一人目はすぐに授かったのになかなか二人目ができないと悩む方は少なくありません。第一子が自然に妊娠できた場合でも、二人目のときは年齢も重ね生活環境も変わることで不妊となることがあります。この記事では二人目不妊の原因や対処法、二人目の妊娠の可能性につなげる方法などを解説します。
二人目不妊とは
「二人目不妊」とは、医学的には「続発性不妊」と呼ばれ、過去に妊娠経験のある人が、その後なかなか妊娠に至らない状態を指します。一人目を自然妊娠(不妊治療を行っていない状態での妊娠)で授かった場合でも、二人目不妊となることがあります。
日本では、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合を「不妊症」と定義しており1)、二人目で不妊症に該当するようになることも少なくありません。
二人目不妊では以下のような特有の悩みを抱えてしまうことも少なくありません。
・家事や育児、仕事、不妊治療の両立が大変
・「二人目はまだ?」という周囲からのプレッシャーを受ける
・不妊の悩みを抱えるグループの中では「一人目がいてぜいたくな悩み」と思われそうで、悩みを相談できない
二人目不妊になる原因
二人目不妊になる原因には、年齢による体の変化や一人目の出産時による影響、セックスレス、ストレスなどが挙げられます。それぞれ詳しく説明します。
年齢による体の変化
第二子を妊娠しない原因のひとつは加齢です。加齢により、男女ともに妊孕性(にんようせい:妊娠する力)は低下します。
近年は晩婚化により第一子を出産する年齢が上がり、それに伴い第二子を希望するときにはすでに高年齢になっているカップルが増えています。
加齢による女性の不妊症
女性の加齢は妊孕性に大きく影響します。
20代前半の不妊率は5%以下ですが、20代後半で約9%、30代前半で15%、30代後半で30%に増加します。40歳以降になると約64%が自然妊娠の望みがなくなると推定されています2)。
加齢によって妊娠しにくくなる主な原因は、卵子の質の低下です。
卵子の元となる卵母細胞は、女性が産まれる前(胎児期)に一番多く、その後年齢とともに減っていき、新たに作られることはありません。つまり年齢が上がるほど、卵子も老化していくのです。
卵子の質が低下する詳しい仕組みについては、まだ解明されていない点が多いですが、卵子の細胞内でエネルギーを調節する機能が衰えることが、その一因と考えられています3)。
また、加齢に伴い染色体異常が起こる頻度も高まります。染色体異常の増加は、流産のリスクを高める原因のひとつです。染色体異常が多くなる40代では、生殖補助医療などの不妊治療をおこなったとしても、妊娠する確率は低くなる傾向にあります4)。
加齢による男性の不妊症
男性の加齢も不妊となる原因のひとつです。男性は生涯を通して精子を生産できますが、精子の質は年齢により低下します。
精子の質の指標として、精液量や精子濃度、精子の運動率、精子の形が正常な割合を示す正常形態率などがあります。これらの指標の多くは、年齢を重ねるごとに低下していく傾向があります。
例として、50歳代では30歳代に比べて精液量が3~22%、精子運動率が3~37%、正常形態率が4~18%低下したという報告があります5)。
このように男性側の加齢も不妊の原因となります。
帝王切開による影響
一人目の出産が帝王切開の場合、帝王切開瘢痕(はんこん)症候群によって不妊症を引き起こすことがあります。
帝王切開瘢痕症候群とは、帝王切開の術後に子宮内の傷口が完全にくっつかず、子宮内に陥没した傷あとが残る病気です。この陥没した部分に粘液や月経血がたまり、着床を妨げることがあります。
子宮内の癒着
子宮の手術後に子宮内膜が炎症を起こし、組織同士がくっついてしまうことがあります。これを子宮内腔癒着(しきゅうないくうゆちゃく)といいます。帝王切開や流産・中絶の手術(子宮内膜掻爬術※)などにより、子宮内膜が傷つくことが原因のひとつです。
子宮内に癒着が起きると、子宮内腔が狭くなることで、月経異常、着床障害などが起こり、不妊につながることが知られています。
※子宮内膜掻爬術(しきゅうないまくそうはじゅつ):子宮内膜から異常な組織や胎児・胎盤などを掻き出す処置のこと
セックスレス
二人目の妊娠を目指すためには、一人目の育児をしながら妊活する必要があります。
育児以外にも家事や仕事に追われ、夫婦の時間をとれず性交渉の機会が少なくなるカップルは多いでしょう。普段から家事や育児の分担など、パートナーと協力し合うことが大切です。
ストレス
二人目の妊活時は、育児や仕事、家事に追われ休む暇がないなど、ストレスがたまりがちです。強いストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こし、不妊のリスクを高めることが報告されています6)。
自分に合ったストレス解消法を見つけ、ストレスをため込みすぎないよう意識しましょう。
二人目不妊の検査タイミング
前述のとおり、健康な男女が避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合は不妊症とされるため、検査を受けるタイミングのひとつです。
また、35歳以上では高齢出産と言われますが、年齢が高い場合には妊娠しない期間が1年未満でも、より早期に検査と治療を開始したほうがよいという考えが一般化してきています7)。
アメリカの生殖医学会は、「定期的な性交を行っており、どちらのパートナーにも生殖能力の低下を示す要因がない場合、女性が35歳以上の場合は6か月後に評価を開始する必要がある」としており8)、35歳以上では6か月が検査を受けるタイミングのひとつといえます。
二人目不妊の検査
二人目不妊の検査内容は、基本的には一人目が不妊である際に受ける検査と同じです。一般的な検査内容について説明します。
【内診と経腟超音波検査】
内診では、子宮や卵巣の位置や大きさ、硬さなどを確認し痛みや異常の有無を調べますが、近年では触診よりも、経腟超音波検査で異常の有無を確認するのが主流となっています。
経腟超音波検査では、超音波プローブを腟から挿入し超音波(エコー)で映し出される画像を観察します。子宮や卵巣の状態を確認し、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、卵巣囊腫や子宮内膜症など不妊の原因となる器質的疾患の有無を確認することができます。
【子宮卵管造影検査】
子宮内へ造影剤を入れ、X線撮影をする検査です。子宮の形や、卵管がつまっていたり狭まったりしてないか、子宮の癒着の有無(くっついている部分がないか)などを確認します。
自然妊娠を望めるかを確認する意味でも重要な検査であり、造影剤が卵管の中を通ることで軽度のつまりが解消され、検査後は妊娠しやすくなるケースもあります。
子宮卵管造影検査については、以下のページで詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
関連ページ:子宮卵管造影検査
【血液検査】
採取した血液から不妊の原因となり得る要因を調べる検査です。
クラミジアをはじめとする感染症の有無や、女性ホルモンや男性ホルモンの値、流産や不妊の原因となる甲状腺ホルモンの値などを調べます。また、一般的な血液検査の項目から、糖尿病や貧血といった疾患がないかも確認します。
血液検査はさまざまな身体の状態を反映するため、不妊の原因の調査や、今後の治療方針を決める上でとても重要です。
血液検査で何らかの疾患が疑われる場合には、さらに詳しい検査が必要となることがあります。必要な検査や治療の内容は、個々の状況によって異なります。
二人目不妊の治療について
二人目不妊の治療は、一般的な不妊治療と同様です。代表的な不妊治療について紹介します。
タイミング法
タイミング法とは、排卵に合わせ性交渉をもつべきタイミングを医師が指導し、妊娠を目指す方法です。不妊治療の中では身体的、金銭的負担が少なく、自然妊娠に近い方法となります。
タイミング法は健康保険が適用され、年齢、回数制限はありません。
タイミング療法については、以下のページで詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
関連ページ:タイミング療法
人工授精
人工授精とは、排卵の時期に合わせて子宮の入口からカテーテルを挿入し、子宮内腔へ処理された精液を直接注入する方法です。採卵等は必要ないため、比較的自然妊娠に近く、女性の身体への負担が少ない不妊治療です。
人工授精も健康保険が適用され、年齢、回数制限はありません。
人工授精については、以下のページで詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
関連ページ:人工授精
体外受精(c-IVF) / 顕微授精(ICSI)
体外受精(c-IVF)と顕微授精(ICSI)は、「生殖補助医療(ART)」と呼ばれる近年進歩している新しい治療法です。発育した卵子を卵巣から取り出し、体外で精子と受精させます。
体外受精は、採取した卵子に一定数の精子をふりかけ、同じ容器の中で培養することで、精子自らの力で受精させる方法です。
顕微授精は顕微鏡で形態や運動性が良好な精子をひとつ選択し、細い針を使って卵子の中に注入し授精させます。
体外受精と顕微授精はどちらも保険適用になりますが、年齢と回数制限があります。これは二人目不妊の場合でも同様とされていますが、回数のカウントは1子ごとにリセットされます。なお、胚移植まで至らず採卵や受精のみで終了した場合は回数にカウントされません。
※胚移植:体外受精や顕微授精により得られた受精卵(胚)を子宮内に戻す処置のこと
体外受精、顕微授精については、以下のページで詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
関連ページ:体外受精
関連ページ:顕微授精
二人目の妊娠をしやすい方法
二人目を妊娠しやすくするためには、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?
二人目の妊娠の可能性につなげる方法として、産後の体を整える、排卵のタイミングを知る、ブライダルチェックを受けることなどが挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
産後の体を整える
産後の体は完全に回復するのに時間がかかります。次の妊娠に向けて体を整えるためにも、出産してから次の妊娠までは一定期間あけることが良いとされています。次の妊娠までの期間が短いと、仮に妊娠できても赤ちゃん側のリスクが高まることが知られています。
2006年のWHO(世界保健機関)の報告書では、出産後は24か月の妊娠間隔を空けることを推奨しています9)。
また、2023年の海外の研究では、産後18〜23か月あけて妊娠した場合と、産後6か月未満で妊娠した場合の妊娠後のリスクを調べており、産後6か月未満では早産や低出生体重児のリスクが高まるとされています10)。こちらの報告でも18~23か月の妊娠間隔が推奨されており、一定の期間の妊娠間隔をあけることは大切といえます。
産後の体を整えるには、生活習慣の見直しが大切です。睡眠不足や栄養バランスの偏った食事、ストレスはホルモンバランスや月経周期の乱れにつながります。
日々の生活習慣を見直したり、ストレス管理をしたりすることで妊娠に向けた体づくりをしましょう。
排卵日を予測する
2人目に限ったことではありませんが、妊娠の可能性を上げる方法として、月経周期を把握し、排卵日を予測して、妊娠しやすいとされる日にタイミングをとることが挙げられます。
日頃から月経の開始日や基礎体温を記録するなどして、自分の月経周期を把握しておきましょう。月経周期が28日の人は、月経開始日から14日目ごろが排卵日と予測できます。
排卵日の2日前から最も妊娠しやすいと考えられており、排卵日の4日前ごろから1〜2日おきにタイミングをとると妊娠の確率が高まるとされています11)。月経周期が不規則な方は、排卵日予測検査薬※を活用するのも選択肢となります。
※排卵日予測検査薬:尿中に分泌されるLHサージ(排卵日前の急激な黄体形成ホルモンの上昇)を検出し、排卵日を予測するもの
ブライダルチェックを受ける
ブライダルチェックとは、今後妊娠を考えている方に向けた、妊娠や出産に影響を与える問題がないかなど体の健康状態を調べる検査です。
一般的なブライダルチェックでは、超音波検査に加え、血液検査でAMH(抗ミュラー管ホルモン)※、女性ホルモン基礎値、甲状腺機能、感染症の有無などを確認します。
「ブライダルチェック」は、その名前から結婚前に受ける検査というイメージをもたれがちですが、妊娠を希望する全ての方を対象とした検査です。結婚後に不妊が気になる方、二人目不妊を不安に思っている方でも、問題なく受けることができます。
ブライダルチェックについては、以下のページで詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。
参考ページ:女性ブライダルチェック
※AMH(抗ミュラー管ホルモン):卵胞を覆う細胞から分泌されるホルモンで、卵子の残数の指標となるもの
二人目不妊に関するよくある質問
二人目不妊に関するよくある質問について回答します。
Q.病院へは子連れで通院しても良いでしょうか?
はい、トーチクリニックは子連れでの通院が可能です。
ただし処置や手術が必要となる日には、必ず治療を受けるご本人以外の大人の方を同伴の上でご来院ください。
おわりに
参考文献
1)日本産科婦人科学会. 不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/
2)日本産婦人科医会. 不妊の原因と検査. 日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/lecture/5-不妊の原因と検査/
3)日本生殖医学会. Q24.加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?.日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa24.html
4)日本産科婦人科学会. ARTデータブック2023. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/activity/art/2023_JSOG-ART.pdf
5)日本生殖医学会. 年齢が不妊・不育症に与える影響. 日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa25.html
6)CD Lynch , R Sundaram, JM Maisog, AM Sweeney, GM Buck Louis . Preconception stress increases the risk of infertility: results from a couple-based prospective cohort study—the LIFE study.Hum Reprod. 2014 May;29(5):1067–1075.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3984126/
7)日本生殖医学会. Q2 不妊症とはどういうものですか? 日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa02.html
8)American Society for Reproductive Medicine. Definition of infertility. Practice Committee Documents. ASRM.
https://www.asrm.org/practice-guidance/practice-committee-documents/definition-of-infertility/
9)World Health Organization. Birth spacing: policy brief. Geneva: World Health Organization
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/73710/RHR_policybrief_birthspacing_eng.pdf
10)Ni W, Gao X, Su X, et al. Birth spacing and risk of adverse pregnancy and birth outcomes: a systematic review and dose-response meta-analysis. Acta Obstet Gynecol Scand. 2023;102(12):1618-1633.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10619614/
11)日本産婦人科医会. タイミング療法. 日本産婦人科医会ウェブサイト
https://jaog.or.jp/lecture/9-%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0/