不妊の原因の約半数は男性にも関係していることが知られています。男性不妊の主な原因は造精機能障害、性機能障害、精路通過障害の3つに分けられます。本記事では、男性不妊の割合や原因別の詳細、検査方法や治療法、日常生活でできる予防・改善策まで詳しく解説します。
男性不妊の割合(男女別の原因)

日本産科婦人科学会では、不妊症の定義を「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合」としています1)。
不妊症の原因は、女性側にある場合と男性側にある場合の他、男女両方に原因がある場合もあります。
WHO(世界保健機関)の報告では、不妊の原因の割合は以下のとおりです。
男性のみに原因がある割合と、男女ともに原因がある割合はそれぞれ24%です。これらを合計すると48%であり、不妊の原因の約半数は男性にも関係していることがわかります。
このように不妊症の疑いがある場合、原因は女性側だけでなく男性側にある場合も少なくありません。女性側だけでなく男性側も足並みをそろえて、検査や治療に取り組むことが重要です。
不妊症の割合および男性が不妊症である割合
2021年の日本における調査では、不妊について心配したことがあるカップルは39.2%、実際に不妊の検査または治療経験があるカップルは22.7%とされています2)。
この割合は、約20年前の2002年における同じ調査の結果3)よりも増加しており、より身近な問題となっています。
この調査では男性だけに限った不妊の割合は調査されていませんが、海外の調査では男性が不妊症である割合は2.5〜12%という報告があります4)。
不妊症に悩むカップルや、不妊症の男性も決して珍しくはないといえます。
男性不妊の原因とその割合
男性不妊の主な原因は造精機能障害、性機能障害、精路通過障害にわけられます。
それぞれの原因や疾患別の割合は以下のとおりです5)。
造精機能障害
造精機能障害は、精巣で元気な精子をつくる機能が低下している状態をさします。男性不妊の82.4%を占め、原因が特定できない特発性のものが多いとされています5)。
一方で、推定できる原因の中で最も頻度の高い疾患は精索静脈瘤です。
その他に特定できる原因としては、染色体・遺伝子異常や薬剤性、停留精巣、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症などが挙げられています。
精索静脈瘤
精索は精子の通り道である精管、血管(動脈や静脈)、リンパ管、神経などが束になったものです。そのうち静脈は精巣から心臓へ血液が戻る帰り道で、精索において枝分かれして網の目のようになっています。これが逆流することでコブのようになる状態を精索静脈瘤といい、精子がつくられにくくなる場合があります。男性不妊症全体の30.2%に認められるといわれています5)。
また、自覚症状はない場合も多いですが、陰嚢(いんのう)や鼠径部に違和感や痛みを感じることがあります。進行すると、立位(立っている状態)にて陰嚢の腫れや血管が浮き出てでこぼこしているなど、見た目で気づく場合もあります。
精索静脈瘤は80〜90%の人で左右の精索のうち左側に生じます。この理由は、精巣から出る静脈の走行が左右で違っており、左側の方が血液が流れにくかったり逆流しやすかったりするためといわれています。
逆流が高度な場合には手術を検討することもあります。
その他
造精機能障害において、精索静脈瘤以外で原因を特定できるものは、以下のとおりです。その他42.1%は、原因が特定できない特発性とされています5)。
性機能障害
性機能障害は、男性不妊の原因の13.5%を占めるといわれ、勃起障害と射精障害にわけられます5)。
近年は、生活習慣やストレスの影響も指摘されており、性機能障害が原因となる不妊は増加傾向にあります。
勃起障害
勃起障害とは、勃起が十分に得られない、または継続できない状態のことです。糖尿病などの生活習慣病や、心理的なストレスが原因となることもあります。
勃起障害は男性不妊全体の6.1%にみられ5)、パートナーとの性交渉に対する緊張やプレッシャーから突然症状が出ることも珍しくありません。
勃起障害にはPDE-5阻害薬を使用した薬物療法があります。
射精障害
射精障害は男性不妊の7.4%にみられ5)、射精不能(射精ができない、精液が逆流する)と腟内射精障害(性行為時に腟内で射精できない)にわけられます。
射精障害は糖尿病や脊髄損傷、骨盤内手術の影響など、何かしらの疾患や身体的要因に関連して起こる場合があります。
一方で、強い刺激によるマスターベーションが習慣化している場合、性交時に射精しづらくなるケースもあります。原因に合わせて、薬物治療やマスターベーション方法の見直しなどが検討されます。
精路通過障害
精路通過障害とは、精子の通り道である精管や射精管の閉塞、先天的な欠損などにより、精子がつくられていても外に出られない状態のことです。
精路通過障害は、男性不妊の原因の3.9%にみられます5)。
精路通過障害の代表的な疾患は、先天的な両側精管欠損、精巣上体炎による閉塞、鼠径ヘルニア手術などです。
治療では、閉塞部の再建術が実施されています。また、妊娠を希望する夫婦には精巣から精子を採取して顕微授精(ICSI)を行う方法などが検討されます。
男性不妊のセルフチェック
男性不妊では、陰嚢や精液の見た目に特徴が見られる場合があり、これまでの病歴や手術歴も影響することがあります。
例えば、陰嚢の見た目が腫れていたり左右非対称の場合は、造精機能障害である精索静脈瘤の可能性があります。
男性不妊になりやすい人の特徴やセルフチェックの詳細は、以下の記事で詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。
関連記事:男性不妊の原因やなりやすい人の特徴は?セルフチェックや割合について解説
男性不妊の検査
男性不妊にはさまざまな要因があるため、精液検査を中心に複数の検査が実施されます。
精液検査
精液検査では精子の数や質などを評価し、男性不妊の要因を確認します。
主な検査項目は以下のとおりです。
- 精液量
- 精子の濃度
- 精子の運動率
- 総精子数
- 前進運動精子数
ただし、精液の所見は変動があるため、1回の検査ですべてを判断することはできません。
実際に、1回目の精液所見が不良でも、再検査では問題がないと判断されるケースもあります。
精液検査については下記ページにて詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
関連ページ:精液検査
その他の検査
男性不妊の検査には、精液検査以外にも以下のような検査が行われています。
これらの検査に加えて、問診や視診、触診などを組み合わせて総合的に評価します。
トーチクリニックでは、男性のブライダルチェックを実施しています。詳細は以下のページをご覧ください。
関連ページ:男性ブライダルチェック
男性不妊の治療法
男性不妊の治療法は、原因や重症度に応じて薬物療法や手術が検討されます。
また、妊娠を希望する場合には、人工授精(AIH)や体外受精(c-IVF)などの生殖補助医療(ART)を選択することもあります。
薬物療法・手術による治療
男性不妊の治療は、原因が明らかで適応がある場合に、薬物療法や手術などが検討されます。
以下は、日本生殖医学会のサイトで紹介されている男性不妊に対する主な治療の内容です6)。
男性不妊の治療には薬物療法と手術を組み合わせて実施されるケースも少なくありません。また、治療結果には個人差もあります。
専門医と相談しながら、夫婦やカップルにとってよりよい治療法を選択することが重要です。
人工授精や体外受精による治療
男性不妊の原因がはっきりしない場合や治療効果が乏しい場合、妊娠を急ぐ場合には、人工授精や体外受精・顕微授精が検討されます。
人工授精とは、排卵のタイミングに合わせて、精液を子宮内に直接注入する治療法です。主に、軽度の乏精子症や性機能障害などが適応となります。
人工授精でも妊娠に至らない場合や重度の乏精子症の場合などは、体外受精・顕微授精も選択肢となります。体外受精のふりかけ法は採取した卵子と精子を同じ培養液に入れて受精を促す方法です。顕微授精は、顕微鏡を使って精子を卵子の中に直接注入する方法です。
トーチクリニックでは、これらの治療法を含む不妊治療を提供しています。それぞれの不妊治療の詳細は以下のページでご覧ください。
関連ページ:人工授精
関連ページ:体外受精
関連ページ:顕微授精
男性不妊の予防や改善方法は?
男性不妊は生活習慣が原因となるケースもあり、日常生活の中でできる対策もあります。以下のような生活習慣を意識してみましょう。
おわりに
参考文献
1)日本産科婦人科学会. 不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/
2)国立社会保障・人口問題研究所. 第16回出生動向基本調査報告書(2021年調査). 国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_reportALL.pdf
3)国立社会保障・人口問題研究所. 第12回出生動向基本調査報告書(2002年調査). 国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト
https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/DATA/pdf/129001.pdf
4)Agarwal A, Mulgund A, Hamada A, Chyatte MR. A unique view on male infertility around the globe. Reprod Biol Endocrinol. 2015 Apr 26;13:37.
https://link.springer.com/article/10.1186/s12958-015-0032-1
5)厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業. 我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究 平成27年度 総括・分担研究報告書. 横浜市立大学ウェブサイト
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2016/dr3e640000009pzm-att/20160822_h27kourou_yumura.pdf
6)日本生殖医学会.Q15.男性不妊の場合の治療はどのようになるのですか?.日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa15.html


