着床出血は、子宮内膜に受精卵が着床する際に見られる出血です。誰でも起こるわけでなく、妊娠した女性の15〜25％程度でみられるという報告があり、一般的には妊娠3〜4週頃（生理開始予定日の1週間前から2〜3日）のタイミングで起こります。通常は2～3日程度で治まり、出血量は生理より少なく、痛みは生理痛より軽めです。本記事では着床出血の特徴や実際に出血があった場合の対応などについても解説します。
着床出血とは
着床出血とは、着床時期に起こりやすい代表的な症状のひとつです。具体的には、受精卵（胚盤胞）が子宮内膜に着床する際に、子宮内膜の血管を傷つけて少量の出血を起こしてしまう現象のことをいいます。着床出血は着床が完了したことを示すサインのひとつとも考えられています。
着床出血は全ての妊娠した女性で起こるわけではありません。着床出血が起こる割合を調査した研究は多くありませんが、アメリカ産科婦人科学会は着床出血も含む妊娠初期の出血は15〜25%の確率で起こる1）としていますが、別の調査では9%程度が経験すると報告2）されています。
着床出血が起こるまでの流れ｜排卵～着床
着床出血は受精卵が子宮内膜に着床する際に起こると考えられていますが、着床に至るまでには以下のような段階があります。
- 排卵
- 射精
- 受精
- 着床
上記のような段階を踏んで「着床」が成立した際に見られるのが着床出血ですが、前述のとおり着床した人すべてに見られるわけではありません。
頻度は多くても妊娠した女性の15〜25％程度と考えられ、症状が現れる人の方が少ないと言えます。着床出血がなくても妊娠している可能性はあるという点は知っておくのが良いでしょう。
「着床」については以下の記事でも詳しく解説しているので合わせて参考にしてください。
関連記事：着床とは？時期はいつ？着床出血や着床痛などの症状について
着床出血はいつ頃起こる？
着床出血は、妊娠3〜4週頃にあたる最後の生理開始日から数えて3～4週目に起こるとされています。次回の生理予定日から数えると、次回の生理予定日の1週間前から2〜3日前後に該当します。出血は数日で治まるのが特徴です。生理開始予定の時期に起こるため、見分けがつきにくいこともあります。着床出血は、着床したら100%起こるわけではなく、出血が起こらない場合もあります。
ここでは「タイミング法」「初期胚移」「胚盤胞移植」を行った場合に、着床出血がいつ頃起こるかを見ていきましょう。
タイミング法による性行為から何日後？
タイミング法で妊娠した場合に着床出血が起こる時期は、タイミング法による性行為後から約1〜2週間頃と考えられます。着床が起こるタイミングは厳密には性行為後からカウントするものでなく、排卵日からのカウントとなります。
タイミング法を実施している場合は、排卵日を予測して性行為を行うため、排卵日からのカウントと近くなるため、排卵日から着床が起こる約1〜2週間頃とほぼ同等の日数後と考えられます。妊娠週数では妊娠3〜4週頃に該当します。
初期胚移植から何日後？
初期胚移植とは、受精した胚を2〜3日培養した後に子宮内に戻す治療です。移植後約4〜5日で子宮内膜に着床すると考えられており、その時期に出血が起こることがあります。妊娠週数では妊娠3〜4週頃です。
胚盤胞移植から何日後？
胚盤胞移植とは、胚を胚盤胞になるまで培養してから移植する治療方法です。受精した胚を5〜6日間程度培養し、子宮内に移植します。移植後1〜2日で子宮内膜に着床すると考えられ、その時期に出血が起こることがあります。妊娠週数では3〜4週頃です。
胚移植から着床までの日数については、以下の記事でも詳しく解説しているため参考にしてください。
関連記事：胚移植から着床までの日数｜成功率を高めるポイントや胚移植後の過ごし方についても解説
着床出血の症状と特徴｜生理との見た目の違いや見分け方
着床出血は起こるタイミングも症状も生理と似ているため、見分けがつきにくいことがあります。しかし、着床出血と生理にはいくつか異なる点が存在するため、ここでは着床出血の症状について解説しつつ、生理との見分け方についても詳しく解説します。
着床出血の色（薄いピンク色・薄い茶色等）
着床出血の際の血の色は、薄いピンク色・薄い茶色・淡い赤色といった、生理と比べて薄い色になることが多いのが特徴です。そもそも着床出血は量が少ないため色が薄くなる傾向にあります。出血が新しい時期の場合はピンク色や赤色に、古い時期の場合は茶色っぽくなります。
着床出血の量｜多い？生理並み？血のかたまりは？
着床出血は着床時に子宮内膜に少し傷をつけてしまうことで起こる出血なので、出血量は生理と比べて少ないことが特徴です。パンティーライナーで対応できるくらいのイメージで、生理用ナプキンを使用するまでの出血量ではありません。
なお、着床出血では生理と違って血のかたまりが出ることはありません。
着床出血の期間｜何日間？｜1週間続く？
着床出血の持続期間は短い人が多いです。一般的には生理よりも短く、早い人では数時間程度、だいたいの人が2〜3日程度で治まることが特徴です。ただし、個人差があるため、長い人では1週間程度続く場合もあります。
着床出血の腹痛・痛み（着床痛）
着床出血による腹痛は生理痛と比べて比較的軽く、「お腹の奥の方がチクチクするような痛み」と表現されることもあります。人によっては腰の辺りに鈍い痛みを感じる人もいますが、生理痛のように激しく痛むことはほとんどありません。
着床出血の方が痛みが弱い理由としては、生理痛はプロスタグランジンというホルモンが分泌されることによって子宮が収縮することで生じるのに対し、着床出血時の痛みは子宮内膜に受精卵が着床する際に子宮内膜が少し傷つくことによって起こるためだと考えられています。
着床出血のにおい
着床出血は出血量が少なく、おりものと混ざっているケースが一般的です。鉄のようなにおいが混ざることもありますが、特徴的なにおいがあるわけではありません。
着床出血と生理の見分け方
着床出血は生理と同じようなタイミングで起こるため間違いやすいですが、着床出血と生理とではそれぞれ異なる特徴があります。ここまでこの記事で記載してきた情報を踏まえて、着床出血と生理の主な違いと見分け方をまとめると以下の通りです。
※症状には個人差があるため、表の内容はあくまで一般的なものです
着床出血以外の出血について
着床時期に着床出血の特徴とは異なる出血が見られた場合、不正出血のおそれがあります。一般的な着床出血は、出血量が少なくお腹の痛みも弱い傾向にあるため、出血量が多い・血のかたまりが出てくる・鮮血のような真っ赤な血が出る・強い腹痛があるといった症状が現れたら早めにクリニックを受診しましょう。また、不正出血のような明らかな症状がない場合も、妊娠に伴って起こりやすい病気が発症していることがあるため、妊娠しているかも？と感じた場合はクリニックを受診することをおすすめします。
その他、着床出血以外に考えられる主な不正出血の原因となる症状は以下の通りです。
妊娠初期の不正出血については、以下の記事でも詳しくまとめているので参考にしてください。
関連記事：妊娠初期の不正出血について｜着床出血以外の原因・出血の状態について解説
着床出血があった場合の対応
着床出血が見られた場合は、妊娠検査薬を使用し判定を確認する、クリニックへ相談するなどで対応するようにしましょう。それぞれ解説します。
妊娠検査薬を使う
着床出血のような出血があり、着床して妊娠しているかもと感じたら、市販の妊娠検査薬を使用するとよいでしょう。妊娠検査薬を使用するタイミングは、生理開始の予定日から約1週間後が目安です。生理予定日より早いタイミングで検査をすると、妊娠していても陰性になる可能性があります。妊娠したときに尿中に分泌されるhCGホルモンの量が、判定できる量に達しておらず、陰性になる場合があるのです。
もし妊娠検査薬を使用して陰性だったとしても、1〜2週間生理が来ないときは再検査をおすすめします。
妊娠検査薬を使用して陽性反応が出た場合は、妊娠検査薬の結果で自己判断せずに、必ず一度産婦人科やクリニックを受診してください。時期としては、生理予定日から数えて約1〜2週間後を目安にしましょう。
妊娠検査薬がいつから反応するかや使い方などの詳細については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事：妊娠検査薬はいつから反応する？使い方や妊娠判定まで解説
クリニックへ相談する
着床出血のような出血があり、妊娠しているかもと感じたら、最初にクリニックを受診するのもひとつの手です。妊娠判定だけでなく、何らかの病気の発見につながるケースもあります。大量に出血しているといった明らかな異常がない場合も、クリニックを受診することをおすすめします。
もしその時点で妊娠したかどうかがはっきりとわからなかったとしても、これからどうすればよいかなど医師から適切な指示をもらえます。専門的な知識や経験がある医師の診察により、安心感が得られることは大きなメリットです。
クリニックを受診するタイミングの目安としては、生理予定日から数えて約1〜2週間後がよいでしょう。また、妊娠検査薬で陽性反応が出た場合も、自己判断せずに必ず産婦人科やクリニックを受診して確定診断を受けましょう。
着床出血に関するよくある質問
Q：着床出血が起こるのは性行為から何日後ですか？
着床出血が起こるのは、着床前後の1〜2日程度と考えられています。性行為から着床までは排卵日がいつなのかによっても変わるため、仮に排卵日前後に性行為をした場合に着床出血が起こるのは、性行為からおよそ1〜2週間後と考えられます。
Q：着床出血があった場合の日常生活の注意点はありますか？
着床出血は、生理的な出血のひとつです。通常の妊娠初期の注意点に準じて過ごすとよいでしょう。主な注意点は以下のとおりです。
- 風邪や感染症にかからないようにする（感染予防）
- 飲酒・喫煙を止める
- 市販薬を自己判断で服用しない
- 運動の内容や強度について医師に相談する
- 体に負担のかからない姿勢で過ごす
- 乗り物の運転を控える
妊娠初期に少量の出血があり、すぐに産婦人科を受診しても、有効な対処法はないとされています3）。まずは自宅で安静に過ごしましょう。ただし、他の出血の可能性もあるため、注意深く観察するようにしてください。
妊娠している可能性があり腹痛がひどい場合などは、速やかに産婦人科へ連絡しましょう。いずれの場合も医師に報告しておくと安心できます。
Q：着床出血がない場合でも着床していることはありますか？
着床出血がなくても着床が完了していることはあります。着床出血は着床のサインのひとつではありますが、着床したら100%起こるわけではありません。着床しても無症状のこともあります。そのため、性行為後に生理が予定通り来ない場合は、一度妊娠検査薬でチェックするかクリニックを受診するとよいでしょう。
Q：生理予定日後に着床出血が起こることはありますか？
生理予定日後に着床出血が起こることはあり得ます。一般的には生理予定日の前に現れることが多いですが、排卵日や着床のタイミングが想定していたタイミングよりズレたり、週数の計算が間違っていることなどが理由として考えられます。
また、生理周期は体調やストレス、生活習慣などでも変動しやすいです。規則正しい生活を送り、ストレスをためないよう工夫するのも大切です。
Q：着床出血後のフライング検査で陰性でも妊娠の可能性はありますか？
着床出血後のフライング検査で陰性でも、妊娠の可能性はあります。フライング検査とは、本来は生理開始予定日の1週間後からが正しい使用法として規定されている妊娠検査薬を、それよりも早い日数で使用して検査することです。本来の使用方法から逸脱しているので、正しい判定が出ない可能性があります。
妊娠していてもフライング検査で陰性になる理由は、妊娠検査薬で検出する尿中のhCG（ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン）の量が十分でないことがあるからです。
生理開始予定日の1週間後であれば、hCG量はほぼ確実に検出できる量になるため、1週間後からを目安に使うのが一般妊娠検査薬の正しい使用法となります。
実際に妊娠していた場合は、フライング検査でも陽性となる可能性はありますが、陰性であった場合は妊娠が否定できる結果とは言えません。再度1週間後の検査が必要となるため、フライング検査に該当する使用はおすすめできません。
ただし、例外として早期妊娠検査薬に分類される製品は感度が高く、生理予定日の当日から使用できるものもあります。どうしても早く確認したい場合は、早期妊娠検査薬を選択することも検討しましょう。
Q：着床出血以外で妊娠の有無がわかる方法はありますか？
着床出血以外で妊娠したかどうか見分けるには、基礎体温を確認する方法があります。
基礎体温とは、朝目覚めて起き上がる前の、安静にしている状態の体温です。寝たままの状態で、舌の下に婦人体温計をはさみ測定します。正常であれば月経周期に伴って、低温期と高温期を約2週間ごとに繰り返します。妊娠した場合、高温期は3週間以上続くため、判断材料のひとつになるでしょう。
妊娠時の基礎体温については以下の記事でも詳しく解説しています。併せて参考にしてください。
関連記事：妊娠したら基礎体温はどうなる？グラフの見方や妊娠したときの体温について
その他妊娠の初期症状はいくつかあります。次の質問回答で詳しく解説します。
Q：着床出血以外で妊娠初期症状にはどのようなものがありますか？
着床出血以外の主な妊娠初期症状は以下のとおりです。
- おりものの量や色が変化する
- 眠気やだるさを感じる
- 食欲不振になったり食欲旺盛になったりする
- 乳房の張りや乳頭の痛みを感じる
- 精神的に不安定になる
- 熱っぽさや体のほてりを感じる
- 唾液や鼻水の分泌量が増加する
- 便秘や下痢になりやすくなる
- お腹の張りや腹痛・腰痛を感じる
- 頭痛やむくみを感じやすくなる
- 肌荒れや口内炎がおこりやすくなる
- めまいや立ちくらみが起きやすくなる
症状の現れ方には個人差があり、すべての症状が起こるわけでもありません。また、妊娠初期症状があまりみられない人もいます。
妊娠後の超初期に見られる症状については、以下の記事でもまとめているので参考にしてください。
関連記事：妊娠超初期症状があらわれる時期や主な症状｜妊娠の可能性があるときの注意点や病院を受診するタイミングについても解説
おわりに
参考文献
1）American College of Obstetricians and Gynecologists. Bleeding During Pregnancy. ACOG.
https://www.acog.org/womens-health/faqs/bleeding-during-pregnancy
2）Harville EW, Wilcox AJ, Baird DD, Weinberg CR. Vaginal bleeding in very early pregnancy. Hum Reprod. 2003;18(9):1944–1947
https://academic.oup.com/humrep/article-abstract/18/9/1944/708284
3）日本産婦人科学会．一般の皆様へ．参加・婦人科の病気．“流産・切迫流産”．日本産婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5707/
