東京都で不妊治療をしたら最大5万円の助成金を受け取れる?対象者や助成を受けられる検査・治療、必要な書類を解説

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
上野院 院長 婦人科 生殖医療科 医師
お二人の道のりが明るく照らされるよう「理解」と「納得」の上で選択いただく過程を大切にしています。エビデンスに基づいた高水準の医療提供により「幸せな家族計画の実現」をお手伝いさせていただきます。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

東京都では、不妊検査や一般不妊治療の費用に対して、上限50,000円の助成が受けられる「不妊検査等助成事業」を実施しています。この記事では助成の対象となる方や検査・治療内容を解説します。東京都で利用できる、その他の助成についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

東京都の不妊検査・不妊治療で上限5万円の助成金を受け取れる制度(不妊検査等助成事業)

東京都では、都内の保険医療機関で行う不妊検査や一般不妊治療にかかった費用の一部を助成する「不妊検査等助成事業」を実施しています1)

この制度を利用すると、夫婦1組につき1回、上限50,000円の助成を受けられます。

不妊検査等助成事業の対象者

助成を受けるには、以下のすべての条件を満たす必要があります。

  • 検査開始日から申請日までの間、夫婦のいずれかが継続して東京都内に住民登録をしていること(事実婚を含む)
  • 検査開始日時点で、妻の年齢が40歳未満であること
  • 助成対象期間内に、夫婦ともに保険医療機関で対象検査を受けていること

事実婚の場合や申請条件の詳細については、東京都のホームページをご確認ください。

不妊検査等助成事業の対象期間と申請期限

助成の対象期間は、検査開始日から1年間です。夫婦で検査開始日が異なる場合は、いずれか早い方の開始日から起算します。

なお、検査開始日から1年以内であっても、妊娠が判明した場合や特定不妊治療(体外受精・顕微授精など)へ移行した場合は、その時点で助成対象期間は終了します。

申請期限については、検査開始日から2年以内となります。

※申請期限が2年となるのは、令和6年4月2日以降に開始した検査です。令和6年4月1日以前に開始した検査の申請期限は1年で、最大でも令和7年6月30日までとなっています。

不妊検査等助成事業の対象となる検査・治療

助成の対象となる検査や治療は以下のとおりです。

不妊検査 精液検査、内分泌検査、
画像検査、精子受精能検査、
染色体・遺伝子検査 等
超音波検査、内分泌検査、
感染症検査、卵管疎通性検査、
子宮鏡検査 等
フーナーテスト
一般不妊治療 待機療法(タイミング指導)、薬物療法、人工授精 等

助成の対象となるのは、不妊の原因を調べる目的で行う検査や一般不妊治療です。

以下のような検査や費用は助成の対象外となるため、ご注意ください。

  • 体外受精・顕微授精(生殖補助医療)や、第三者を介した検査・治療
  • 入院時の食事代や差額ベッド代、文書料など、治療に直接関係しない費用

なお、体外受精及び顕微授精を行う際に、保険適用された治療と併用して自費で実施される 「先進医療」に関しては、別の助成金制度である「東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業」が設けられています。東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業については、後述します。

不妊検査等助成事業の申請に必要となる書類

助成金の申請には、以下の3点の書類が必要です。

必要書類 主な準備方法
1. 不妊検査等助成事業受診等証明書 医療機関が記入
2. 住民票の写し 居住している市区町村の役所にて交付
3. 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 本籍地のある市区町村の役所にて交付

現在は原則として電子申請となっています。必要書類の詳細や提出方法については、東京都のホームページをご確認ください。

不妊検査等助成事業の助成金の振込までの流れ

申請から助成金の受け取りまでは、以下の流れで進みます。

申請から振り込みまでの流れ
申請から振り込みまでの流れ

申請書類の審査のうえ、不備等がなければ申請受理日から約2〜3か月後に東京都から「承認決定通知書」が発送されます。

その後、約1か月後に、申請者本人名義の口座へ助成金が振り込まれます。

その他の東京都の不妊治療・妊娠に関連する助成について

東京都では不妊検査等助成事業以外にも、不妊治療や妊娠を支援するための制度があります。代表的なものは以下のとおりです。

  • 特定不妊治療費(先進医療)助成事業
  • 卵子凍結に係る費用の助成
  • 凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成

ここでは各助成制度の大まかな概要について紹介します。

特定不妊治療費(先進医療)助成事業

東京都の「特定不妊治療費(先進医療)助成事業」は、体外受精や顕微授精を行う際に、保険診療の治療と併せて自費で実施した先進医療の費用の一部を助成する制度です2)

保険診療分や全額自費で行った治療、一般不妊治療(人工授精など)は対象外となります。また、それぞれの治療・技術の登録医療機関(厚生労働省から実施医療機関として指定を受けているもの)で実施した先進医療のみが助成対象です。登録医療機関以外でこれらの治療を実施する場合、保険診療とは通常併用できず、助成対象となりませんのでご注意ください。

特定不妊治療費(先進医療)助成事業の対象となる方や主な内容は、次のとおりです。

項目 内容
対象者 東京都内に住民登録がある夫婦(法律婚・事実婚含む)で、43歳未満の方
対象となる治療 保険診療の体外受精・顕微授精と同時に実施した先進医療(例:SEET法、タイムラプス培養など)
助成額 先進医療にかかった費用の7割(上限150,000円/1回)
助成回数 妻の年齢39歳以下:6回まで/40〜42歳:3回まで(1子につき)
申請期限 治療終了年度の3月31日まで(原則電子申請)

必要書類や申請方法などの詳細については、東京都のホームページをご確認ください。

卵子凍結に係る費用の助成

東京都では、加齢等による妊娠機能の低下を懸念する場合に行う卵子凍結に係る費用を、助成する制度があります3)

ただし、次のいずれかに該当する場合は、助成の対象外となるためご注意ください。

対象となる方や助成の内容を、次のとおりです。

項目 内容
対象者 東京都に住民登録のある18〜39歳の女性(採卵を実施した日の年齢)
対象となる医療行為 採卵準備のための投薬・採卵・卵子凍結
助成額 卵子凍結を実施した年度:上限200,000円
翌年度以降、保管状況の調査に回答した際:1年ごとに20,000円(令和10年度まで実施)
申請方法 対象のオンライン説明会へ参加後、調査事業への協力申請を行う

助成事業に関する詳細については、東京都のホームページをご確認ください。

凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成

不妊治療を目的とせず、将来の妊娠に備えて卵子を凍結していた方が、後に不妊とわかり、凍結保存していた卵子を用いて生殖補助医療を受けた場合に適用される助成制度です4)

例えば、30歳のときに将来に備えて卵子を凍結した方が、35歳になって不妊が判明した際に、当時の卵子を使って体外受精を受けた場合などが対象となります。

助成制度の内容は次のとおりです。

項目 内容
対象者 生殖補助医療の開始日時点で、妻の年齢が43歳未満
1回の生殖補助医療の開始日から申請日までの間に夫婦(法律婚または事実婚)関係が継続していること
対象となる医療行為 卵子融解・受精・胚培養・胚凍結・胚移植・妊娠確認
助成額 卵子を融解し受精を行った場合:上限250,000円/回
「以前に凍結卵子を融解し作成した凍結胚」を融解して胚移植した場合:上限100,000円/回
助成回数 妻の年齢39歳以下:6回まで/40〜42歳:3回まで(1子につき)
申請期限 治療終了日の属する年度末(3月31日)まで
※1〜3月に終了した場合は翌年度6月30日まで
申請方法 原則電子申請(マイナンバーカードでの認証が必要)

助成の対象となる医療機関や、さらに詳細な条件については東京都のホームページをご確認ください。

市区町村で独自の助成がある場合も

不妊治療・妊娠に関連する助成の制度は、都道府県に限らず市区町村でも提供されているケースがあります。

例として、トーチクリニックの恵比寿院がある東京都渋谷区では、次のような独自の不妊治療助成制度を設けています。

  • 渋谷区不妊治療(一般不妊治療)医療費助成
  • 渋谷区不妊治療(生殖補助医療)医療費助成

また、トーチクリニックの上野院がある東京都台東区では、東京都の特定不妊治療費(先進医療)助成事業の対象となる方に向けて、さらに費用の一部を助成する制度を設けています。

それぞれ解説します。

渋谷区不妊治療(一般不妊治療)医療費助成

渋谷区は40〜43歳の方を対象とした、一般不妊治療にかかる保険適用後の自己負担額を上限50,000円まで助成する制度があります5)

助成の対象となるのは、保険診療で行った次の検査や治療です。

  • 不妊の検査
  • タイミング法
  • 人工授精 など

助成を受けるには、申請書や医療機関の証明書などの提出が必要です。助成制度について詳しくは渋谷区のホームページをご確認ください。

渋谷区不妊治療(生殖補助医療)医療費助成

渋谷区では、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療にかかる費用を助成する制度も設けています。

助成額は1回の治療につき上限100,000円で、妻の年齢が39歳以下の場合は1子につき最大6回まで、40〜43歳未満の場合は最大3回まで申請できます。

助成の対象となる治療は、以下のとおりです6)

  1. 保険診療の対象となる生殖補助医療(体外受精・顕微授精)
  2. 1の生殖補助医療と併用して行なった先進医療(タイムラプス、内膜スクラッチ法など)
  3. 1の生殖補助医療の一環として保険診療で行なった男性不妊治療(精子採取の手術)

助成制度の詳細については、渋谷区のホームページをご確認ください。

台東区の不妊治療に関する助成

台東区では、東京都の特定不妊治療費(先進医療)助成事業の対象となる方に向けて、区独自でさらに費用の一部を助成する制度を設けています。

助成額は、先進医療にかかる自己負担額の7割から150,000円を除いた額と上限50,000円を比較し、いずれか低い額です7)

例えば、先進医療にかかる自己負担額が250,000円と300,000円であった場合は、次のような計算となります。

自己負担額 250,000円 300,000円
自己負担額×7割−150,000円 25,000円 60,000円
台東区の上限額 50,000円 50,000円
台東区から助成される金額 25,000円 50,000円

対象となる先進医療や提出書類など、詳細については台東区の公式ホームページをご確認ください。

東京都の不妊治療の助成金に関するよくある質問

東京都の不妊治療に関する助成金制度について、よく寄せられる質問をまとめました。

Q:不妊検査等助成事業には所得制限がある?

東京都の不妊検査等助成事業には、所得制限や年収の上限はありません8)。世帯主や配偶者の所得にかかわらず、対象要件を満たしていれば助成を受けられます。

また、申請時に所得証明書の提出は不要です。必要書類は、医師が発行する「不妊検査等助成事業受診等証明書」や、住民票などの本人確認に関する書類となります。

Q:助成金を受け取っても不妊治療の費用は医療費控除の対象になる?

不妊治療にかかった費用は、一般的な医療費控除の対象となります。

ただし、東京都などから支給された助成金は「補てんされた金額」として扱われるため、その助成金の対象となった医療費から差し引かれます9)。差し引いた後の金額が医療費控除の対象となります。

医療費控除の詳しい手続きや計算方法については、お住まいの地域の税務署へお問い合わせください。

おわりに

トーチクリニックには生殖医療専門医が在籍し、一般不妊治療(タイミング療法、人工授精)に加えて、高度生殖医療(体外受精、顕微授精など)も提供しています。

恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

不妊治療で新たなステップを考えている方は、お気軽にご相談ください。

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参考文献

1)東京都福祉局. 東京都不妊検査等助成事業の概要. 東京都ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/funinkensa/gaiyou

2)東京都福祉局. 東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業の概要. 東京都ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/josei/funin-senshiniryou/gaiyou

3)東京都福祉局. 東京都卵子凍結に係る費用の助成事業の概要. 東京都ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/touketsu/gaiyou

4)東京都福祉局. 東京都凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成費用の助成事業の概要. 東京都ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/shiyou/gaiyou

5)渋谷区. 不妊治療(一般不妊治療)医療費助成. 渋谷区ウェブサイト
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kodomo/ninshin/funin-fuiku/ippanhunintiryou.html

6)渋谷区. 渋谷区不妊治療(生殖補助医療)医療費助成. 渋谷区ウェブサイト
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kodomo/ninshin/funin-fuiku/seisyokuhojyo.html

7)台東区. 特定不妊治療(先進医療)の費用の一部を助成します. 台東区ウェブサイト
https://www.city.taito.lg.jp/kosodatekyouiku/kosodate/mokutei/kenkou_iryou/ninshin/teate_josei/senshiniryou.html

8)東京都福祉局. 不妊検査等助成事業Q&A. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/202502qa-1-pdf

9)国税庁. No1120 医療費を支払ったとき(医療費控除). 国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm