ブライダルチェックは男女ペアが良い?カップルで受けるメリットや検査内容について解説

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
上野院 院長 婦人科 生殖医療科 医師
お二人の道のりが明るく照らされるよう「理解」と「納得」の上で選択いただく過程を大切にしています。エビデンスに基づいた高水準の医療提供により「幸せな家族計画の実現」をお手伝いさせていただきます。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

ブライダルチェックは男女ペアで受けることで、いくつかメリットがあります。不妊の原因は女性だけでなく男性側にある可能性も少なくない点や、夫婦で受けることで助成の対象になるケースがある点などがあります。この記事ではブライダルチェックを男女ペアで受けるメリットやブライダルチェックの一般的な内容について解説します。

ブライダルチェックとは

ブライダルチェックとは
ブライダルチェックとは

ブライダルチェックとは、妊娠に向けた現在の体の状態を確認するための検査です。

子宮や卵巣の状態、性感染症、ホルモンの異常などを調べることができ、自身の妊孕性(にんようせい:妊娠する力)を把握することにつながります。

体の異常を知らずに放置してしまうと不妊症の原因や、赤ちゃんの先天性疾患のリスクとなることがあるため、将来のライフプランを考えるうえで役立つ検査といえます。

ブライダルチェックと不妊症検査の違い

ブライダルチェックと不妊検査は、対象となる人や目的が異なります。

ブライダルチェック 不妊症検査
対象 妊娠を望むすべての方(未婚者も含む) 妊活を続けても妊娠に至らないカップル
主な目的 妊娠・出産に影響する疾患や体質を確認する 妊娠できない原因を特定し、治療方針を立てる

ただし、クリニックによって、ブライダルチェックの位置付けは異なることがあります。

症状や所見がない場合の検査はブライダルチェックに該当するのが一般的ですが、何らかの症状や疾患がある場合は、医師の判断のもとで不妊検査の一環として行われる場合もあります。

ブライダルチェックを男女ペアで受けるメリットは?

ブライダルチェックを男女ペアで受けるメリット
ブライダルチェックを男女ペアで受けるメリット

男女ペアでブライダルチェックを受けるメリットとして、以下のような点があげられます。

  • 不妊の原因の可能性を男女ともに調べられる
  • 助成金を申請できるようになる可能性がある
  • カップルで同じ認識を持てる

不妊の原因の可能性を男女ともに調べられる

不妊の原因の割合
不妊の原因の割合

不妊の原因は女性側にあるという印象を持つ人も多いですが、実際には男性側に原因がある場合も少なくありません。

WHO(世界保健機関)の報告によれば、不妊の原因の約半数は男性側もしくは男女両方にあるとされています。

そのため、女性だけでなく男性もブライダルチェックを受けて精子の状態やホルモンを確認することが、不妊原因を把握するうえで大切です。

助成金を申請できるようになる可能性がある

自治体によっては、不妊検査や妊娠前検査に対して助成金を設けています。これらの申請条件として、男女ペアで検査を受けることを求められる場合があります。

ブライダルチェックが対象になる可能性がある助成制度のうち、男女ペアが条件となるものの例として、東京都では不妊検査等助成事業、埼玉県では新ウェルカムベイビープロジェクト関連事業があります。

東京都の不妊検査等助成事業と埼玉県の新ウェルカムベイビープロジェクト関連事業は、検査費用の助成を受ける場合、いずれも事実婚を含む夫婦で検査を受けることが要件となっています。

ブライダルチェックが対象になる可能性がある助成制度は、後述の「地域によっては助成が受けられることもある」の部分で詳しく解説しています。

カップルとして同じ認識を持てる

男女ペアでブライダルチェックを受けると、お互いの健康状態を共有でき、妊活や将来のライフプランを考えるきっかけになります。

検査では妊娠に関する内容だけでなく、性感染症や生活習慣病のリスクも確認できます。

これらの結果を共有することで、治療や生活習慣の改善にも協力して取り組みやすくなり、長期的な健康管理にもつながる可能性があります。

ブライダルチェックは誰でも受けられる?結婚前や結婚後でも大丈夫?

ブライダルチェックは結婚前・結婚後に関わらず受けられます。特に妊娠を考え始めたタイミングや、今後のライフプランを見直したい時期に受ける人が多いです。

ブライダルチェックを受けることで以下の点につながる可能性があります。

  • 不妊症の原因となる疾患や性感染症を早期に発見できる
  • 妊活のスケジュールを立てやすくなる
  • 胎児感染による先天性疾患のリスクを把握できる

近年は晩婚化に伴い、不妊治療の件数が増加しています。自身やパートナーの妊孕性を早めに知っておくことで、今後の人生設計にも役立ちます。

ブライダルチェックの費用

以下は、トーチクリニックにおけるブライダルチェックの費用と内容のまとめです。

女性ブライダルチェック

ライトセット|¥13,850 : 卵子の残数、子宮や卵巣の状態を知りたい方向けのプランです。「経腟超音波検査」「AMH検査」が含まれます。

妊活セット|¥47,750 : 今後妊活を考えている方、もしくは現在妊活中の方向けのプランです。ライトセットの全ての内容に加え、「女性ホルモンの基礎値検査」「プロラクチン検査」「クラミジア抗体検査」「風疹抗体検査」「感染症検査」「甲状腺検査」「ビタミンD検査」「血算検査」「ホモシステイン」「ミネラル検査(鉄・フェリチン)」を行います。

フルスクリーニングセット|¥57,850 : より詳しく妊活に関わる検査を行いたい方向けのプランです。ライトセット、妊活セットの全ての内容に加え、「ミネラル検査(鉄・フェリチン・亜鉛)」「子宮頸がん検診(細胞診)」「血糖」「HbA1c検査」を行います。

女性ブライダルチェックについて詳しい内容を確認したい場合は、下記のページをご覧ください。

男性ブライダルチェック

ライトセット|¥3,000 : 将来に備えて検査したい方向けのプランです。「精液検査(一般検査)」が含まれます。

妊活セット|¥20,500 : これから妊活を考えている方向けのプランです。ライトセットの全ての内容に加え、「男性ホルモンの検査」「クラミジア抗体検査」「風疹抗体検査 」「感染症検査」を行います。

フルスクリーニングセット|¥42,500 : より詳しく妊活に関わる検査を行いたい方向けのプランです。ライトセット、妊活セットの全ての内容に加え、「DFI検査」「TAC検査」を行います。

オプション検査:さらに詳細な検査を希望する方向けの選択肢もあります。

男性ブライダルチェックについて詳しい内容を確認したい場合は、下記のページをご覧ください。

ブライダルチェックは保険適用外

保険診療は、何らかの症状や疾患がある場合に行われる診療に適用されます。

ブライダルチェックは将来の妊娠に備えて体の状態を確認することを目的としているため、原則として保険適用の対象にはなりません。

ただし、ブライダルチェックの検査項目に保険適用に該当する症状や疾患があった場合は、部分的に保険適用される場合があります。そのため、医療機関にかかるときは保険証を持参するようにしましょう。

地域によっては助成が受けられることもある

先述のとおり、自治体によってはブライダルチェックにかかる費用が助成の対象になるケースもあります。

東京都や埼玉県の例をあげると、不妊検査や妊娠前検査を対象とした以下のような助成制度があります。

  • 東京都の不妊検査等助成事業
  • TOKYOプレコンゼミ
  • 埼玉県の新ウェルカムベイビープロジェクト関連事業

各自治体によって助成の有無や内容は異なりますが、ここでは上記の制度を例として紹介します。

東京都の不妊検査等助成事業

東京都の不妊検査等助成事業は、都内の保険医療機関で行う不妊検査や一般不妊治療にかかった費用の一部を助成する制度です。助成額は夫婦1組につき1回、上限50,000円までとなります1)

注意点として、ヘルスチェックを行いたいといった検診目的で受けたブライダルチェックは助成の対象になりません。助成を申請したい場合は、医師が不妊の疑いがないかなどを調べる目的で対象の検査を実施し、助成金の申請に使用する証明書(不妊検査等助成事業受診等証明書)を医療機関から発行してもらう必要があります。

TOKYOプレコンゼミ

TOKYOプレコンゼミとは、東京都が18〜39歳の都内在住者を対象に開催している、プレコンセプションケアに関する無料講座です。受講すると妊娠・出産前のヘルスチェック検査で最大30,000円の助成が受けられます3)

結婚の有無にかかわらず参加できる制度であり、未婚の人も受講が可能で助成金の対象となります。

トーチクリニックはTOKYOプレコンゼミの登録医療機関であり、対象となる検査で助成金を受けることが可能です。なお、当院では現在女性向けの検査のみを対象としています。

埼玉県の新ウェルカムベイビープロジェクト関連事業

埼玉県では、市町村を通じて不妊検査や不育症検査にかかる費用の一部を助成する制度を設けています。

対象は婚姻または事実婚関係にあるカップルで、検査開始時に女性が43歳未満であることが条件です。助成額は35歳未満が上限30,000円、それ以外は上限20,000円までとなります4)

注意点として、各医療機関のブライダルチェックが助成の対象になるかは、県では判断できない旨が埼玉県公式サイトに記載されています。予定しているブライダルチェックが助成の対象になるかは、事前に市町村などに確認するようにしましょう。

ブライダルチェックで使える助成金については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

関連記事:ブライダルチェックで使える助成金とは?東京・神奈川・埼玉・千葉の制度や保険適用について解説

トーチクリニックでは、ブライダルチェックを提供しています。恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。

ブライダルチェックの検査項目と費用

ブライダルチェックでは、血液検査や超音波検査をはじめとした複数の検査を組み合わせて、卵巣や子宮、精子の状態などを調べます。

ここでは、女性と男性に分けてのブライダルチェックの流れと主な検査内容について紹介します。

女性ブライダルチェック

女性ブライダルチェックの流れは、以下のとおりです。

1. 予約 アプリまたは予約フォームからご予約ください。
2. 問診 看護師・心理士などのスタッフが事前問診を行います。
3. 採血 検査内容に応じて採血を行います。
4. 医師の
カウンセリング
妊孕性(にんようせい:妊娠する力)についての説明や
患者様の質問に回答します。
5. 結果説明 医師が検査結果と現在の妊孕性を説明します。

経腟超音波検査

経膣超音波検査は、子宮や卵巣の形態、卵胞の数や発育状態を確認する検査です。子宮筋腫や卵巣腫瘍など、不妊につながる異常がないかを調べます。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)

AMH検査は、血液から卵巣にどれくらいの卵子が残っているかを推定する検査です。測定する値は、あくまで卵子の数の目安であり、卵巣の質を評価するものではありません。

女性ホルモン検査

女性ホルモン検査は、E2(エストラジオール)、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)の値を血液から測定します。卵巣の機能や排卵の状態を評価し、不妊の原因を探る手がかりになります。

プロラクチン検査

プロラクチン検査は、乳汁分泌ホルモンと呼ばれるプロラクチンの値を血液から測定します。高値の場合は、排卵が抑制されるため、不妊の原因となることがあります。

風疹抗体検査

風疹抗体検査は、風疹ウイルスに対する免疫(抗体)があるかを確認する検査です。妊娠初期に風疹にかかると胎児に影響が及ぶ可能性があるため、妊娠前に確認しておくことが重要です。

感染症検査

感染症検査では、クラミジア、梅毒、HIV、B型肝炎、C型肝炎などの性感染症の有無を調べます。早期発見することで、不妊や母子感染のリスクを把握できます。

甲状腺機能検査

甲状腺機能検査は、血液からTSH、FT4、FT3といった甲状腺ホルモンを測定し、分泌異常がないかを確認する検査です。異常があると不妊症や流産、胎児の発育への影響につながることがあるため、異常がある場合は妊活を始める前に甲状腺の治療が必要です。

子宮頸がん検査

子宮頸がん検査は、子宮頸部の細胞を採取し、がんや前がん病変がないかを確認する検査です。妊娠中は子宮頸がんの治療を行うことが難しいので、妊娠前に検査を受けておくことが推奨されます。

女性ブライダルチェックの詳細は、以下の診療内容ページで詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

関連記事:女性ブライダルチェック

男性ブライダルチェック

男性ブライダルチェックは、以下の流れで行います。

1. 予約 アプリまたは予約フォームからご予約ください。
2. 問診 看護師・心理士などのスタッフが事前問診を行います。
3. 採血 検査内容に応じて採血を行います。
4. 結果説明 医師が検査結果と現在の妊孕性を説明します。

精液検査(一般検査)

精液検査(一般検査)では、顕微鏡を用いて、精液量や精子の濃度、運動率などを調べます。男性不妊の有無を確認するための最初のステップであり、不妊の原因を特定するための手がかりになる検査です。

精液検査(精密検査)

精液検査(精密検査)は、上記の一般検査ではわからない精子の質を評価する検査です。トーチクリニックでは、次の2つの検査を行っています。

  • 精子DNA断片化検査(DFI検査):精子のDNAが損傷している割合を測定する検査
  • 精液抗酸化力検査(TAC検査):精液中の酸化ストレスに対する対抗力を測定する検査

男性ホルモン検査

男性ホルモン検査では、テストステロン、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、プロラクチンといったホルモンを血液から測定します。これらの値を確認することで、精子形成や精巣機能、性機能に問題がないかを評価し、不妊の原因を調べる手がかりになります。

風疹抗体検査

風疹抗体検査は風疹ウイルスに対する免疫(抗体)の有無を確認する検査です。女性が妊娠後に風疹に罹患すると胎児に影響が及ぶリスクがあるため、男性も妊娠前に検査しておくことが重要です。

感染症検査

感染症検査では、クラミジア、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIVなどの性感染症の有無を調べます。早期に発見することで、パートナーへの感染や母子感染のリスクを把握できます。

男性ブライダルチェックの詳細は、以下の診療内容ページで詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

関連記事:男性ブライダルチェック

ブライダルチェックに関するよくある質問

ブライダルチェックに関するよくある質問とその回答をまとめました。

Q:結婚予定がない場合もブライダルチェックはできますか?

結婚の予定がなくても、ブライダルチェックは受けられます。ご自身の妊孕性や生殖器の健康状態を評価することは、将来の選択肢を増やすために役立ちます。専門の医療機関で相談し、必要な検査を受けましょう。

おわりに

トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

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また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考にしてください。

ブライダルチェック
ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

参考文献

1)東京都福祉局. 不妊検査等助成事業の概要. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/funinkensa/gaiyou

2)東京都福祉局. プレコンセプションケア. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/preconceptioncare

3)埼玉県. 新ウェルカムベイビープロジェクト関連事業(早期不妊検査・不育症検査に関する助成制度) . 埼玉県ウェブサイト
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0704/boshi/welcome_baby.html