不妊治療と仕事を両立するには、通院回数の多さやスケジュール調整、精神的な負担などさまざまな課題があります。多くの方が両立の難しさに直面し、働き方を変えたり治療を中断したりするケースも少なくありません。
本記事では、両立が難しいと感じる主な理由と負担を軽減する対策についてご紹介します。
これから不妊治療をはじめる方も、すでに両立に悩んでいる方も、治療に取り組むための参考にしてください。
不妊治療と仕事の両立に関する現状
厚生労働省によると、不妊治療の経験がある人のうち「仕事と治療を両立している(していた)」と回答した人は半数を超えています。
一方、両立が難しく雇用形態を変えたり退職したりした人も少なくありません。不妊治療そのものを中断した人もいます。
<仕事と不妊治療の両立状況(不妊治療中または治療経験者)>
参照:令和5年度 厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」
全体の約26%の人が、働き方の変更・退職・治療中断のいずれかを選択していることが分かります。
2022年4月から、それまで自費診療で行われていた不妊治療や不妊検査の一部が保険適用となり、経済的には治療をはじめやすくなりました。しかし、働く人には「両立」という大きな課題が依然として残っているのです。
不妊治療と仕事の両立が難しい理由
不妊治療と仕事の両立が難しいと感じる理由として、主に以下3つが挙げられます。
- 通院回数が多い
- 精神的な負担が大きい
- 仕事の日程調整が難しい
厚生労働省のアンケートでは仕事と治療を両立した経験がある人において、「両立を難しいと感じたことはない」と回答した人は全体のわずか11.3%でした1)。9割近くの人が治療と仕事の両立に難しさを感じているのです。
ここからは、主な3つの理由について解説していきます。
通院回数が多い
厚生労働省の調査では、両立している仕事との両立を難しくする要因として「通院回数が多い」と答えた人は53.5%と最も多く、通院の負担の大きさが伺えます。男女別に見ると、この傾向は女性でより顕著であり、67.1%の女性が「通院回数が多い」点を挙げています1)。
以下の表は、厚生労働省が公表している「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」に記載された、不妊治療にかかる通院日数の目安(月経周期ごと)です2)。
例えば体外受精では、排卵をコントロールしながら卵胞の状態を確認していくため、治療の段階に応じて複数回の通院が発生します。
<体外受精の一般的な流れ>
月経1〜3日目:排卵誘発法を決める(血液検査・超音波検査)
月経3日目〜:卵巣刺激を開始する(注射または内服薬)
月経8〜9日目:卵胞の状態を確認し、排卵日を予測する(血液検査・超音波検査)
排卵約36時間前:排卵を促す薬を投与する
排卵誘発から約36時間後:採卵、体外受精を行う
卵胞の発育や体調によっては、追加で検査や診察を求められる場合もあります。治療過程で何度も通院が必要であり、仕事との両立が難しいと感じてしまう場合があります。
精神的な負担が大きい
治療中は体調変化やスケジュール調整などに対し、常に気を配る必要があります。治療に集中したくても仕事もしなければならず、気が休まらない日も少なくありません。
仕事と不妊治療を両立した経験がある人において、両立が難しい理由として「精神的な負担」を挙げた人は51.4%にのぼります1)。半数の人が体だけでなく心にも負担を感じているのです。
また、治療していることを職場に伝えていない人は47.1%と半数近く存在します1)。「周囲に気を遣わせたくない」「失敗したときに職場で居づらくなる」といった懸念から、あえて言わない人も多い傾向です。
一方で、治療について周囲に隠しながら働くことは、緊張やストレスにつながる可能性があります。
同じ調査では、「仕事がストレスとなり不妊治療に影響が出る」と感じる人も30.3%であり1)、心のコンディションを崩した結果、仕事と治療の両立を断念した人もいます。仕事との両立を支えるためには、制度的な支援だけでなく、心のサポートも大切といえます。
仕事の日程調整が難しい
治療は体調や検査結果に合わせて進めるため、通院日が急に決まったり、予定していた治療日が変更になったりすることもあります。検査や処置の内容によって診察時間が前後することも多く、必ずしもスケジュール通りにいかないのが現状です。
仕事と不妊治療を両立した経験がある人においては、「仕事の日程調整が難しい」と回答した人は35.9%にのぼります。また、両立できず実際に離職してしまった人のアンケート結果では、「仕事の日程調整が難しい」は最も回答者が多く、49.3%を占めていました1)。
- 待ち時間など通院にかかる時間が読めない
- 医師から告げられた通院日と外せない仕事が重なる
上記のようなケースが実際に起こることがあり、医療機関によっては混雑状況により滞在時間が予定以上に長引くこともあります。予定の不確実さや滞在時間の長さは、治療の継続や仕事との両立を悩ませる要因のひとつといえます。
不妊治療と仕事を両立させるための対策
不妊治療と仕事を無理なく続けていくためには、働く環境と治療環境の両方を整えることが大切です。2つの環境を整えることで、治療への不安や負担を少しずつ軽減できます。
具体的には、次のような工夫があります。
- 会社の制度を調べて活用する
- 不妊治療連絡カードを使用する
- 通いやすい医療機関を選ぶ
最近では、厚生労働省の方針により「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくり」が推進され、企業でも支援制度の整備が進んでいます。また、待ち時間への配慮や心のケアも充実した医療機関を選ぶと、心身の負担を減らし治療を続けやすくなるでしょう。
会社の制度を調べて活用する
まずは、ご自身が勤めている会社で利用できる制度を調べてみてください。
フレックスタイムや時差勤務制度があれば働く時間帯の調整が可能です。また、不妊治療を目的とした休暇制度を導入する企業もあります。
企業が取り入れている制度の例として、以下のようなものがあります。
<企業がとり入れている不妊治療に関わる主な制度2)>
会社で導入されている制度を利用することで、治療と仕事の両立がしやすくなる場合があります。設けている制度は企業ごとに異なるため、就業規則を確認または人事・労務担当者に相談してください。
不妊治療連絡カードを使用する
「不妊治療連絡カード」とは、治療をする上で必要な配慮を職場に伝えるための書類です。厚生労働省が作成・推奨しており、不妊治療と仕事を両立するための支援ツールとして活用されています3)。
カードには、主治医が「不妊治療の実施(予定)時期」や「特に配慮が必要な事項」を記入します。自分で詳しく説明しなくても会社に正確な情報を伝えられるため、両立支援制度や不妊治療休暇制度の申請もよりスムーズになるでしょう。
<不妊治療連絡カードの活用方法>
- 検査や治療を受ける
- 主治医がカードに「不妊治療の実施(予定)時期」や「特に配慮が必要な事項」などを記入する
- カードを勤務先に提出し、休暇制度や両立支援制度の利用を申請する
- 会社はカードの内容をもとに、必要な対応を行う
不妊治療連絡カードは、厚生労働省のウェブサイトから入手できます。プライバシーを守りながら、安心して両立を目指すためのサポートツールとして活用してみてください。
通いやすいクリニックを選ぶ
不妊治療と仕事の両立には、会社の制度だけでなく通いやすいクリニックを選ぶことも欠かせません。
通いやすさとは、単に「距離が近い」といった物理的な条件だけはありません。予約のしやすさや待ち時間への配慮など、継続しやすい体制が整っているかどうかも重要です。
仕事との両立を目指す上で、クリニック選びは治療開始前の大切なステップです。通いやすさは、以下の観点で確認しましょう。
<不妊治療のクリニックを選ぶポイントの例>
治療を無理なく続けるには、物理的にも精神的にも安心して通える環境が大切です。仕事との両立に不安を感じている人は、ご紹介したポイントを参考にしてみてください。
不妊治療と仕事の両立を支えるトーチクリニック
ここからは、不妊治療と仕事の両立を支える医療機関の取り組みとして、トーチクリニックを例にご紹介します。
立地や診療体制だけでなく、待ち時間を抑えるシステム、心のサポート体制などにより、働いていても通院を続けられる体制を目指しています。
通いやすさへの配慮
トーチクリニックは、恵比寿院・上野院ともに駅から徒歩1分とアクセスしやすい立地です。平日だけでなく土日にも診療しており、お仕事帰りや休日など、ご予定に合わせて受診いただけます。
また、予約から会計までの間に不要な待ち時間をなくし、在院時間を短縮する取り組みを行っています。診療予約や問診は専用アプリで行うことができます。
診察後は、会計のために待つ必要はありません。後日会計システムを導入しており、滞在いただく時間の短縮を図っています。薬も院内で処方し、薬局へ行かずに済むよう配慮しています。
不妊治療を検討されている方だけでなく、現在の治療方針に迷われている方のご相談にも対応しています。お気軽にウェブまたはアプリからご予約ください。
心のサポート体制
トーチクリニックでは、専門の心理カウンセラーによるカウンセリングも行っています。
ストレスと上手に付き合う方法を一緒に考えたり、仕事との両立について整理したりと、心の負担を軽くするお手伝いをしています。
例えば、次のような気持ちを相談されます。
- 治療がうまくいくか心配
- 何が不安なのか分からないけれど、気持ちが落ち着かない
- 仕事との両立が難しいと感じている
- スケジュールや人間関係に不安を感じている
カウンセリングは対面・オンラインのどちらにも対応しており、自宅や職場からでも受けられます。当院で治療中の方だけでなく、他院に通院中の方や、治療を受けるか迷っている方も利用可能です。
仕事と治療の両立に悩んでいる方は、まずカウンセラーとともに気持ちを整理することからはじめる選択肢もあります。必要なタイミングで適切なサポートを受けられるよう、ご活用ください。
心理カウンセリングについては、以下のページもご覧ください。
関連ページ:心理カウンセリング
おわりに
参考文献
1)厚生労働省. 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査. 厚生労働省ウェブサイト.
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/001168037.pdf
2)厚生労働省. 不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル. 厚生労働省ウェブサイト.
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001373137.pdf
3)厚生労働省. 「不妊治療連絡カード」 厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30b.pdf

