不妊治療・体外受精・ARTで処方される薬について
不妊治療の中でARTといわれる治療方法には、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)、胚移植、胚凍結などがあります。
精子と卵子が出会う「受精」は、通常は体内で行われますが、卵子と精子を体の中から取り出し体外で受精させるため体外受精と呼ばれます。この時に、顕微鏡を使って受精させる場合には顕微受精といわれます。
受精させたものが育つと胚と呼ばれるようになります。胚をある程度成長させてから体内に戻す方法を胚移植といいます。一方で、成長した胚を一旦凍結させることもあり、その場合は胚凍結といわれます。
このARTの治療の中で大切なステップは、適切な大きさ、数まで卵胞が育ってから、体内から卵子を取り出す部分です。
今回は適切な卵子を取り出すための「卵巣刺激」という方法で使われる薬、特に点鼻薬に注目して説明したいと思います。
卵巣刺激で使う薬の紹介
卵巣刺激の目的は、体外受精や顕微受精のために、複数の卵胞を育て採卵することです。
流れとしては、卵胞を育てるための薬を一定期間使った後に、排卵させる薬を使って卵子の成熟を促します。
以下で紹介する薬は当院で使われている薬です。
卵胞を育てる方法にはクロミフェン療法やゴナドトロピン療法といった方法があります。
クロミフェン療法は、クロミッドという飲み薬を使用します。
内服薬での治療になるため身体的負担が少なく手軽な方法です。
飲み方は、通常月経3日目から5日間服用します。服用回数は1日1回または1日2回の場合があります。なお、クロミッドの代わりにフェマーラという飲み薬を使用することもあります。
ゴナドトロピン療法は、HMGあすか、ゴナールエフ皮下注ペン、ゴナールエフという注射の薬を使います。自己注射の練習をしていただきご自身で打つか、通院回数は増えてしまいますが病院で注射するかどちらかの方法となります。通常、月経3日目から卵胞が育つまで毎日もしくは2日に1回注射します。時間帯はいつでも良いため、忘れないタイミングで打つことが必要です。
上記の方法で卵胞の発育がうまくいかなかったり、途中で排卵してしまったり、副作用のリスクがある場合には、追加で脳における女性ホルモンの分泌を調整する薬を用いることもあります。次に説明する点鼻や注射の薬を使います。
点鼻薬(ブセレリン点鼻薬)は、1日3回、8時間毎に左右の鼻腔内へ1プッシュずつ噴霧します。投与期間は治療方法によって異なります。
注射のお薬(セトロタイド)は、1日1回使用しますが、期間は治療方法によって異なります。
上記の方法は、卵巣の状態や卵胞の発育状態などを踏まえながら組み合わせて使い分けていきます。
次に必要なステップは卵子を成熟させることです。
卵子の成熟を促す薬剤として排卵誘発薬を使用します。排卵誘発薬には点鼻薬と注射薬があります。
点鼻薬(ブセレリン点鼻薬)は、医師が指示した時間に、鼻腔内へ右左右の順、30分後に左右左鼻の順で1プッシュずつ噴霧します。
注射薬(HCG5000単位「F」、オビドレル)は、採卵日の36-42時間前に1回打ちます。
点鼻薬を採卵前に使う理由は「卵胞を育てる」「成熟した卵子を排卵する」ため
前述の通り、点鼻薬を使う目的は「卵胞を育てること」「成熟した卵子を排卵すること」といった2通りがあります。
単発で点鼻薬を使う場合は、採卵のために卵子の成熟を促す目的で使います。
また1日3回一定期間点鼻する場合には、予定している採卵のタイミングよりも早く排卵してしまうことを防ぐ目的で使います。
点鼻薬自体の使用上の注意
使い方は簡単に示すと以下のようになります。
①点鼻薬を使用する前にまず鼻をかんで、鼻腔の通りをよくします。
②少し下を向きながら点鼻薬を鼻腔の奥まで真っ直ぐ入れます。
③鼻から息を吸い込みながら「カチッ」という音が確認できるまで噴霧します。
④噴霧したらすぐに頭を後ろに傾けて、薬が鼻の奥まで行き届くように数十秒鼻から呼吸をします。
噴霧する際に、入れ方が浅いと薬が鼻腔から漏れてしまうことがあるため注意してください。多少漏れてしまった場合には、2回噴霧する必要はありません。漏れた薬液はティッシュで拭き取ってください。
副作用として、「お腹が張る」「吐き気がする」「急に体重が増えた」「尿量が少ない」などの症状が出た場合には、すぐに病院を受診してください。
不妊治療・体外受精・ARTの点鼻薬「スプレキュア点鼻液(ブセレリン点鼻液)」のQ&A
鼻詰りがある場合にはどうしたらいいですか?
花粉症や風邪などで鼻詰まりや鼻水が止まらない場合があっても薬は鼻から吸収されます。ただし、正しく薬を使用すること、点鼻する前にしっかり鼻をかむことが大切です。また医師や薬剤師に相談の上、病院や市販薬で鼻詰まりを解消する点鼻薬(鼻腔内充血除去剤)を使用する場合には30分以上間隔をあけて使用してください。
点鼻薬はいつまで使用しますか?
1日3回一定期間使う場合には、排卵誘発薬を打つまで続けます。
卵子を成熟させる目的で使用する場合は医師が指示した時間に、鼻腔内へ右左右の順、30分後に左右左鼻の順で1プッシュずつ噴霧して終了です。
開封したらいつまで使えますか?
メーカーに確認したところ、「開封後の期限は設定していないが8週後までの試験は行っており、正しい保管方法であればpH(ペーハー)や容量等の変化はなかった」といった回答がありました。
治療に使い、残液がある場合には直射日光を避けて、室温(1〜30℃)で保管してください。開封して長期間経ってしまったり、保管場所が悪いなどで新たなものが必要な場合は、医師に相談して処方してもらいましょう。
おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております。
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