妊娠初期はいろいろと不安がつきもの。そろそろ心拍が確認できると思って受診したけれど、確認できなかったときは心配になりますよね。本記事では妊娠6〜7週目で心拍が確認できない確率や原因、年齢別の流産率、流産の原因などを説明します。
妊娠6〜7週で胎児の心拍が確認できない確率
胎児の心拍は、妊娠初期の場合は経腟超音波法で確認します。正常妊娠の場合、心拍は早ければ妊娠5週目から確認できはじめ、妊娠6〜7週になるとほとんどの胎児で心拍が確認できるようになります。
具体的に6〜7週で心拍が確認できない確率を示している報告は多くありませんが、妊娠6週目で約80%、妊娠7週目にはほぼ100%が確認できたという報告があります1)。したがってこの報告からは、6週で胎児の心拍が確認できない確率は20%程度、7週目は正常妊娠では確認できない可能性はあまりないと言えます。
一方で、妊娠週数のずれや誤差によって心拍が確認できない可能性なども考慮すると、すぐに異常とは判断できない場合もあり、慎重に見極める必要があります。
妊娠6〜7週目で心拍が確認できないと不安になりますが、焦らず次回の検診を待ちましょう。
妊娠週数と胎児の心拍数の変化
胎児の心拍数は妊娠の週数によって変化することをご存じでしょうか。心拍は妊娠5週目に90〜100bpm※で始まり、9週目にかけて170〜180bpmまで増加し、ピークを迎えます。そしてそれ以降減っていき、16週目には150bpmほどの心拍数になります2)。
成人の安静時の心拍数は60〜100bpmくらいなので、胎児の心臓はそれよりも速く動いていることがわかります。これは胎児の心臓がまだ小さく、一回の血液の拍出量が十分でないため、体全体に血液を循環させるために速く動いているとされています。
妊娠5週目付近では徐脈傾向にありますが、これは正常所見であるので心配しないようにしましょう。
※bpm:1分間あたりの心拍数のこと。Beats Per Minuteの略。
妊娠6〜7週で胎児の心拍が確認できない場合に考えられる原因(兆候)
妊娠6〜7週目で心拍が確認できない原因は、主に2つ考えられます。1つは胎児に何かしらの異常があり、稽留流産の可能性があることで、もう1つは排卵日のずれなどで検査をおこなう時期が早かった場合です。順に詳しく説明していきます。
稽留流産の可能性
稽留流産とは、胎児が子宮内で亡くなり、排出されず子宮内に留まっている状態です。超音波検査で、胎児が子宮内にいても心拍が見られない場合に診断されます。稽留流産では出血や腹痛などの自覚症状は見られないことが多く、健診でいきなり発覚する場合もあるでしょう。
胎嚢(たいのう:妊娠初期に子宮内にみられる袋状の構造)と卵黄嚢(らんおうのう:妊娠初期に胎児に栄養や血液を与える部分)が確認されると、胎児は5週相当と判断されます。ここでいう週数相当とは、最終生理日から換算したものではなく、胎児が今どれくらいの週数の状態なのかを超音波での所見から推測したものになります。2週間後に受診するころには7週相当になっていると考えられますが、その際に再検査しても心拍が確認されない場合は、稽留流産と診断される場合が多いです。
稽留流産と診断されたら、子宮内の組織が自然に排出されるのを待つか、手術して早めに出すかのどちらかを選びます。自然排出の場合は早ければ数日で排出されますが、個人差も大きいです。中には数週間経っても排出されない場合もあるため、次の妊娠を早めに考えている場合などは手術が選択されます。
検査をおこなう時期が早い
妊娠6〜7週に心拍が確認できない理由として次に考えられるのは、受診のタイミングが早く、超音波検査する時期が早かった場合です。
妊娠週数の数え方は、最後の生理の開始日を妊娠0週0日目として数えます。本来、妊娠の成立は受精卵が子宮内膜に着床したタイミングになりますが、その日を正確に特定するのは難しいため、最終生理日を起点として考えます。
生理周期が28日の方は、生理予定日の2週間後が妊娠6週目となります。しかし全ての人の生理周期がいつも28日とは限りません。生理周期が伸びたり排卵が遅れたりすると、自分で思っている妊娠週数と実際の週数が違う可能性があります。
そのため妊娠6週であると思って検査しても、実際はまだ5週目で心拍が見えない、などといったことがあるのです。
胎児の心拍が確認できた後の流産率
胎児の心拍が確認された後の流産率は、妊娠週数によって違いがあります。
経腹超音波法では、正常妊娠であれば妊娠8週目くらいに胎児の心拍が確認できます。経腹超音波法で心拍が確認できた場合は、95〜99%の確率で予後が良いといえるでしょう。しかし経腟超音波法では早ければ妊娠5週目から心拍が確認できるものの、心拍確認後の流産率は、16〜36%と高い傾向となっています2)。
また、妊娠6〜10週目までの流産の確率を調べた研究によると各週数での流産率は、妊娠6週で9.4%、7週で4.2%、8週で1.5%、9週で0.5%、10週で0.7%でした3)。このことから、流産のリスクは妊娠の週数が進むにつれて減っていくことがわかります。
また検診では胎児の心拍数が正常であるかについても確認されます。異常な心拍の中で最も多いのは徐脈です。徐脈が確認された場合、流産率が高くなることが報告されています2)。
しかし先述したとおり、妊娠5週目くらいではもともと徐脈傾向にあるため、この頃はあまり心配しすぎないようにしましょう。
流産の原因
流産とは、妊娠22週よりも前に赤ちゃんが亡くなってしまうことをいいます。全妊娠の8〜15%ほど4)でおこり、そのほとんどは妊娠12週未満の妊娠初期にみられます。
妊娠初期の流産の原因で最も多いのは、赤ちゃん側の異常です。染色体異常がほとんどであり、これは受精した段階で決まった運命のため、防ぎようがありません。お母さんやお父さんのせいではないので、自分たちを責めすぎないようにしましょう。
ただし、赤ちゃんの染色体異常とお母さんの年齢は関係します。妊娠時の年齢が高齢になるにつれ染色体異常の発生率は高くなります。
お母さん側に流産の原因があるケースでは、お母さんが何かしらの疾患を抱えている場合が多いです。例えば子宮形態異常などの子宮疾患、抗リン脂質抗体症候群、糖尿病や感染症などがあると、流産のリスクが高まります。
年齢別(20代・30代・40代)の流産率
流産率を年代別にみてみましょう。年齢別に流産率を調べた研究によると、20〜30代前半(34歳まで)の流産率は10%ほどです。しかし、35〜39歳では16%と上昇しはじめ、40〜44歳では32%、45歳以上の流産率は53%まで達しています5)。
この結果からもわかるように、妊娠時の年齢が高齢になるにつれ、顕著に流産率が上昇します。また35歳以上の出産は高齢出産とも呼ばれ、妊娠高血圧や妊娠糖尿病など、お母さんのリスクも上昇するため注意が必要です6)。
妊娠初期に気をつけたい生活習慣
妊娠初期は、生ものを避けるなど何かと気を使いますよね。毎日どのような食生活を送ったらいいか気になる方も多いでしょう。
また、妊娠初期はホルモンのバランスが急激に変わることから、イライラや落ち込みを繰り返したりと精神が不安定になりがちです。ここでは妊娠初期におすすめの食生活やストレス管理について説明します。
食生活
妊娠初期における食生活は、規則正しい食事、栄養バランスのとれた食事をすることが基本です。妊娠中は赤ちゃんに血液を送るために鉄の必要量が増加します。そのため貧血になりやすく、妊婦健診で指摘される方も多くいます。小松菜や赤身のお肉など、鉄分の多い食事を心がけましょう。
また、ビタミンB群のひとつである葉酸は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げることが報告されています。葉酸はほうれん草や枝豆に多く含まれ、妊娠中の必要量が増える栄養素です。妊娠してからだけではなく、妊娠を考え始める頃から葉酸の多い食べ物を食事に取り入れたり、サプリメントで補充したりするのがおすすめです7)。
また、妊娠中は生ものや火が完全に通っていない食材は避けるようにしましょう。
そのほか妊娠初期の食生活について、下記の記事でも紹介しているのでご覧ください。
参考記事:妊娠初期に気をつけることは?日常生活・食べ物・仕事など解説!
ストレス管理
妊娠初期はホルモンバランスの変化や、出産・育児の不安などからストレスを感じることが多いです。過度なストレスは妊娠の経過に悪影響をおよぼす可能性があるため、ストレス管理をしっかりとすることが重要です。
まずはストレスを感じていることに気づき、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。たとえば体を動かす、友人や家族に気持ちを吐き出す、映画や読書で気持ちを紛らわすなどがおすすめです。困ったときは自治体などの専門の窓口に相談しましょう。
妊娠初期に関するよくある質問
妊娠初期によくある質問について回答します。
Q:妊娠6週で胎芽そのものが見えない確率や原因は?
妊娠6週で心拍が確認できないだけでなく、胎芽※そのものが見えないというケースもあります。6週目で胎芽が確認できない確率など示された報告はあまりありませんが、原因として週数の計算や認識がずれている可能性があります。
状況によってその後の対応は変わってくるため、まずは医師の指示どおり受診を続けるようにしましょう。
※胎芽:妊娠初期に形成される、胎児のもととなる構造のこと。
Q:超音波検査をおこなうと何がわかるの?
超音波検査では、赤ちゃんが異常なく成長しているか、正常な妊娠であるかを確認します。具体的には赤ちゃんの形態や発育、推定体重の測定、羊水量、胎動の観察などをおこないます。また、前置胎盤や切迫早産の確認のために、胎盤の位置や子宮口の状態を確認することも可能です。
病院にもよりますが、4D超音波診断装置があるところは赤ちゃんを立体的に映して見ることもできます。
Q:超音波検査をおこなうと週数ごとの赤ちゃんの様子が確認できる?
超音波検査では、週数ごとの赤ちゃんの様子が確認できます。特に妊娠初期は赤ちゃんの形態が著しく変化していく時期のため、毎週見える形は違うでしょう。また、この時期の発育はあまり個体差がないため、胎嚢や胎芽の大きさから妊娠週数を把握したり、より早く赤ちゃんの異常に気づいたりすることができます。
以下の表は、超音波検査でわかる赤ちゃんの様子を週数ごとにまとめたものです。
Q:母子手帳をもらうタイミングは?
母子手帳は妊婦健診の際、医師から「次の検診までに母子手帳をもらいに行ってください」と指示があってからもらいに行きましょう。妊娠確定後、母子手帳をもらう時期に決まりはありませんが、一般的に心拍が確認され、妊娠が確定してから交付を受けるのがベストです。
母子手帳はお母さんと赤ちゃんの健康を記録していくものです。妊婦健診や乳幼児健康診査、赤ちゃんの予防接種を受ける際は必ず持参しましょう。母子手帳は生涯にわたって役に立ちますので、無くさないように大切に保管してください。
おわりに
参考文献
1)S. Nayak.The importance of noting the timing of heartbeat in embryo by current standards of transvaginal sonogram Doppler and error in doing so. Ultrasound in Obstetrics & Gynecology 2023; 62 (Suppl. 1): 93–316. p101
https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/uog.26615
2)秦 利之. 妊娠初期の超音波診断. 日本産科婦人科学会雑誌59巻6号
https://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/59/6/KJ00005050009.pdf
3)Stephen Tong , Anupinder Kaur, Susan P Walker, Valerie Bryant, Joseph L Onwude, Michael Permezel.Miscarriage risk for asymptomatic women after a normal first-trimester prenatal visit.Obstet Gynecol. 2008 Mar;111(3):710-4.
https://journals.lww.com/greenjournal/abstract/2008/03000/miscarriage_risk_for_asymptomatic_women_after_a.18.aspx
4)国立成育医療研究センター. 流産について. 国立成育医療研究センターウェブサイト
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/column/souki_ryuzan.html
5)Maria C Magnus , Allen J Wilcox, Nils-Halvdan Morken , Clarice R Weinberg , Siri E Håberg.Role of maternal age and pregnancy history in risk of miscarriage: prospective register based study. BMJ. 2019 Mar 20:364:l869
https://www.bmj.com/content/364/bmj.l869.long
6)国立成育医療研究センター. 高齢出産は高リスク? 35歳以上での妊娠・出産の注意点を解説. 国立成育医療研究センターウェブサイト
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/column/kourei.html
7)厚生労働省.“令和3年3月 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針”
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a29a9bee-4d29-482d-a63b-5f9cb8ea0aa2/aaaf2a82/20230401_policies_boshihoken_shokuji_02.pdf