黄体ホルモンが少ない黄体機能不全について

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
理事長・統括院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

黄体ホルモンが少ない黄体機能不全は、不妊や不育を招く恐れがあります。原因は黄体期のホルモン産生の異常や、その影響による子宮内膜の発育不全などが考えられています。妊娠しても早期流産となったり、月経周期が乱れやすかったりする場合は、黄体機能不全が疑われます。妊娠を望む場合は、適切な診断を受け治療することが重要です。

黄体ホルモンが少ない(血中プロゲステロン値が低い)、黄体機能不全とは

黄体機能不全とは、エストロゲンとプロゲステロンの分泌不全によって起こる子宮内膜の発育異常のことです。黄体期の短縮や機能性出血が見られ、不妊や不育の原因になるとされています。月経周期に異常が現われ、月経不順として自覚される場合もあります。

黄体機能不全になる原因

黄体機能不全は、黄体期のホルモン産生異常、またはその影響による子宮内膜の分化・発育不全での着床・妊娠維持の障害と捉えられています。

しかし、詳しい原因については、まだ明らかになっていません。主に、黄体形成過程の異常や黄体維持機能の異常、子宮内膜分化の異常が考えられています。

あわせて下記の記事も読んでみてください。

参考:黄体機能不全とは?主な症状や原因について詳しくチェック

黄体機能不全はどういった症状(主訴)があるのか

黄体機能不全では、主に、不妊・不育・月経不順の症状が見られます。

例えば、月経周期が乱れやすい、妊娠しても早期流産となってしまう、などといった症状です。これらの症状に該当する場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

もっと詳しく知りたい方は、下記の記事も読んでみてください。

参考:黄体機能不全とは?主な症状や原因について詳しくチェック

黄体機能不全はどうやって検査するのか

黄体機能不全は、「基礎体温測定」「血液検査」「子宮内膜日付診」をもとに判断します。それぞれの検査について詳しく見ていきましょう。

基礎体温測定

基礎体温は正常な排卵周期の場合、低温相と高温相の二相を示します。低温相と高温相の温度差は0.3℃以上です。

しかし、以下の場合は、黄体機能不全が疑われます。

  • 高温相が10日以内(通常は14日程度)
  • 低温相から高温相の移行に3日以上かかる
  • 低温相と高温相の差が0.3℃以内

血液検査(血中プロゲステロン濃度)

血液検査で血中のプロゲステロン濃度を調べます。検査をする時期は基礎体温が本来高温相となる、排卵後5〜9日目です。検査の結果、プロゲステロン濃度が10ng/mL未満の場合、黄体機能不全の恐れがあります。

子宮内膜日付診

子宮内膜日付診とは、子宮内膜の組織を採取し、採取された組織の状態から推察される日付と基礎体温上排卵日から計算した日付を比較し、評価する方法です。子宮内膜が着床の準備のための適切な状態になっているかがわかります。

検査をする時期は、高温相の中期頃(黄体期中期)です。黄体ホルモンが正常に分泌されていれば、子宮内膜は厚くなります。しかし、子宮内膜の厚さや形態の異常が確認されれば、黄体機能不全が疑われます。

黄体機能不全はどういった治療があるのか

黄体機能不全の治療には、排卵誘発法と黄体ホルモン補充療法1)があります。

排卵誘発法は、排卵がない場合に排卵誘発剤を用いて、排卵を促す治療です。黄体機能不全では、排卵障害や卵胞発育障害を伴うこともあります。

黄体ホルモン補充療法は、黄体からのプロゲステロンの分泌異常により、子宮内膜の分化・発育不全が見られる場合に行なわれる治療です。排卵後の2~3日目から月経が始まるまで、または妊娠8~10週頃までプロゲステロンを薬で補います。

高プロラクチン血症による黄体機能不全が疑われる場合は、高プロラクチン血症の治療が行なわれます。高プロラクチン血症とは、乳腺の発育や母乳の分泌などと関わるホルモンのプロラクチンが、過剰に分泌される病気です。月経不順や不妊の原因となります。

黄体機能不全に関するよくある質問

黄体機能不全についてよくある質問と回答は以下のとおりです。

Q:黄体機能不全は自己改善できますか?

黄体機能不全は、投薬などによる治療以外に改善する方法は現在のところ報告されていません。医療機関を受診し、適切な診断や治療を受けましょう。

黄体機能不全ではホルモンバランスの乱れが影響している可能性もあります。ホルモンバランスの乱れの影響や改善に関しては、下記の記事もあわせて読んでみてください。

参考:女性ホルモンを増やす方法はある?少ない場合・多い場合の作用について

おわりに

トーチクリニックでは、ブライダルチェックや不妊検査を提供しています。恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックや不妊検査にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております

また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。

参考文献

1)折坂誠.小辻文和.“カレントレヴュー 2.生殖 b.不妊治療と黄体機能不全“.日本産科婦人科学会雑誌. AcTA OBsT GYNAEc JpN Vol,52, No.8,pp .1260− 1272,2000
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10706272&contentNo=1