2025年4月1日から始まった「妊婦のための支援給付」は、妊娠確定後と妊娠32週以降の全2回で基本的に計100,000円が受け取れる制度です。流産した場合も対象となり、申請期限は各タイミングから2年間です。支給方法は自治体により異なります。
妊婦のための支援給付とは
妊婦のための支援給付は、2025年4月1日から施行された新しい制度です。子ども・子育て支援法の一部改正により創設されました1)。
妊婦のための支援給付は、従来の支援策に加えて、妊娠期から切れ目のない支援を行うために設けられた制度です。こども家庭庁が主導となっていますが、運営自体は各地方自治体が行います。支援の内容自体は変わりませんが、支援給付の方法は自治体によって異なるため、注意が必要でしょう。
給付金は、妊娠が確定した後と、妊娠32週以降の2回に分けて受け取れます。
経済的な負担軽減と継続的な相談支援が目的
妊婦のための支援給付の目的は、経済的な負担軽減と継続的な相談支援です。
具体的に出産費用の平均を見てみると、2022年度は約550,000円にのぼります。2023年4月からは出産育児一時金が420,000円から500,000円に引き上げられましたが、分娩費用には地域差があったり、無痛分娩をする際には追加で料金がかかったりなど、経済的な負担には依然として個人差があります。
そこで、妊婦さんの経済的な負担をより軽減することを目的に「妊婦のための支援給付」が新たに創設されたのです。
また、2022年の出生数は727,277人、合計特殊出生率は1.20人と、年々出生数が減少しています。少子化の主な原因は未婚化と晩婚化ですが、背景には、若い世代の所得低下や不安定な雇用環境といった経済的不安が考えられています2),3)。そのため、妊婦のための支援給付は、少子化対策の一環でもあるでしょう。
さらに「妊婦等包括相談支援事業」として、妊娠してから産後まで継続的に情報提供や相談支援を行い、必要なときに必要な支援を受けられるような体制づくりも進められています。
妊婦のための支援給付で受け取れる金額と支給方法
妊婦のための支援給付で受け取れる金額は基本的に100,000円ですが、各地方自治体により支給の方法が異なります。
- 給付金の金額
- 支給のタイミング
- 地方自治体によって異なる支給方法
これらについて解説します。
基本的に10万円が受け取れる
妊婦のための支援給付では、基本的に2回に分けて合計100,000円が受け取れます。
ただし、引っ越しをして住所が他の地域に移った場合、他の自治体ですでに妊婦のための支援給付を受けた場合は二重給付となるため、給付対象外になる点に注意が必要です。
支給のタイミングは2回
1回目は、妊娠の届出後に50,000円が支給されます。ここでいう妊娠とは、医師に胎児心拍を確認してもらった状態のことです。
2回目は、出産予定日の8週間前である妊娠32週の日以降に、お腹にいる赤ちゃんの人数×50,000円分が支給されます。例えば、赤ちゃんが1人であれば50,000円、双子であれば100,000円を受け取れます。
ただし、申請からすぐに支給されるわけではなく数か月後に支給されるため、忘れないよう早めに申請しましょう。
支給方法は地方自治体によって異なる
妊婦のための支援給付の支給方法は、地方自治体によって異なります。
現金給付の場合もあれば、自治体独自の電子クーポンの発行、あるいは電子マネーでの給付をしている自治体も見られます。また、金銭の受け取りではなく、ギフトとして妊娠・出産・育児に関わる用品の購入やレンタルで受け取れる形式の自治体もあります。詳しくは、各自治体にお問い合わせください。
現金で給付金を受け取る場合は、公金受取口座の設定が必要です。公金受取口座は妊婦本人の名義でなくてはならないため、注意しましょう。
なお、torch clinic上野院がある東京都台東区では、1回目の給付は「ゆりかご・たいとう面接」の実施後に、そして2回目の給付は「こんにちは赤ちゃん訪問」の実施後に、それぞれ本人名義の口座に振り込まれます。
妊婦のための支援給付と出産・子育て応援給付金との違い
妊婦のための支援給付と、改正前の「出産・子育て応援給付金」は、いずれも妊婦や子育てする家庭を支援するための制度です。ただし、目的や内容に違いがあるため、以下で比較します。
給付金額が基本的に1回目、2回目それぞれ50,000円ずつ、合計100,000円である点は変わりません。
大きな違いは、流産や死産、人工妊娠中絶をした人も給付の対象となる点です。ただし、申請は必要になるため、詳しくは各自治体にお問い合わせください。
torch clinic上野院がある東京都台東区の場合は、台東区のサイト内に申請フォームを開設しています。
妊婦のための支援給付の申請方法
妊婦のための支援給付の申請方法は、以下のとおりです。
torch clinic上野院がある東京都台東区の場合、申請方法は「ゆりかご・たいとう面接」および出産後の「こんにちは赤ちゃん訪問時」に案内される形式です。
妊娠届出前に流産をした方も対象
妊婦のための支援給付は、妊娠届出前に流産をした方も対象になります。
ただし、申請のためには、医師が胎児心拍を確認した際の診断書や証明書の提出が求められる場合があります。各地方自治体により対応方法が異なるため、詳しくはお問い合わせください。
東京都台東区の場合は、妊婦給付認定用の診断書の書式が用意されています。
- 妊娠判明(胎児心拍の確認)日
- 流産の種類
- 流産した日
- 胎児心拍が確認できた後に流産した胎児の数
これらを記載した証明書が必要です。
証明書以外にも、妊婦給付認定証明書、胎児の数の届出、本人確認書類の写しが必要で、郵送か窓口のみでの対応になります。
申請期限は1回目、2回目ともに原則2年間
妊婦のための支援給付の申請期限は、1回目の給付については、胎児心拍が医療機関で確認された日から2年間です。そして、2回目の給付の申請期限は、妊娠32週を迎えた日から2年間となっています。
申請期限を過ぎると、給付金の支給を受け取れなくなる可能性があるため注意しましょう。
また、地方自治体によっては、1回目の申請を原則として妊娠中に、2回目の申請を赤ちゃんが生まれてからいつまでと期限を指定している場合があります。各地方自治体によって規定が異なるため、居住地の規定を確認してください。
ただ、申請してから給付までには数か月かかるため、早めの申請がおすすめです。
おわりに
参考文献
1)こども家庭庁.子ども・子育て支援金制度について
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomokosodateshienkin
2)厚生労働省.医療保険制度における妊産婦等の支援の現状について
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001267928.pdf
3)厚生労働省.令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/gaikyouR5.pdf