二人目をなかなか妊娠しない。二人目不妊の原因と治療について

最終更新日時:
2024-05-10
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

「二人目不妊」とは、過去に妊娠経験のある方がその後妊娠しない状態のことです。第一子が自然妊娠の場合でも、二人目不妊となることがあります。ここでは、二人目不妊の原因やその治療方法、二人目不妊特有のお悩みについて解説します。

二人目不妊とは?

「二人目不妊」は、医学的には「続発性不妊」と呼ばれ、過去に妊娠経験のある方が、その後妊娠しない状態であることを指します。なお続発性不妊の定義では、流産も過去の妊娠に含まれます。一人目のお子さんを自然妊娠で授かった場合でも、二人目不妊となることがあります。

そもそも不妊の定義は「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態」であり、ここでいう「一定期間」は約1年とされています。ただし初産年齢が35歳以上の場合、二人目不妊においては1年を待たずに約6ヶ月で検査や治療を受けることがおすすめするケースが多いです。

また二人目不妊では
・家事や育児、仕事、不妊治療の両立が大変
・「2人目はまだ?」という周囲からのプレッシャーを受ける
・不妊の悩みを抱えるグループの中では「1人目がいてぜいたくな悩み」と思われそうで、悩みを相談できない
といった、二人目不妊特有の悩みを抱えることが多くあります。

二人目不妊になる原因は?

年齢による体の変化

第二子を妊娠しない原因のひとつは加齢です。加齢により、男女ともに妊孕性(にんようせい:妊娠する力)は低下します。

近年は晩婚化により第一子を出産する年齢が上がり、それに伴い第二子を希望するときにはすでに高年齢になっているカップルが増えています。

加齢による女性不妊症

妊孕性は30歳から徐々に低下し、35歳を過ぎるとその傾向は顕著になり、40歳を過ぎると急速に低下します。具体的には、不妊の頻度は25歳~29歳では8.9%、30~34歳では14.6%、35~39歳21.9%、40~44歳では28.9%と報告されており、30歳くらいから不妊症が増加、つまり自然に妊娠する確率が下がります。

加齢による男性不妊症

男性の場合も、加齢により妊孕性が低下するといわれています。

成人男性の精巣では生涯を通じて精子がつくられますが、加齢とともに少しずつその機能が低下します。

また、30歳代と比較すると50歳代では精液量は3~22%、精子運動率は3~37%、精子正常形態率は4~18%低下するという報告があります。女性の年齢や他の要因の影響を除いても、男性の加齢によって自然流産の確率が上昇すると報告されています。例えば、45歳より高齢の男性では25歳未満と比較して自然流産の確率が約2倍になるという報告があります。

一人目出産時の影響

一人目の出産が帝王切開の場合、帝王切開瘢痕(はんこん)症候群によって不妊症を引き起こすことがあります。

帝王切開瘢痕症候群は、帝王切開の時に縫合した子宮の筋肉や粘膜がうまく着かず、その隙間に溜まった粘液や古い経血が受精卵の着床を邪魔する原因になります。

また第一子出産時に癒着胎盤があった場合、子宮内膜が薄くなり着床しにくくなるといわれています。

セックスレス

家事や育児、仕事に追われ夫婦の時間をとれず、性交渉の機会が少なくなるカップルは多く、それによって妊娠の機会が減少することがあります。

二人目不妊の検査

二人目不妊の検査タイミングは?

思い立ったときが検査のタイミングです。早めに医療機関を受診し、不妊の検査を受けることをおすすめします。特に、高年齢(35歳以上)の場合は、卵巣機能の低下により妊娠できる残りの期間がすでに限られています。第二子の妊娠を望むカップルは、早めに産婦人科医に相談しましょう。検査内容は、一人目の不妊の場合と同じです。

二人目不妊の検査について

一般的な女性の不妊治療の検査内容について紹介します。

【内診・経腟超音波検査】

産婦人科診察室の診察台の上でおこないます。子宮・卵巣を産婦人科的に診察しておして痛いところがあるかどうかを見るとともに、細い超音波プローブを腟から挿入して子宮筋腫・卵巣のう腫・子宮内膜症などの異常がないかを確認します。

【子宮卵管造影検査】

X線による透視をしながら子宮口から子宮内へ造影剤を注入し、子宮の形や卵管が閉塞していないかを見る検査です。少し痛みをともなう検査ですが、この検査の後自然に妊娠することもすくなくないこともあり、大切な検査です。

【血液検査】

外来の採血室で血液を採取して、ホルモン検査や糖尿病など全身疾患に関係する検査を行います。ホルモン検査の中には、女性ホルモン・男性ホルモンや卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン・黄体化ホルモンが含まれますが、その他にも母乳を分泌するプロラクチンや甲状腺ホルモンの検査も行います。ホルモンは月経周期によっても変化しますので、月経期・黄体期などに分けて検査します。

妊娠しにくい原因がないかどうか調べる検査は、基本的には一人目不妊と同じです。治療は、年齢や妊活期間、一人目の妊娠方法などにより変わります。また、これまでの出産で胎盤が癒着や剥離を起こした人、産褥(さんじょく)熱を起こした人などは、卵管造影検査を積極的に行います。

二人目不妊の治療について

タイミング法

タイミング法とは、性交渉をもつべきタイミングを医師が指導することで妊娠を目指す方法で、不妊治療の中では身体的、金銭的負担が少なく自然妊娠に近い方法です。一般的なタイミング法は健康保険が適用されます。

人工授精

人工授精とは、排卵の時期に合わせて子宮の入口からカテーテルを挿入し、子宮内腔へ処理された精液を直接注入する方法です。採卵等は必要ないため、自然妊娠に近く女性の身体への負担が少ない不妊治療です。一般的な人工授精も健康保険が適用されます。

体外受精(c-IVF) / 顕微授精(ICSI)

体外受精は高度生殖医療のひとつで、卵巣で発育した卵子を体外に取り出し、精子と受精させる治療です。受精方法は2種類あり、体外受精(Conventional-IVF:c-IVF)と顕微授精(ICSI:Intra Cytoplasmic Sperm Injection)に分けられます。

IVFは卵子と精子を同じ容器の中に入れ、精子自らの力で受精させる方法で、ICSIは顕微鏡を使って形態や運動性が良好な精子を選択し、卵子の中に細い針で注入する受精方法です。

体外受精の保険適用には年齢・回数制限があり、これは二人目不妊の場合でも同様です。

初回の治療開始時点の女性の年齢保険適用の回数の上限
39歳以下の方1子ごとに、通算の「胚移植」回数6回まで
40歳~42歳の方1子ごとに、通算の「胚移植」回数3回まで
43歳以上の方保険適用にならない

よくある質問

Q.病院へは子連れで通院しても良いでしょうか?

はい、トーチクリニックでは子連れでの通院が可能です。

ただし処置や手術が必要となる日には、必ず治療を受けるご本人以外の大人の方を同伴の上でご来院ください。

Q.2人目を希望していますが、いつ頃から受診できますか?

不妊かな?と気になったらすぐ、受診していただいて構いません。

ただし、授乳中は多くの薬が使えないため、本格的な治療を始めるなら授乳期間が終わってからが良いといえます。

おわりに

トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週6日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております

また、すでに不妊治療を受けている方々のお悩みやセカンドオピニオンにも対応しております。セカンドオピニオンを含めたクリニックへのよくあるご質問はこちらをご参考ください。