生理不順はなぜ起こるの?原因とホルモンの関係について

最終更新日時:
2024-05-16
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

生理不順とは

「生理不順」(月経周期異常)とは、生理が規則正しくこない状態のことです。生理周期は一般的に25〜38日間です。また、普段より6日以内で早く来たり遅く来たりする周期のズレであれば正常範囲とされています。

しかしこれに当てはまらず、次の生理が24日以内に来たり39日以上こない状態が続いたりすると、生理不順の可能性があります。周期の乱れが続くようであれば早めの受診を検討しましょう。

生理周期とホルモンについて

生理が始まった日から数えて、次の生理が始まる前日までを「生理周期」といいます。

生理には複数のホルモンが関係しており、女性ホルモンと呼ばれるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)には、子宮内膜を厚くして妊娠に適した環境を整える作用があります。

妊娠が成立せず、エストロゲンとプロゲステロンの産生が減少すると、子宮内膜ははがれ落ち出血します。これが生理です。つまり、生理周期は女性ホルモンの作用によってコントロールされています。

生理不順の原因は?

生理には様々なホルモンが複雑に作用するため、ホルモンバランスが崩れることで簡単に生理不順が起こります。生理がこない原因と理由について詳しく説明します。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

おもな症状:生理不順(頻発月経・希発月経、不正出血)、不妊、多毛、にきび、肥満、糖尿病

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣内で多数の小さな卵胞が育つことによって、生理不順や不妊となる病気です。PCOSの方はテストステロンと呼ばれる男性ホルモンの分泌が増えており、多毛やニキビなどの症状が出る方もいます。生殖が可能な年齢の女性の5〜8%に存在し、排卵障害を訴える方の多くを占めています。

高PRL血症

おもな症状:無月経、不妊、乳汁漏出、頭痛、視野障害

高PRL血症は、脳の下垂体前葉からプロラクチン(PRL)というホルモンが過剰に分泌されている状態です。乳汁の漏出といった症状が見られることもあります。また、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)と呼ばれるホルモンの分泌が抑制されることにより、無月経や不妊になります。

早発閉経(早期閉経)

おもな症状:生理不順、不妊

一般的に女性は45〜55歳で閉経を迎えますが、40歳未満の女性が閉経することを早発閉経(早期閉経)と言います。原因は多岐にわたりますがそのひとつとして、早発卵巣不全(POF/POI)が挙げられます。早発卵巣不全によって排卵が起こりにくくなるため、不妊の原因となります。また、閉経によりエストロゲンの分泌量が減るため骨粗鬆症や骨折のリスクも高まります。

過度なダイエット

おもな症状:体重減少、不妊

急激に体重が減少すると、生理にかける栄養が不足し生理がこなくなることがあります。特にもともと痩せている女性は、体重減少がわずかでも生理に影響が出る可能性があるので気を付けましょう。また、長期間無理なダイエットを行うことで、エストロゲンとプロゲステロンが十分に分泌されず排卵が起こりにくくなり、不妊症となる恐れもあります。

過度なストレス、運動

おもな症状:体重減少、不妊

過度なストレスや疲労によって女性ホルモンのバランスが乱れ、生理が止まることもあります。脳がストレスを感じると、ストレスホルモンと呼ばれる副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の分泌が増えます。その結果、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)と呼ばれるホルモンの分泌が抑制され、最終的にエストロゲンとプロゲステロンが十分に分泌されなくなり、生理不順へとつながります。

妊娠

妊娠が成立すると、生理はこなくなります。妊娠の可能性が考えられる場合は、妊娠検査薬を使用して、妊娠しているかどうか確認しましょう。妊娠検査薬での判定は妊娠4週以降(生理予定日の1週間後)から可能です。陽性となった場合はできるだけ早く産婦人科を受診しましょう。

生理が安定する17〜18歳頃まで(数年以内)

おもな症状:生理不順(頻発月経・希発月経、不正出血)

初経から数年以内は卵巣が未熟で、排卵を伴わない生理であることが多いため、生理周期が安定しません。初経から5〜6年以上経過すると生理周期は比較的安定し、毎周期排卵が起こるようになります。何年も生理が安定しない場合は、産婦人科を受診しましょう。

生理のメカニズム

生理周期は大きく以下の3つに分かれます。

卵胞期

1つの卵胞の中で1つの卵子が成長し、成熟卵胞を形成します。卵胞からエストロゲンが分泌されることで子宮内膜が増殖・肥厚し、受精卵を受け入れる準備をします。生理初日が卵胞期の1日目となります。

排卵期

黄体形成ホルモンの分泌が急激に増加することで、卵子が卵胞から飛び出します(排卵)。

黄体期

卵子が飛び出した後の卵胞は黄体となり、プロゲステロンを分泌します。プロゲステロンにより、子宮内膜は着床に適した環境へと変化します。着床しなかった場合、エストロゲンとプロゲステロンは分泌されなくなり子宮内膜がはがれ落ちます。この時の出血が、次の生理周期の始まりです。

まとめ

生理不順とは、生理が規則正しく来ない状態のことを指します。生理不順の原因は、ダイエットやストレスなど誰もが経験したことがあることから、PCOSや高PRL血症など自分では気づきにくいものまで様々です。生理不順が長引いたり、他にも気になる症状があるときは、妊娠をふくめ早めに受診したほうがよい可能性があります。無理をせず、クリニックに相談しましょう。

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おわりに

トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週6日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

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