卵管造影検査の痛みはどのくらい?いつまで痛いと感じるか、続く時間や痛み止めになどを解説

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
上野院 院長 婦人科 生殖医療科 医師
お二人の道のりが明るく照らされるよう「理解」と「納得」の上で選択いただく過程を大切にしています。エビデンスに基づいた高水準の医療提供により「幸せな家族計画の実現」をお手伝いさせていただきます。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

卵管造影検査は、不妊の原因を調べるうえで重要な検査のひとつです。卵管の詰まりや子宮の状態を確認できる一方、検査の痛みについて不安に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、卵管造影検査の痛みを感じるタイミングや痛みを感じる割合や程度などについて解説します。

卵管造影検査とは

子宮卵管造影検査のイメージ
子宮卵管造影検査のイメージ

卵管造影検査とは、卵管の通過性や子宮の状態に異常がないかを確認する検査です。細いチューブを子宮頸管(子宮の入り口)から入れ、造影剤を注入し、X線撮影をしながら観察します。

卵管は卵子と精子が出会い、受精が起こる場所です。閉塞や狭窄があると不妊の原因になります。

卵管造影検査は、卵管の通過性を見るほか、子宮の奇形や子宮内膜ポリープ、卵管周囲の癒着などを確認でき、不妊の原因を明らかにするための重要な検査です。検査後は自然妊娠の確率が上がるとの報告もあります1)

しかし、検査には痛みを伴うことがあり、まれに感染症や造影剤のアレルギーを引き起こす可能性もあります。

X線撮影をするため、検査は絶対に妊娠していない時期に行う必要があり、月経周期の排卵日までに行うことが一般的です。また、性感染症や甲状腺機能の悪化を防ぐため、事前にクラミジア検査や甲状腺機能の確認を実施します。

卵管造影検査については以下のページでも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

関連ページ:子宮卵管造影検査

卵管造影検査の痛みについて

卵管造影検査では、個人差はありますが、検査中もしくは検査後に下腹部に痛みや不快感を感じることがあります。

痛みのタイミングや痛みの程度などについて、海外の研究報告の例などをあげて紹介します。

チューブを入れる際の痛み

造影剤を入れるためのチューブは、「バルーンカテーテル」と呼ばれる先端が風船状に膨らむ細い管が使用されることが一般的です。柔らかい素材であり子宮内を傷つけにくいとされていますが、狭い子宮頸管を通過するときに、痛みを感じることがあります。

また、このバルーンカテーテルは造影剤の逆流を防ぐため、挿入後に子宮の入り口付近でバルーンを膨らませます。このバルーンを膨らませる際にも、痛みや不快感を感じることがあります。

造影剤の注入による痛み

造影剤の注入は、卵管造影検査の中でも痛みを感じやすいステップです。

卵管造影検査を受ける75名を対象に、検査の各ステップで痛みの程度を調査した海外の研究があります。痛みを観察するステップとして、造影剤注入のステップ以外では、器具の挿入や設置時、検査終了15分後があります。この中で最も痛みが強く感じるのは造影剤注入時であるという結果であり、統計学的にも差があったことが報告されています2)

痛みを感じる人の割合と痛みの程度

卵管造影検査で痛みを感じる人の割合や、痛みの程度についても海外での研究報告があります。

X線子宮卵管造影検査(HSG)の処置中に痛み(骨盤痛)を感じた人は72%という結果でした。また、痛みの程度は、通常の生理痛と同等かそれ以下と回答した人が85%という結果でした3)

この結果は、X線子宮卵管造影検査を実施した32名のみの小規模な研究報告であり、誰にでも当てはまるものではありません。しかし、卵管造影検査の痛みは必ずしも全員が経験するものではなく、痛みの程度も心配するほどではない場合もあることがわかる内容といえます。

痛みが出やすい人

卵管造影検査で痛みを感じやすい人の特徴についても、いくつか研究結果が報告されています。

例を挙げると、169名の女性を対象とした海外の研究では、卵管造影検査で異常が認められた女性は、両側の卵管が開いていることを確認できた女性よりも痛みのスコアが高かったとされています4)。この結果からは、卵管に詰まりがあったり塞がっていたりすると、より痛みを感じやすくなることが想定されます。

一方で、年齢や不妊の期間、出産歴や腹部の手術歴などでは差がなかったとされています。

ただし、痛みの感じ方には個人差が大きく、必ずしもこの結果に当てはまらない可能性もある点は注意しましょう。

卵管造影検査の痛みはいつまで続く?

一般的には卵管造影検査に伴う軽度または中等度の痛みや不快感は、5~10分程度とも言われています。ただし、人によっては数時間続く場合もあるため5)、時間的な余裕を持って検査を受けることが推奨されます。

また、検査後に数日以内に痛みが強くなったりする場合は、感染症などの可能性もあるためこのような場合は医療機関に連絡しましょう。

卵管造影検査の痛みを和らげる方法

卵管造影検査の痛みの感じ方は個人差も大きいですが、痛みを和らげる方法の代表例について解説します。

造影剤をゆっくりと注入してもらう

造影剤を注入するときに痛みを感じる原因として、注入時に子宮や卵管に圧力がかかることや腹膜への刺激が考えられています。

このような痛みは、造影剤をゆっくり時間をかけて注入することで軽減できる可能性があります。

鎮痛剤を飲む

痛みを軽減する目的で、卵管造影検査前に鎮痛剤(痛み止めの薬)を処方する場合もあります。

実際にいくつかの研究では、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の鎮痛剤の使用によって、卵管造影検査の痛みが軽減されたと結論づけている報告もあります6)

ただし、鎮痛剤の使用の有無や、薬の種類、使用するタイミングについては医療機関の方針によっても異なるため、事前に確認したり相談した上で、施設のルールに合わせて対処しましょう。

検査中はリラックスする

メンタル的な側面も卵管造影検査の痛みに影響を与える要因となる可能性があります。

卵管造影検査の際に、音楽を聴きながら処置を受けた場合と、聴かずに処置を受けた場合で痛みの程度を比較している研究報告もあり、音楽を聴きながら処置を受けた場合の方が痛みが少なくなるという結果でした7)

この結果からは、リラックスしながら検査に臨むことで痛みが和らぐ可能性が考えられます。

音楽を聴きながら検査を受けるのは医療機関の方針で難しい場合も多いですが、不安なことを事前に相談したり、受診前に気分転換をしたりすることで、なるべくリラックスした状態で検査に臨むのが良いでしょう。

おわりに

トーチクリニックには生殖医療専門医が在籍し、一般不妊治療や高度生殖医療を提供しています。子宮卵管造影検査も実施しており、検査結果についても専門的な立場から適切な情報提供をしてサポートします。

恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、働きながらでも通いやすい環境を提供しています(子宮卵管造影検査は現在は恵比寿院のみ)。

子宮卵管造影検査などの検査や不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。

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また、子宮卵管造影検査についての解説記事もご参考にしてください。

子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査とは女性不妊症の診断に用いられる検査で、自然妊娠をのぞめるかを確認する上で必須の検査です。卵管が詰まっていたり狭まっていたりしないか、子宮の中にくっついている箇所がないか、その他の病変はないかを調べる目的で行います。また、卵管に造影剤を通過させることで妊娠率が上昇することも知られています。

参考文献

1)Dreyer K, van Eekelen R, Tjon-Kon-Fat RI, et al. The therapeutic effect of hysterosalpingography in couples with unexplained subfertility: a post-hoc analysis of a prospective multi-centre cohort study. Reprod Biomed Online. 2019;38(2):233-239.
https://www.rbmojournal.com/article/S1472-6483(18)30585-6/abstract

2)Unlu BS, Yilmazer M, Koken G, Arioz DT, Unlu E, Baki ED, Kurttay C, Karacin O. Comparison of four different pain relief methods during hysterosalpingography: a randomized controlled study. Pain Res Manag. 2015;20(2):107-111.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1155/2015/306248

3)Ayida G, Kennedy S, Barlow D, Chamberlain P. A comparison of patient tolerance of hysterosalpingo-contrast sonography (HyCoSy) with Echovist-200 and X-ray hysterosalpingography for outpatient investigation of infertile women. Ultrasound Obstet Gynecol. 1996;7(3):201-204.
https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.1469-0705.1996.07030201.x

4)Szymusik I, Grzechocińska B, Marianowski P, Kaczyński B, Wielgoś M. Factors influencing the severity of pain during hysterosalpingography. Int J Gynaecol Obstet. 2015;129(2):118-122.
https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1016/j.ijgo.2014.11.015

5)American Society for Reproductive Medicine ReproductiveFacts Foundation. Hysterosalpingogram (HSG) [Fact sheet] https://www.reproductivefacts.org/news-and-publications/fact-sheets-and-infographics/hysterosalpingogram-hsg/

6)Hikmet Hassa , Tufan Oge , Yunus Aydin , Derya Burkankulu.Comparison of nonsteroidal anti-inflammatory drugs and misoprostol for pain relief during and after hysterosalpingography: prospective, randomized, controlled trial(Abstract).Randomized Controlled Trial. J Minim Invasive Gynecol. 2014 Sep-Oct;21(5):762-6.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24607797/

7)Mumcu B, Aydın A. The effect of music on pain and anxiety during hysterosalpingography: a randomized controlled trial. BMC Nurs. 2025;24(1):862.
https://bmcnurs.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12912-025-03494-y