この記事のポイント
- 東京都の不妊検査等助成事業は、不妊検査だけでなく、タイミング指導や人工授精などの一般不妊治療も対象になります。
- 要件の多くは「検査開始日」を基準に決まります。期間は検査開始日から1年間、申請期限は2年以内。期限切れに注意してください。
- 夫婦ともに、その1年間のうちに検査を受ける必要があります。妻だけが検査を受け、時間をおいてから夫が検査を受けると、対象外になることがありますのでご注意を。
- 検査開始日に妻が40歳未満であることが条件です。事実婚も対象ですが、住民票の続柄によっては申立書が必要になります。
- 体外受精・顕微授精に進むと、その時点で助成の対象期間は終わります。そのため、どこまでの受診を対象とするかは医療機関と確認を。それまでの費用は、期限内であれば申請できます。
はじめに:助成の要件は「事後」では整えられない
東京都の不妊検査等助成事業は、不妊検査や一般不妊治療にかかった費用を、夫婦1組につき1回、上限5万円まで助成する制度です。所得制限はなく、条件を満たせば、上限5万円の範囲で検査と初期の治療にかかる費用の一部が助成されます。
この制度でつまずきやすいのは、申請書類よりも手前の段階です。対象になるかどうかは、「いつ検査を始めたか」「その後の1年間に夫婦がそれぞれ何をしたか」でほぼ決まります。申請の段階で気づいても、さかのぼって条件を満たすことはできません。
不妊検査を受けるかどうかは、お金だけで決めることではありません。ただ、検査を始める時点で要件を知っていれば、夫の検査をいつ受けるか、どの時点で次の治療を考えるか、といった段取りを無理なく組めます。この記事では、検査を始める段階でよく寄せられる疑問を中心に、対象になる場合とならない場合の分かれ目を、時間の流れに沿って整理します。
制度の全体像は、別記事「東京都で不妊治療をしたら助成金は5万円 or 15万円?制度の内容をわかりやすく解説」でも解説しています。
制度の骨格:まずは基本の数字を確認
起点はすべて「検査開始日」
この制度でいう「検査開始日」は、夫婦それぞれが検査を始めた日のうち、早いほうの日です。妻が先に検査を始めた場合は妻の検査日、夫が先なら夫の検査日が起点になります。
つまり、開始日が離れれば離れるほど、対象外となる可能性がありますのでご注意ください。
なお、検査より先にタイミング指導などの一般不妊治療を始めていた場合は、助成対象期間と申請期限はその治療の開始日から数えます。
起点が決まると、ふたつの期間が決まります。
たとえば2026年4月1日に妻が検査を始めた場合、助成対象期間は2027年3月31日まで、申請期限は2028年3月31日までです。
ここで混同しやすいのが、1年と2年の違いです。申請は2年以内にすればよいのですが、検査や治療が対象になるのは最初の1年間だけです。「2年以内なら夫の検査はあとからでも大丈夫」というわけではありません。
ポイント1:検査だけでなく、一般不妊治療も対象になる
制度の名前から検査だけの助成と思われがちですが、対象期間内に受けた一般不妊治療も助成の対象です。
- 不妊検査:精液検査、内分泌(ホルモン)検査、超音波検査、卵管疎通性検査(卵管造影など)、子宮鏡検査、フーナーテストなど
- 一般不妊治療:タイミング指導、排卵誘発剤などの薬物療法、人工授精など
検査で終わらず、そのままタイミング指導や人工授精に進んだ場合、1年間の費用を合算して申請できます。費用の合計が5万円を超えた時点で、1年を待たずに申請することもできます。
ポイント2:年齢の要件は「検査開始日」に妻が40歳未満
年齢の要件は、検査開始日(夫婦のうち早いほうの日)に妻が40歳未満であることです。夫の年齢に制限はありません。
判定は検査開始日の年齢で行うため、たとえば39歳で検査を始め、対象期間の途中で40歳になった場合でも、要件上は対象になります。反対に、40歳になってから検査を始めた場合は対象外です。
40歳前後の方にとっては、検査を始める時期がそのまま助成の可否に関わります。ただし、検査の時期は医学的な必要性や体調を踏まえて決めるものです。助成のためだけに急ぐ必要はありませんが、検査を検討している段階で、この基準も判断材料のひとつにしていただければと思います。
※区市町村によっては、妻が40歳以上の場合の男性の検査費用を独自に助成しているところもあります(例:文京区)。お住まいの区市町村の情報もあわせてご確認ください。
ポイント3:夫婦ふたりとも、1年以内に検査を受ける
もっとも多いつまずきが、この要件です。助成を受けるには、助成対象期間(検査開始日から1年間)のうちに、夫婦ともに対象の検査を受けている必要があります。どちらか一方だけが検査を受けた場合は対象外です。
対象外になりやすいのは、次のような流れです。
妻の検査で大きな問題が見つからず、しばらくは自然な妊娠を目指したい、という判断は珍しくありません。その場合でも、夫の検査(精液検査など)を対象期間のうちに済ませておけば、要件を満たせます。精液検査は比較的短時間で受けられる検査で、男性不妊の有無を確認するうえでも基本となるものです。
なお、夫の検査は妻と同じ医療機関である必要はありません。泌尿器科などで受けた場合も、保険医療機関であれば対象になり、都外の医療機関でも構いません。この場合、受診等証明書はそれぞれの医療機関に作成を依頼します。
ポイント4:体外受精・顕微授精に進むと、そこで対象期間が終わる
検査開始日から1年以内でも、次のどちらかに当たると、その時点で助成対象期間が終わります。
- 妊娠が判明したとき
- 生殖補助医療(体外受精・顕微授精)に移行したとき
体外受精・顕微授精そのものの費用や、そのために行う検査の費用は、この事業の対象外です。ただし、対象期間が終わるまでに受けた検査や一般不妊治療の費用は、申請期限内であれば申請できます。「体外受精に進んだからもう申請できない」と思い込み、申請を見送ってしまうケースもあるため、注意が必要です。
ここで気をつけたいのは、ポイント3との組み合わせです。夫の検査を受けないまま体外受精に進むと、夫婦ともの検査という要件を満たせなくなります。体外受精へ進む前には、夫婦それぞれの検査が対象期間内に済んでいるかを確認しておくとよいでしょう。
体外受精・顕微授精については、2026年4月1日以降に開始した治療から、保険診療の自己負担部分なども対象とする東京都の助成(1回の治療につき上限15万円)が始まっています。詳しくは「【2026年4月】東京都の不妊治療の助成が拡充!」をご覧ください。
ポイント5:事実婚も対象
事実婚の夫婦も対象です。ただし、法律婚と比べて確認される事項が多く、住民票の続柄によっては追加の書類が必要になります。
事実婚で対象になるのは、検査開始日から申請日までの間、次のすべてを満たす場合です。
- 夫婦のいずれかが都内に継続して住民登録している
- ほかに法律上の配偶者がいない
- 事実婚の届出をしている(住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されている)
住民票の続柄が「同居人」「縁故者」になっている場合や、世帯を分けている場合は、申立書を提出することで対象になります。申立書には、事実婚の関係にあること、続柄に未届の記載がない理由(別世帯の場合はその理由)、治療の結果生まれた子を認知する意向を記載します。東京都のホームページに記入例とひな形があります。
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)は法律婚・事実婚を問わず必要な書類ですが、事実婚の場合は、ほかに法律上の配偶者がいないことの確認にも使われます。独身証明書では代わりになりません。どなたの分が必要かは、事前に東京都の担当窓口に確認しておくと確実です。
なお、検査を始めた時点では事実婚で、その後に入籍した場合も、検査開始日に事実婚の要件を満たしていれば対象になります。
申請の段階でつまずきやすい点
要件を満たしていても、申請の段階で手戻りが生じることがあります。東京都のQ&Aで示されている内容をもとに、つまずきやすい点をまとめます。
東京都の案内では、申請の受理から2〜3か月後に承認決定通知書が発送され、その約1か月後に振り込まれるのが目安です。2026年10月1日以降、電子申請をした方への決定通知は、LoGoフォームを通じて電子文書(PDF)で交付されます。振込を確認するまでは、LoGoフォームのアカウントを使える状態にしておきましょう。
時期ごとの確認リスト
ここまでの内容を、時間の流れに沿って整理します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもがすでにいても対象になりますか?
A1. 対象になります。ただし、過去にこの事業の助成を受けたことがある場合は申請できません。また、ほかの自治体で助成を受けていた場合も、対象にならないことがあります。
Q2. 夫が都外の病院で検査を受けました。対象になりますか?
A2. 保険医療機関であれば、都外の医療機関でも対象になります。受診等証明書は、検査を受けた医療機関に作成を依頼してください。
Q3. 途中で転院しました。対象になりますか?
A3. 転院しても対象になります。申請時には、不妊検査を受けた医療機関が作成した受診等証明書を必ず提出してください。
Q4. 1年たつ前に費用が5万円を超えました。その時点で申請してもよいですか?
A4. 申請できます。ただし、文書料や入院時の食事代などは対象から除かれます。なお、申請は夫婦1組につき1回です。
Q5. 領収書は必要ですか?
A5. 領収書の提出は不要です。医療機関が作成する受診等証明書に、領収金額が記載されます。
最後に:検査を始める日に、1年後と2年後を確認しておく
東京都の不妊検査等助成事業は、条件を満たせば所得にかかわらず利用できる制度です。一方で、要件の多くが検査開始日を起点に決まるため、申請のときに初めて条件を確認すると、手の打ちようがないこともあります。
検査を始める日に、1年後(夫婦ともの検査を済ませる期限)と2年後(申請期限)を確認しておく。夫の検査をいつ受けるかを、ふたりで決めておく。この2点は、対象外になるのを防ぐうえで役立ちます。
検査や治療の進め方は、医学的に適したものを医師と相談して決めることがいちばん大切です。そのうえで、使える制度を取りこぼさないよう、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。制度の細かな取り扱いは、東京都の担当窓口でも確認できます。
参考資料
本記事の制度内容は、以下の公的資料を2026年10月12日時点で確認して作成しています。制度の詳細や最新の情報は、公開元で必ずご確認ください。
- 東京都福祉局「不妊検査等助成事業の概要」 https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/funinkensa/gaiyou
- 東京都福祉局「不妊検査等助成事業 Q&A」 https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/202502qa-1-pdf
- 東京都福祉局「助成対象期間(図解)」 https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/zyoseitaisyouhani ※図中の申請期限は旧表記(1年以内)のまま
