不妊治療・体外受精で使われる座薬や膣座薬について

最終更新日時:
2024-05-24
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

不妊治療・体外受精で使われる座薬や膣座薬

不妊治療・体外受精で使われる座薬や膣座薬の役割

不妊治療・体外受精で使われる座薬の主な役割は妊娠をしやすくすることです。座薬を使用することにより黄体ホルモンと呼ばれる女性ホルモンを補充したり、採卵しやすくしたり、膣や子宮の環境を整えたりすることを目的としています。

座薬・膣座薬の種類

一般的に「座薬」と呼ばれる薬には肛門座薬と膣座薬の2種類があります。トーチクリニックでは、不妊治療や体外受精において目的に合わせて以下の4種類の座薬を処方しています。(2024年5月時点)

妊娠しやすくするために使用する座薬

【膣座薬】

ウトロゲスタン腟用カプセル200mg|黄体ホルモンを補充する薬で、受精卵や胚が着床しやすい環境を整える働きがあります。また、着床後も補充を続けることで妊娠を維持する働きもあります。胚移植時に使用します。

ルテウム腟用坐剤400mg|黄体ホルモンを補充する薬で、受精卵や胚が着床しやすい環境を整える働きがあります。また、着床後も補充を続けることで妊娠を維持する働きもあります。胚移植時に使用します。

【肛門座薬】

ジクロフェナクナトリウム坐薬50mg|体外受精における採卵時までの排卵防止を目的として使用することがあります。排卵誘発剤の使用後等に使用します。採卵時の痛み止めとして使用することもあります。

膣及び子宮の感染症の治療と予防のために使用する座薬

【膣座薬】

フラジール腟錠250mg|抗原虫作用および抗菌作用を示す薬です。着床不全の原因となる、細菌等を原因とする子宮内膜炎等の病気の治療や予防をするために使用します。

座薬の入れ方

不妊治療や体外受精のために使用する座薬は肛門座薬と膣座薬の2種類に分かれるため、座薬の使い方を肛門座薬と膣座薬のそれぞれに分けて解説します。

肛門座薬の場合

肛門座薬は肛門から挿入する座薬です。

まず、座薬を使用する前には、手を綺麗に洗いましょう。その上で座薬を包装から取り出し、座薬の後部(太い方)をティッシュやガーゼなどでつまんで、尖端(細い方)から肛門内にできるだけ深く挿入してください。体勢としては中腰か横向きに寝た姿勢で入れ、尖端(太い方)から4分の3くらい挿入した後に立ち上がると挿入しやすくなります。また、入れた後は排出されないように5秒程度押さえておくとよいでしょう。完全に挿入できたら、薬がうまく吸収されるように数分間そのままの体勢を保つことをお勧めします。

膣座薬の場合

膣座薬は膣から挿入する座薬です。

膣座薬も肛門座薬と同様に、使用する前には手を綺麗に洗いましょう。その上で膣座薬を包装から取り出し、中腰か横向きに寝た姿勢、または両脚を広げた楽な姿勢で、尖った方から膣内に入れましょう。その後、膣座薬を人差し指と中指で挟むか、あるいは人差し指の頭に乗せて膣内の奥深くに入るように押し込みましょう。できるだけ力を抜いて、息を吐きながら行うと入れやすいです。

挿入時・挿入後の注意点

・座薬が冷た過ぎて固く、挿入時に痛いと感じる場合は、少し体温で温めてから入れましょう。逆に薬が柔らか過ぎて入れづらい場合は、冷蔵庫に入れて冷やしてから使いましょう。

・挿入後20~30分間程度は激しい運動を避けて安静にしてください。

よくあるご質問・Q&A

不妊治療で座薬を使うのはなぜですか?

不妊治療では、妊娠しやすくするために黄体ホルモンを体内に投与するケースがあるのですが、効果性と使用者への負担のバランスを考慮したときに座薬が使いやすいためです。

黄体ホルモンの投与方法は注射・座薬・飲み薬の3つの方法があり、注射が最も吸収効率が高い投与方法になります。しかし、注射による投与は筋肉注射であるため痛みが伴う上に、連日筋肉注射をすると注射をした部位が固くなってきてしまい、苦痛に感じやすいというデメリットがあります。また、飲み薬は成分の一部が肝臓で分解・代謝されてしまい吸収効率が比較的悪い投与方法になります。

そのため、吸収効率と使用者の身体的・精神的負担を踏まえて、座薬が使われるケースが少なくありません。

採卵のときに座薬を使うのはなぜですか?

採卵のときに座薬を使うのは、採卵時の痛みを軽減するためです。

腟壁はお産のときに備えてもともと痛みを感じにくい臓器なため、採卵する個数が3-4個であれば鎮痛剤で十分なケースがほとんどです。そういったケースでは麻酔を使わず、座薬タイプの鎮痛剤を使用します。

なお、トーチクリニックでは、発育した卵胞の個数と希望に合わせて、鎮痛剤のみ、局所麻酔、もしくは全身麻酔(静脈麻酔)下で採卵術を行うことができます。

座薬を服薬し忘れたときはどうすればいいですか?

不妊治療・体外受精を目的とした座薬を服薬し忘れたときは、気づいた時点で1回分を挿入してください。ただし、次の服用時間が近い場合は服用し忘れた分は服用せず、次の通常の服用時間に1回分を服用してください。2回分を一度に使用することは避けてください。

おわりに

トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週6日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております

また、すでに不妊治療を受けている方々のお悩みやセカンドオピニオンにも対応しております。セカンドオピニオンを含めたクリニックへのよくあるご質問はこちらをご参考ください。