男性不妊とは〜不妊症の原因の約半数は男性が関与〜
「不妊」とは子供を欲しいと願うカップルが定期的な性生活を送っても1年以上妊娠しない状態をいいます。不妊の原因は女性にあると考えられがちですが、実は不妊症の48%は男性に原因があると分かっています(WHOの調査結果)。つまり、男性側に不妊の原因があるものを男性不妊といいます。
男性不妊の種類や原因は?
男性不妊の原因は大きく分けて3つあります。
それは、「精子を作り出せない(造精機能障害)」「精子を作り出せるが、尿道まで出てこられない(精路通過障害)」「勃起が起きない、射精ができない(性機能障害)」の3つです。以下に原因とともに説明します。
①造精機能障害
精巣(睾丸)の異常により精子を作り出せない状態です。
男性不妊症の原因のうち最も多い原因で、約80%を占めています。
受精が出来る完全な精子を作るためには、まず精巣で精子を作り出し、そして精巣上体という場所を通る間に運動能力を獲得する必要があります。この流れのどこかに異常があると、精子の数が少ない、精子の動きが悪い、奇形の精子が増えるといった状態になり受精できる力が低下します。原因としては、精巣の上にある血管が太く膨れ上がる精索静脈瘤やホルモンの低下など様々な理由が考えられますが、多くの場合は原因不明といわれています。
中には、先天的(生まれつき)に精子を作ることができなかったり、作る量が少ない方がいます。その場合は遺伝子検査を追加で行うことがあります。
②精路通過障害
精子は精巣で作られた後、精巣上体、精菅、射精菅、尿道と順番に通ります。
この経路に異常があり、精液中に精子が出てこない状態です。原因としては、先天性の病気や鼠径ヘルニアの手術、精巣上体炎により精菅が塞がっていることなどが考えられます。
③性機能障害
性機能障害は2種類あり、勃起障害(ED)と射精障害があります。
勃起障害では、勃起状態を保てず性行為がうまくいかない状態で、心因性のEDが最も多いといわれています。不妊の治療としてタイミング指導を行う場合性行為そのものをプレッシャーに感じてしまいEDとなってしまうケースもあります。
射精障害では、射精はできているものの精液が膀胱内に逆流してしまう逆行性射精や精液が出なくなる無精液症などがあり、神経障害、糖尿病、心因性、薬剤性など様々な原因が考えられます。
男性不妊の検査方法について
男性不妊の検査の基本的な検査は「精液検査」です。
トーチクリニックでは、不妊症の予防や早期発見を目的としたブライダルチェックや不妊症の原因を調べる不妊検査にて精液検査を実施しています。
禁欲2~5日後にマスターベーションにて採精容器に精液全量を採取いただき、精液の量、精子濃度、運動性、形、生存性などを調べます。なお、精液検査の結果は体調によって変化することもあり、1回の検査ですべて判断することは出来ません。当院では1回目の結果が不良であった場合、再検査を推奨しております。
また当院のオプションの検査の1つに「DFI検査」という「精子の質」を調べる検査もあります。精液検査では精子の外見的な異常を発見できますが、DFI検査ではDNA損傷のある精子の割合がわかるため、外見では分からない異常を発見できます。DNA損傷した精子の割合が高いと、人工授精・体外受精などの不成功や流産の原因に繋がるといわれています。
男性不妊の治療方法について
男性不妊の場合は、原因によって薬を使った治療法と手術とに分けられます。
前述した①造精機能障害の場合には、原因によってアプローチが異なります。
(1)服用している薬や喫煙、アルコール過剰摂取などの生活習慣が原因と考えられる場合には可能な範囲で中止をします。またサウナや長時間の入浴など精巣が長時間高温な環境におくような行動を避けるべきとされています。
(2)明確な有効性が示された治療法ではありませんが、精子の数が少ない、運動性が低い場合には、漢方薬やビタミン剤、血流を改善する薬を服用することがあります。
(3)脳にある視床下部、下垂体というホルモンの分泌を行う場所で機能不全がある場合には、ホルモン剤を使った治療が行われます。内服薬と注射薬があり定期的な内服、自己注射が必要となります。
(4)造精機能障害の原因に多い精巣静脈瘤では、精子形成障害が起きている場合、あるいは将来の精子形成障害が起きる可能性が考えられる場合に手術を行います。
その他、原因と必要性に応じて泌尿器科での治療を行うことがあります。
②精路通過障害の場合、手術で精子の通り道が塞がっている部分を取り除き精路を再建します。
③精機能障害のうち勃起不全(ED)に対しては、PDE-5阻害薬と呼ばれる内服薬が用いられます。射精障害では、誤ったマスターベーションをされている場合には器具を用いて矯正したり、逆行性射精に対して抗うつ薬が用いられることがあります。
男性不妊の治療費の保険適用について
男性不妊の検査、治療は保険が適用されることがほとんどです。
2022年4月から不妊治療の保険適用が開始されました。
精管閉塞、先天性の形態異常、逆行性射精、造精機能障害、勃起障害などに対して行われる薬物療法や手術療法も保険適用となります。
また2024年4月から今まで保険適用外であった治療に対しても保険が適用されることになりました。男性不妊に対しては、精巣内より精子を回収する顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)が挙げられます。
おわりに
不妊治療は早期に不妊の原因を探すためのスクリーニング検査を行うことが重要です。原因を検索せずに治療をはじめてしまうと、思わぬ原因が後から判明することもあります。当院ではブライダルチェックでスクリーニング検査が可能となっており、まず検査を通して自身のからだのことを知ることをおすすめしています。
不妊治療を進める上で男性側の原因検索や治療方針は重要となるため、婦人科と泌尿器科が連携することが推奨されています。トーチクリニックでは、男性の不妊検査で異常がある場合には提携病院へ紹介させていただいております。
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております。
また、すでに不妊治療を受けている方々のお悩みやセカンドオピニオンにも対応しております。セカンドオピニオンを含めたクリニックへのよくあるご質問はこちらをご参考ください。