妊娠初期と生理前では同じような症状もあり、どちらの状態であるか判断しにくい場合もあります。
今回の記事では両者の特徴や症状を解説し、体温・出血・おりものの変化の症状などについて比較した内容をまとめています。他にも妊娠検査薬を使うタイミングや、妊娠初期の過ごし方なども解説していますので、あわせて参考にしてください。
妊娠初期の症状について
まず、妊娠初期の症状について身体的症状と精神的症状に分けて詳しく解説します。
妊娠初期の症状
妊娠初期とは、妊娠が成立してから13週6日1)までの期間を指します。この時期は、ホルモンの分泌も大きく変化し、身体的・精神的に大きな変化が訪れる時期です。
この時期に経験する症状には、いくつかの代表的なものがあります。
身体的症状
- つわり:多くの女性が妊娠初期に経験する症状で、吐き気や嘔吐、食欲の変化などが現れます。これはホルモンの変化により引き起こされると考えられています。
- 胸の張りや痛み:ホルモンの影響で胸が張ったり、痛みを感じることがあります。
- 疲れやすさ:体が新しい環境に順応するため、通常よりも疲れやすくなることがあります。
- 頻尿:徐々に大きくなる子宮が膀胱を圧迫し、頻繁にトイレに行きたくなることがあります。
精神的症状
ホルモンの変化により、感情の起伏が激しくなることもあります。気分が不安定になることがあり、精神的にもストレスや疲れを感じることがあります。特に初めての妊娠の場合、不安や心配も多くなることがあります。
妊娠初期は、体も心も大きな変化を迎える時期ですので、無理せず休息を取りながら、体のサインに耳を傾けることが大切です。
妊娠初期症状をチェックしよう
妊娠初期には、体の変化に伴いさまざまな症状が現れることがあります。妊娠の可能性に気づくために、ぜひ以下のチェックリストを参考としてご活用ください。
なお、症状の現れ方や強さには個人差がありますので、すべての症状が出るわけではありません。
また、これらの症状は生理前の症状や体調不良と似ている場合もありますので、正確な判断には医師の診断を受けることが大切です。
チェックリストの使い方
- 症状の確認
表に記載された症状と自分の体調を照らし合わせてください。 - 気になる症状にチェック
あてはまる症状があれば、チェックをつけて記録しましょう。 - 複数の症状が当てはまる場合
複数の症状が見られる場合、妊娠の可能性が高まります。その際は、市販の妊娠検査薬を使用したり、産婦人科を受診することをお勧めします。
注意事項
- 個人差があります
症状の有無や強さは人それぞれ異なります。症状がなくても妊娠していることがありますし、逆に強く症状が出る場合もあります。 - 自己判断は避けましょう
このチェックリストはあくまで参考用です。正確な診断には医療機関での検査が必要です。 - 体調の変化に敏感になりましょう
妊娠初期は体が大きく変化する時期です。無理をせず、自分の体を大切にしてください。
生理前の症状について
ここからは、生理前の症状について詳しく解説します。
生理前の症状
生理前の不調は「月経前症候群(PMS)」と呼ばれ、多くの女性が経験します。この症状は、生理前の黄体期における女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)のバランスの急激な変動によって引き起こされます。生理の3〜10日前2)に精神的、身体的な不調が現れ、通常は生理が始まるとその症状は自然に収まるのが特徴です。
ホルモンの変動により、心身にさまざまな症状が現れます。PMSの症状やその程度には個人差があり、軽度の不調から日常生活に支障をきたすほどの重い症状まで幅広く見られます。
生理前の症状チェックリスト
月経前症候群(PMS)の主な症状をご紹介します。
妊娠初期と生理前の違い
妊娠初期(妊娠超初期)と生理前症状は、体の変化や感じる不調が似ているため、区別が難しいことがあります。しかし、よく観察するとそれぞれに特有のサインや違いが見られることがあります。ここでは、妊娠初期と生理前症状の共通点に触れつつ、特に異なるポイントについて分かりやすく説明していきます。
症状には個人差があるため、確定的な診断は医療機関に相談することをおすすめします。
基礎体温の変化
生理は、女性ホルモンの分泌によって引き起こされ、これらのホルモンは体温にも影響を与えます。
生理開始から排卵までの約14日間は、卵子が成熟するためのホルモンが分泌され、この時期は体温が低めで安定しています。排卵後は、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整える黄体ホルモンが分泌され、体温が上昇する高温期が約14日間続きます3)。もし妊娠しなければ、子宮内膜は剥がれ落ち、生理が始まります。これらの体温の変動は、基礎体温表を使うことで確認でき、排卵が起きたかどうかも推測することができます。
基礎体温は通常、低温期と高温期の2つのフェーズに分かれますが、妊娠初期や生理前でその変化に違いがあります。
妊娠初期の基礎体温
妊娠が成立すると、排卵後に上昇した高温期が維持されます。これは、妊娠中にプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が続くためです。このホルモンは、妊娠を維持するために必要であり、通常、生理が来る前に低下しますが、妊娠している場合、基礎体温は高い状態が続きます。
- 妊娠初期では、高温期が14日以上続くことが一般的です。妊娠が成立している場合、この高温期が12週目くらいまで続くことが多いです。したがって、妊娠している場合、基礎体温は高温期が長期間続くことになります。
生理前の基礎体温
生理前の場合、排卵後にプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、基礎体温が上昇しますが、妊娠していない場合は減少し、基礎体温は生理開始前に低温期に戻ります。
- 生理前の基礎体温は高温期が10〜14日間続くのが一般的で、その後、低下します。生理が始まる前に基礎体温が急激に低くなることが特徴です。
出血
着床出血と生理は、どちらも出血を伴いますが、異なる特徴があります。
以下にそれぞれの違いを説明します。
色
- 着床出血:
生理に比べて出血量が少なく、色も薄いピンクや赤、茶色になることが多いです。一般的に薄い色になる傾向があります。
- 生理:
生理の出血は、鮮やかな赤色から暗い赤色、または黒っぽい色になることが一般的です。色が濃い傾向にあります。
量
- 着床出血:
非常に少量で、おりものに混ざる程度です。
- 生理:
生理の出血は、通常は多めで、ナプキンなどが必要になる量です。初日や2日目に比較的多い出血が見られます。
期間
- 着床出血:
通常は2〜3日程度と短期間です。短い場合は数時間から1〜2日程度、長くても3〜4日ほどです。
- 生理:
通常3〜7日間続きます。人によっては少し長くなることもありますが、一般的に1週間程度の出血が続きます。
タイミング
- 着床出血:
排卵後6〜12日目頃に発生することが多いです。受精卵が子宮内膜に着床する際に軽い出血が起こることがあります。
- 生理:
生理周期に基づいて決まっており、通常、生理周期の14日後に排卵が起こり、その後、妊娠が成立しない場合、生理が始まります。
これらの違いを踏まえて、出血の量や期間、タイミングに異常があった場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
関連記事:着床出血はいつ起こる?色や量と生理との違いについて
おりものの変化
おりもの(膣分泌物)の量、色、匂いについて、妊娠初期と生理前では異なる特徴があります。以下にそれぞれの違いを説明します。
量
- 妊娠初期
一般的にエストロゲンの分泌が増加するため、おりものの量が増えることが多いです。
- 生理前
排卵後の黄体期ではおりものの量は多くない状態が続きますが、生理の直前では少し量が増える傾向があります。
色
- 妊娠初期
透明または白色、クリーム色、黄色っぽいなど個人差が多いです。一般的にはさらっとしていてのびる性状です。
- 生理前
白濁していることが多いです。生理の直前では少量の経血が混ざった色になることもあります。性状はドロっとして粘り気があることが多いです。
匂い
妊娠初期、生理前ともに、少し酸っぱいような匂いがすることがあります。個人差も大きいため、おりものの匂いだけで妊娠初期や生理前を見分けるのはやや難しいと言えます。ただし、極端に強い匂いの場合は、感染症など別の病気の可能性もあるため、異常を感じる場合は医師に相談しましょう。
関連記事:妊娠初期にみられるおりものの変化|妊娠によって起こるそのほかの症状や注意が必要なおりものの状態についても解説
頻尿
頻尿について、妊娠初期と生理前では異なる特徴があります。以下にそれぞれの違いを説明します。
妊娠初期の頻尿
妊娠初期には子宮が膨らみ始めるため、膀胱に圧力がかかり、尿意を感じやすくなることが多いです。
生理前の頻尿
生理前に見られる症状では、頻尿はあまり見られません。むくみなどがありますが、頻繁にトイレに行きたくなるという症状は一般的ではありません。生理前におけるむくみや水分の滞留はありますが、それは体内の水分がうまく排出されないことによるもので、頻尿とは逆の症状です。
妊娠検査薬を使うタイミング
生理周期が規則的な場合、生理予定日の1週間後に妊娠検査薬を使用することをおすすめします。この時期は、妊娠によって分泌されるホルモン(hCG)の尿中の量が十分な量になるため、検査薬で正確に結果を確認できることが多いです。
妊娠の兆候に気づいたら、焦らず適切なタイミングで検査を行い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
妊娠初期の過ごし方
妊娠初期、特に妊娠超初期は、妊娠検査薬を使っても反応が出ないことがあるため、妊娠しているかどうかが確定するのは少し時間がかかることがあります。それでも、妊娠の兆候を感じた場合には、早い段階で体調に気をつけて生活することが大切です。ここでは、妊娠初期に気をつけるべきことを紹介します。
体調を無理なく整える
妊娠初期は、体がホルモンの変化に適応している最中です。無理な運動やストレスの多い状況は体調を悪化させる可能性があるため、リラックスできる時間を大切にし、睡眠を十分にとるよう心掛けましょう。
食事に気をつける
妊娠初期は、赤ちゃんの成長に必要な栄養素を摂る大切な時期です。バランスの良い食事を心掛け、特に葉酸(妊娠初期に重要な栄養素)を意識的に摂取しましょう。葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害を予防するために必要です4)。葉酸を多く含む食品としては、緑黄色野菜や豆類などがあります。また、過度のカフェイン摂取は避けるようにしましょう。
喫煙や飲酒の回避
妊娠初期の段階では、赤ちゃんの器官形成が進んでいます。喫煙や飲酒は、赤ちゃんの発育に悪影響を与えるため、この時期には完全に避けるようにしましょう。
薬の服用に気を付ける
妊娠初期は、赤ちゃんの器官形成が始まる時期です。薬の中には赤ちゃんの成長に影響を及ぼすものが少なくないため、自己判断で薬を服用しないようにしましょう。風邪薬や鎮痛薬など、必要ない場合は服用を避け、万が一服用が必要な場合は、必ず医療機関に相談しましょう。
適度な運動
軽いウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かすことは、妊娠初期の体調を整えるために有効です。ただし、過度の運動は体に負担をかけるため注意が必要です。
ストレス管理
ストレスは妊娠に悪影響を与えることがあります。リラックスできる時間を持つこと、心地よい環境を作ることを意識しましょう。ストレスが多いと感じる場合は、サポートを求めたり、リラックスできる方法を見つけて心身のケアを行うことが大切です。
おわりに
参考文献
1)日本産婦人科医会. 妊娠時期の特徴と正常妊娠・異常妊娠. 日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/note/(1)妊娠時期の特徴と正常妊娠・異常妊娠/
2)女性の健康推進室 ヘルスケアラボ. 月経前症候群(PMS). 女性の健康推進室 ヘルスケアラボウェブサイト
https://w-health.jp/puberty_trouble/pms/
3)東京都福祉局. 妊娠のために知っておきたいこと. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.ninkatsuka.metro.tokyo.lg.jp/ninshin-shitteokitai/
4)母子健康手帳 情報支援サイト. 妊娠中と産後の食事. 母子健康手帳 情報支援サイト
https://mchbook.cfa.go.jp/pdf/item_1_5.pdf