「生理がきそうな感覚があるのに、なかなか始まらない」「妊娠ではなさそうだけれど、生理がこないのはなぜ?」と不安になる方は少なくありません。生理周期は必ずしも一定とは限らず、数日の遅れはよくあることです。ただし、ストレスや生活習慣、ホルモンバランスの乱れが原因となるケースもあります。
この記事では、生理がきそうでこないときに考えられる原因や、自然にこさせるためのセルフケア、受診の目安について解説します。
生理がきそうでこない…それって普通?
生理がきそうな感覚があるのに始まらないと、不安になる方もいるかもしれません。しかし、生理周期は体調や環境の影響を受けやすく、毎月ぴったり同じとは限りません。とくに1週間以内の遅れであれば、よくあることとされています1)。
とはいえ、遅れが続く場合や、普段と明らかに様子が異なるときには、何らかの原因が隠れていることもあります。
生理がきそうでこないのはなぜ?妊娠以外に考えられる7つの原因
生理がきそうな感覚はあるのに、なかなか始まらない。そんなときにまず気になるのが妊娠の可能性ですが、それ以外にも月経が遅れる原因はさまざまあります。
ここでは、生理がこないときに考えられる代表的な原因を7つご紹介します。
1. ストレスによるホルモンバランスの乱れ
ストレスは、月経周期をコントロールするホルモン分泌に影響を与えるとされています2)。とくにストレスを受けると、脳の視床下部や下垂体の働きが乱れ、排卵の指令がうまく出せなくなることがあります。その結果、排卵が遅れたり、生理そのものが遅れることもあります。
たとえば、受験勉強や仕事の繁忙期、人間関係のストレスなど、強い精神的負荷がかかった後に月経が遅れるケースは少なくありません。「生理がきそうでこない」と感じたとき、直近の生活で大きな変化やストレス要因がなかったか、振り返ってみることも大切です。
2. 生活リズムの乱れ
睡眠不足や夜更かし、不規則な食事などによって生活リズムが乱れると、生理周期にも影響が出ることもゼロではありません。人間の体には「体内時計」が備わっており、ホルモンの分泌や排卵のタイミングとも深く関係しています。このリズムが乱れると、排卵の指令がうまく伝わらず、生理のタイミングがずれてしまう可能性があります。
とくに、昼夜逆転の生活や休日の寝だめなど、生活リズムが不安定な人は、生理が遅れる要因となることがあります。
3. 過度なダイエットによる体重減少
無理な食事制限や急激な体重減少は、ホルモンバランスの乱れを引き起こす原因となります。とくに、3〜6か月で元の体重から15〜20%以上減った場合、排卵が止まり、生理がこなくなるケースも少なくありません。BMIが18.5未満の「やせ」の状態も、体が妊娠機能を後回しにするサインと考えられています3)。
極端な糖質制限や単品ダイエットなどを続けていると、栄養が不足し、ホルモンの分泌にも支障が出てきます。「生理がきそうでこない」と感じたときは、体重や食事内容を冷静に振り返り、心身に負担のない範囲での栄養管理を心がけましょう。
4. 過度な運動やトレーニング
過度な運動は、生理がこなくなる原因のひとつとされています。強度の高い運動が続くと、エネルギー不足や体脂肪率の低下が起こり、脳の視床下部が「妊娠するには不適切な状態」と判断して、排卵の指令を止めてしまうことがあります。これにより月経が止まる「運動性無月経」が起こるのです。
この状態は、アスリートだけでなく、一般の人でも急に運動量を増やしたときに見られることがあります。食事量を減らしながら運動量だけを増やすような生活をしていると、ホルモン分泌に支障をきたしやすくなります。慢性的な疲労や低体重も重なることで、より影響が強く出る傾向があります。
5. 婦人科系の病気
婦人科系の疾患は、生理がこない原因となることがあります。なかでも代表的なのが、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)です。排卵が起こりにくくなるため、月経周期が不規則になったり、生理が数か月こないといった症状が現れます。
ほかにも、子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患では、ホルモン環境や子宮内の状態に影響を及ぼし、月経周期が乱れることがあります。さらに、40歳未満で卵巣の機能が低下する早発卵巣不全(POI)も、生理が止まる原因として知られています3)。これらの疾患は自覚症状が乏しいケースもあり、気づかないまま進行することもあるため、注意が必要です。
6. 甲状腺の病気
甲状腺の機能異常も、生理がこなくなる原因のひとつです。甲状腺ホルモンは、代謝や体温調節だけでなく、月経をコントロールする視床下部―下垂体―卵巣系のホルモンバランスにも影響を及ぼします。
甲状腺機能低下症では、排卵が起こりにくくなることがあり、生理不順や無月経を引き起こすことがあります。逆に、甲状腺機能亢進症では月経周期が短くなることもあります。疲れやすい、寒がり、体重増加・減少といった全身症状が現れることもあるため、月経の遅れだけでなく体調全体の変化にも目を向けることが重要です。
7. 薬剤による影響
一部の薬剤は、ホルモンバランスに影響を与え、生理がこなくなる原因となることがあります。とくに、睡眠薬、抗うつ薬、精神安定剤などの向精神薬は、長期間の服用により脳のホルモン調整機能に影響を及ぼすことがあるとされています2)。
また、ホルモン剤の服用によっても、排卵のタイミングが乱れ、月経が遅れるケースがあります。こうした影響は薬の種類や量、服用期間によって異なりますが、月経異常が現れた際には、服薬状況が関係していないかを医療機関で確認することが大切です。
生理がきそうでこない!こさせるための対策7選
生理が遅れる背景には、ストレスや生活習慣の乱れなど、さまざまな要因が関係していることがあります。ここでは、生理をこさせたいと考える方に向けて、日常生活の中で取り入れやすい以下7つの対策をご紹介します。
- ストレスを溜めない工夫をする
- 食生活を見直す
- 良質な睡眠を意識する
- 適度な運動を取り入れる
- カウンセリングを受けてみる
- 漢方薬を処方してもらう
- 低用量ピルを活用する
それぞれ見ていきましょう。
1. ストレスを溜めない工夫をする
生理を自然にこさせるための方法として、ストレスを溜め込まないことも大切です。強いストレスは視床下部の働きを低下させ、ホルモンバランスの乱れにつながる可能性があります。また、排卵のタイミングがずれ、生理が遅れる要因となることもあります。
心身をリラックスさせるためには、自分に合った方法を見つけることが大切です。深呼吸、軽い運動、ストレッチ、好きな音楽を聴くなど、自分に合ったリラックス法を見つけることで、ストレスの蓄積を防ぎやすくなるでしょう。
2. 食生活を見直す
生理を自然にこさせたいときには、栄養バランスの良い食事を心がけることも大切です。とくに、極端なカロリー制限や特定の食品に偏った食事を続けると、排卵に必要なエネルギーや栄養素が不足し、生理がこない原因になることがあります。
栄養バランスの良い食事を意識し、エネルギー源となる炭水化物、ホルモン合成に関わる脂質、体調を整えるビタミンやミネラルを適切に摂ることが大切です。「最近きちんと食べていないかも」と感じたら、まずは1日3食の基本に立ち返ってみましょう。
3. 良質な睡眠を意識する
睡眠の質は、ホルモンバランスを整えるうえで欠かせません。睡眠中には成長ホルモンや性ホルモンの分泌が促されるため、慢性的な睡眠不足が続くと、排卵のタイミングや生理周期にも影響を与える可能性があります。
寝る直前までスマートフォンを見たり、寝つきが悪くなるようなカフェインの摂取を控えるなど、睡眠環境を整えることもひとつです。決まった時間に就寝・起床する習慣をつけることで、体内リズムが安定しやすくなるでしょう。
4. 適度な運動を取り入れる
生理を自然にこさせるには、適度な運動を取り入れることもひとつの方法です。運動によって全身の血流が促されることで、卵巣や子宮などの器官の働きが活性化し、ホルモン分泌のサイクルも整いやすくなると考えられています。
また、軽い運動にはストレスの軽減作用もあるため、自律神経の安定にもつながります。ただし、摂取エネルギーに対して運動量が過剰になると、逆に排卵が止まりやすくなるため、無理のない範囲で行うことが大切です。
ウォーキングやヨガ、軽い筋トレなど、自分に合った運動を取り入れながら、継続できるペースを見つけていきましょう。
5. カウンセリングを受けてみる
生理を自然にこさせるための一環として、カウンセリングを受けることも検討されます。ダイエットや体重管理が原因で無月経になっている場合、心の不安や思い込みが背景にあることも少なくありません。食事への不安や体型への強いこだわりなどがある場合、医療機関ではカウンセリングを通じて心理的サポートを行うことがあります4)。
医療機関では、必要に応じて精神科や心療内科と連携しながら治療方針を決定していくため、ひとりで抱え込まず、安心して相談できる環境を整えることが大切です。
6. 漢方薬を処方してもらう
生理を自然にこさせるためには、漢方薬による治療も選択肢のひとつです2)。冷えやストレス、体力の低下といった体質の傾向に合わせて処方されるため、明確なホルモン異常が見られない場合でも利用されることがあります5)。
体全体のバランスを整えることで、ホルモンの流れがスムーズになり、月経周期が安定するケースもあるとされています。とはいえ、漢方は自己判断ではなく、医師による診察を受けたうえで処方されるのが一般的です。必要に応じて婦人科で相談するとよいでしょう。
7. 低用量ピルを活用する
生理周期を安定させたい場合、低用量ピルを活用するのもひとつの方法です。低用量ピルは排卵を抑えつつ、ホルモンの分泌を一定に保つ作用があり、周期のばらつきや無月経の改善に用いられることがあります。
避妊薬として広く知られていますが、近年では月経困難症や生理不順の治療にも活用され、ホルモンリズムの乱れに対する治療薬の一つとして位置づけられています。もちろん、妊娠希望してあたる場合には使えません。低用量ピルの服用には、医師の判断が必要です。そのため、ピルの活用を検討している方は、婦人科で専門医に相談してみましょう。
生理がきそうでこない…知っておきたい妊娠可能性の兆候と対応
「生理がきそうでこない。妊娠の可能性は低いし…」と思っていても、生理が予定日を過ぎてもこない場合には注意が必要です。ここでは、以下2つの点について解説します。
- 妊娠の可能性がある場合の兆候
- 市販の妊娠検査薬の使い方と注意点
詳しく見ていきましょう。
妊娠の可能性がある場合の兆候
妊娠しているときの兆候として、もっとも自覚しやすいのは「月経の遅れ」です。とくに、生理周期が整っている人ほど気づきやすく、妊娠の大きな手がかりになります。予定日を1週間以上過ぎても生理が始まらない場合は、妊娠の可能性を考慮する必要があります1),3)。
そのほか、高温期の持続や、軽い下腹部痛、乳房の張りや痛み、強い眠気、吐き気など、ホルモン変化に伴う初期症状が現れることもあります。不安な場合は、早めに妊娠検査薬を活用するか、婦人科で相談しましょう。
妊娠初期と生理前の違いを知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:妊娠初期と生理前の違いは?体温・出血・おりものの変化について解説
妊娠検査薬の使い方と注意点
市販の妊娠検査薬は、妊娠していれば体内で分泌される「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」を検出する仕組みです。妊娠検査薬は、月経予定日の約1週間後から使用すると、正確性が高まりますが、予定日前に使うと、hCGの分泌量が不十分で偽陰性になる場合があります1)。
陽性反応が出た場合は、子宮外妊娠などの異常妊娠の可能性も否定できません。陽性の場合は、できるだけ早めに産婦人科を受診しましょう。一方、陰性でも生理がこない場合や体調に変化があるときも、婦人科を受診して原因を確認することが大切です。
妊娠検査薬について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:妊娠検査薬はいつから反応する?使い方や妊娠判定まで解説
生理がきそうでこないときのよくある質問
生理がきそうでこない状態が続くと、不安や焦りを感じる方も少なくないでしょう。ここでは、よく寄せられる以下3つの質問について解説します。
- 生理がきてほしい!即効性のある方法はある?
- 生理がきそうでこないとき、こさせるツボはある?
- 生理がこないと不安…受診の目安は?
それぞれ見ていきましょう。
Q. 生理がきてほしい!即効性のある方法はある?
今すぐ生理をこさせたいと思っても、即効性のある方法は基本的に存在しません。ホルモンの働きや排卵のタイミングは非常に繊細で、簡単にコントロールできるようなものではありません。
市販薬やサプリメントのなかには「生理がくる」とうたうものもありますが、科学的根拠に乏しい場合が多く、使用には注意が必要です。まずは生活リズムや体調を整え、自然な回復を待つことが基本とされています。
Q. 生理がきそうでこないとき、こさせるツボはある?
生理をこさせる「ツボ」が話題になることがありますが、科学的根拠が乏しいか、限定的な効果しか証明されていないものがほとんどです。インターネット上などでもツボについての情報などありますが、間違ったやり方や強い刺激は、逆に体調悪化を招く可能性も否定できません。
指圧やお灸を通じて血流を促進し、自律神経や冷えの改善につながる可能性はありますが、取り入れる場合は専門の医師にも相談しながら治療を進めるようにするのが良いでしょう。
Q. 生理がこないと不安…受診の目安は?
生理が1〜2週間以上遅れた場合は、婦人科の受診を検討しましょう1)。とくに妊娠の可能性がある場合は、早めに検査や診察を受けることで、状況に応じた対応が可能になります。
一方で、妊娠の可能性がなくても、3か月以上生理がこない場合や、周期の乱れが続くようであればホルモン異常や婦人科疾患のリスクがあるため注意が必要です。体のサインを見逃さず、迷ったときは早めに医療機関を受診することが、安心と適切なケアにつながります。
おわりに
参考文献
1)国立成育医療研究センター, 妊娠したと思ったら病院へ行くタイミングはいつ?検査の流れなどを解説, “妊娠したかもと思ったら”
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/column/itsu.html
2)厚生労働省, 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ, 月経不順・無月経
https://w-health.jp/monthly/menstrual-problem/
3)公益社団法人日本産科婦人科学会,産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編2023
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2023.pdf
4)一般社団法人日本思春期学会, “ダイエットをしてから、月経が止まりました”
https://adolescence.gr.jp/general/q02/
5)北里大学北里研究所病院, 漢方鍼灸治療センター, 月経痛【西洋医学的病名:月経困難症】
https://www.kitasato-u.ac.jp/toui-ken/center/commentary.html