男性の不妊検査は、産婦人科や不妊治療クリニックまたは泌尿器科で受けられます。男性側の代表的な検査である精液検査は、3,000円程度が費用の相場です。不妊の原因の約半数は「男性側」または「男女両方」にあるとされており、近年では男性側も不妊検査を受けることが身近になっています。この記事では、男性の不妊検査の内容や費用、タイミングなどを詳しく解説します。
男性が不妊検査を受けるタイミング
日本産科婦人科学会では、「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合」を「不妊症」と定義しています1)。
1年以上妊活を続けてもパートナーが妊娠しない場合は、男性・女性ともに不妊検査を検討するタイミングとなります。WHO(世界保健機関)の調査では、不妊の原因の約48%が「男性」または「男女両方」にあるとされています。つまり、不妊の原因の約半数は男性にも関係しているのです。
不妊検査は妊娠しづらい要因だけでなく、妊活や不妊治療にもつながる情報が得られる可能性があります。将来妊娠を希望している場合は、男性側の不妊検査も検討しましょう。
男性の生殖能力も年齢が影響する
男性の生殖能力も加齢の影響を受けます。
男性の生殖能力は、34歳を過ぎた頃から精子の数に変化がみられ、40歳を超えると生きている精子の割合が低下すると報告されています。さらに、43歳からは精子の運動性も下がり、45歳以降は精液の量まで減少するという結果もでているのです2)。
また、日本では4.4組に1組の夫婦が、不妊の検査や治療を受けており、その割合は年々増加しています3)。
妊娠や出産、そして子育てはこれからの人生において、かけがえのないライフイベントです。男性側も年齢が妊娠へ影響することを理解し、必要に応じて医療機関の受診を検討することが望ましいと言えます。
男性不妊の検査はどこでできる?
男性の不妊検査は、主に以下の診療科を掲げている医療機関で受けられます。
- 産婦人科や不妊治療クリニック
- 泌尿器科
妊娠を希望する場合、産婦人科や不妊治療クリニックを選択すると、妊活の相談や検査後に不妊治療が必要となった場合の相談も可能です。
一方で泌尿器科では、不妊原因で手術が必要となった場合などに対応できるケースがあります。
トーチクリニックでもブライダルチェックや不妊検査が可能です。当院のブライダルチェックや不妊検査について、以下の記事にて詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
関連記事:男性ブライダルチェック
男性不妊の検査にかかる費用
男性不妊の検査にかかる費用は、保険診療と自由診療により違いがあります。自由診療は各施設ごとに料金が設定され、全額自己負担です。保険診療になるかは不妊症が疑われる状態や、不妊治療の予定や状況によって変わってきます。
例えば、精液検査なら保険診療だと数百円程度、自由診療は3,000円前後が相場となっています。
トーチクリニックの精液検査は3,000円(自費・税込)です(再診料や診断料などは含んでおりません)。ご希望の方には精液検査の結果を当日お伝えしております。
不妊検査における助成制度
男性が不妊検査を受けるなら、お住まいの自治体の助成制度を確認しましょう。
東京都では、不妊治療や一般不妊治療にかかった費用の一部を負担してくれる「不妊検査等助成事業」があります。助成回数は夫婦1組につき1回限り、最大5万円までです。
東京都の不妊治療等助成事業の内容は以下のとおりです。
詳細については、東京都福祉局のWebサイトをご確認ください。
男性の不妊検査で実施される内容
男性の不妊検査で一般的に実施される検査の例として以下があげられます。
- 問診・診察
- 精液検査
- ホルモン検査(血液検査)
- 染色体・遺伝子検査(血液検査)
- 超音波(エコー)検査
複数の検査を受けることで正確に不妊の要因を把握できるため、適切な妊活や不妊治療につながります。それぞれの検査について解説します。
問診・診察
男性不妊の検査でも、問診や診察が行われます。
問診や診察では性生活に関わるデリケートな質問もあるため、抵抗感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、不妊の原因や背景を正確に把握し、適切な治療方針を立てるために欠かせない検査です。
精液検査
精液検査では精液量や精子濃度、形態、運動の質、運動率などを調べます。
トーチクリニックでは、以下のような流れで精液検査を実施しています。
- 禁欲期間を2〜3日確保する
- ご自宅などで精液を全量採取し、採精容器に入れる
- 採精容器を当院に提出する
男性の精液所見は変動があるため、検査結果が悪くても再検査で問題ないと判断されるケースも少なくありません。当院では精液検査の結果が悪かった場合には、3か月後の再検査を推奨しています。
精液検査などの検査や不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。
ホルモン検査(血液検査)
ホルモン検査は精液の異常を調べるために、男性ホルモン(テストステロン)や性腺刺激ホルモン(FSH、LH)、プロラクチンなどの値を検査します。
以下はホルモン検査の項目と基準値の例です4)。
テストステロンの低下は、勃起障害や射精障害の原因のひとつとされています。
テストステロン、FSH、LHが低値なら低ゴナドトロピン性性腺機能低下症が疑われます。低ゴナドトロピン性性腺機能低下症とは、ホルモン不足が原因で精巣の働きが悪くなり、性欲低下などを引き起こすのが特徴です。
FSHとLHが高値ならば、精巣に高度な障害が示唆されます。特に、FSHは閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の鑑別に重要な指標です。
プロラクチンが高値だと、高プロラクチン血症といわれ、精子数の減少や性欲低下といった症状が表れます。
染色体・遺伝子検査(血液検査)
染色体検査は、無精子症や高度の乏精子症など男性不妊の根本原因を明らかにするために行われています。遺伝子検査では、精子をつくるのに重要な遺伝子が存在するY染色体上のAZF領域に、欠けた部位がないか調べています。
AZF領域はAZFa・AZFb・AZFcの3つに分けられており、それぞれの欠けた部位によって、精巣内に精子が存在する可能性が異なります。
無精子症の人が不妊治療を行う場合、精巣内精子採取術(TESE)が適応となります。しかし、AZFaとAZFbが欠けていれば、精巣内に精子がないため精子採取は困難です。
また、AZFcが欠けていれば、精子採取は不可能ではありませんが、男児が生まれた場合に無精子症や乏精子症が遺伝する可能性があります。
染色体・遺伝子検査は男性不妊の根本原因や不妊治療の方針、子どもへの遺伝などを確認するための重要な検査になっています。
超音波(エコー)検査
超音波検査は検査用のゼリーをつけて、機械を当てるだけのため痛みはほとんどありません。精巣周囲の血管に異常はないか、精巣の大きさ、腫瘍の有無などを確認します。
精索静脈瘤の可能性があれば、立位時に精巣の血管が拡張していないかも観察し、診断に役立てます。
男性の不妊検査に関するよくある質問
男性の不妊検査に関するよくある質問にお答えします。
Q:男性不妊の原因は?
男性不妊の原因は大きく分けて4つあります。
男性不妊の原因はひとつだけでなく、いくつかの要因が関わっていることもあります。不妊症が疑われる場合は、専門の医療機関での検査を検討しましょう。
Q:男性不妊の治療にはどのようなものがある?
男性不妊の原因を調査した研究では、82.4%が造精機能障害だったと報告されています5)。
造精機能障害は原因不明のものが大半であり、確立された効果的な治療法がありません。
原因不明の造精機能障害の人が不妊治療へ移行する際には、体外受精(c-IVF)や顕微授精(ICSI)といった高度な生殖補助医療(ART)が有効な選択肢となります。
ただし、造精機能障害の中でも、精索静脈瘤は手術が可能です。精子の通過障害がある場合にも、手術が適応となります。
Q:精液検査は自宅でもできる?
精液検査は簡易検査キットがあれば自宅でもできます。ネット通販でも販売されており、手軽かつ迅速に精液検査を受けられます。
ただし、簡易検査キットは、医療機関で行われている精液検査の一部しか調べることができません。精子濃度または運動性が主な検査対象です。
一方、医療機関では精子濃度や運動性に加えて、精液量、正常形態率など、より専門的で精度の高い項目を調べられます。
1回の検査で多くの検査項目を調べたい場合や、検査結果に対して適切なアドバイスを得たい場合は、医療機関での精液検査を検討しましょう。
トーチクリニックでは専門的な精液検査を3,000円(自費・税込)で実施しています。当院の精液検査については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:精液検査
Q:精子の状態を良くする方法は?
精子の状態を短期間で劇的に改善することは難しいですが、日常生活から整えることが重要です。精子に良い生活は以下のとおりです。
なお、精子が形成されるには80日程度かかるため、長期的に取り組みましょう。
おわりに
トーチクリニックには生殖医療専門医が在籍し、一般不妊治療や高度生殖医療を提供しています。精液検査も実施しており、検査結果についても専門的な立場から適切な情報提供をしてサポートします。
恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土曜日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
精液検査などの検査や不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
1)日本産科婦人科学会. 不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/
2)Kaltsas A, Moustakli E, Zikopoulos A, et al. Impact of advanced paternal age on fertility and risks of genetic disorders in offspring. Genes (Basel). 2023;14(2):486.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9957550/
3)国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査.Ⅱ部夫婦調査の結果
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_Report04.pdf
4)日本産婦人科医会.(3)男性不妊症の検査・診断. 日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%883%EF%BC%89%E7%94%B7%E6%80%A7%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E7%97%87%E3%81%AE%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%83%BB%E8%A8%BA%E6%96%AD/
5)日本泌尿器科学会. 子ども・子育て支援推進調査研究事業 我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究 平成27年度 総括・分担研究報告書 ダイジェスト版. 厚生労働省
https://www.urol.or.jp/lib/files/info/ministries/20170105_research_report.pdf