa/gaiyou
2)東京都福祉局. プレコンセプションケア. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/preconceptioncare
3)東京都福祉局.東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業の概要. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/josei/funin-senshiniryou/gaiyou
4)神奈川県. 不妊・不育. 神奈川県ウェブサイト
https://www.pref.kanagawa.jp/menu/2/6/38/index.html
5)埼玉県. 新ウェルカムベイビープロジェクト関連事業. 埼玉県ウェブサイト
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0704/boshi/welcome_baby.html
6)千葉県. 母子保健. 千葉県ウェブサイト
https://www.pref.chiba.lg.jp/cate/kfk/fukushi/kosodate/boshi/index.html

