子宮筋腫は、その種類によって自覚症状が大きく異なります。筋腫が小さく自覚症状が軽微なものは経過観察を行い、重篤なものは手術によって摘出を行います。子宮筋腫は、できる場所や大きさによって不妊や流産の原因ともなりえるため、生理が重いといった自覚症状を感じたらお早めに病院へご相談ください。
子宮筋腫とは
子宮筋腫は子宮の筋肉に発生する良性腫瘍で、婦人科疾患の中で最も発生頻度が高い疾患です。悪性となることはまれですが、月経困難症や不妊などの原因になることがあります。
子宮筋腫はその発生場所によって、粘膜下筋腫(子宮の内側)、筋層内筋腫(子宮の筋肉の中)、漿膜下筋腫(子宮の外側)という3種類に分けられます。粘膜下筋腫は自覚症状が強いですが、筋層内筋腫・漿膜下筋腫は筋腫が小さいと自覚症状がありません。
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子宮筋腫の症状・自覚症状
子宮筋腫がある方の約半数は自覚症状がなく、特に筋層内筋腫・漿膜下筋腫では、筋腫が大きくとも自覚症状がない場合が多いです。粘膜下筋腫は小さくとも症状が強い傾向があります。
子宮筋腫の主な症状は、過多月経(経血量が異常に多い)、月経困難症(月経に付随して起こる腹痛や腰痛)、貧血、不正出血、不妊です。また筋腫が周囲の臓器を圧迫することで、腰痛や便秘、頻尿などの症状が現れることがあります。
子宮筋腫の検査
子宮筋腫の検査方法には、超音波検査やMRI検査、子宮鏡検査などがあります。
基本的にはまず超音波検査によって筋腫の数や位置、大きさを調べます。その後、より詳細な検査が必要となった場合には、MRI検査や子宮鏡検査を行います。これらの検査では超音波検査に比べ正確に、他の腫瘍との判別や筋腫の状態を調べることができます。
子宮筋腫の診断
漿膜下筋腫
漿膜下筋腫は子宮の外側にできる筋腫です。外向きに発育するため、筋腫の大きさが巨大でも、過多月経といった子宮に関わる自覚症状が乏しいことが特徴です。ただし10cm以上の巨大な筋腫は、根本が茎状に細いことが多く(有茎)、まれに筋腫が腹腔内で捻れることで激しい腹痛を起こすことがあります。
筋層内筋腫
筋層内筋腫は、子宮の筋肉中にできる筋腫です。子宮筋腫の約70%が筋層内筋腫で、複数の筋層内筋腫が多発することも多いです。筋腫が小さいうちは自覚症状はありませんが、発育して大きくなると、過多月経のような自覚症状が生じます。特に子宮の内側へ筋腫が突出すると、着床障害による不妊や流産のリスクが高まります。
粘膜下筋腫
粘膜下筋腫は子宮の内側にできる筋腫です。筋腫が子宮内膜を内側から引き伸ばすため子宮の収縮が悪くなるほか、筋腫をとりまく血管が子宮内に露出して出血しやすいため、過多月経のような子宮に関わる自覚症状が起こりやすいです。他の筋腫と違って、筋腫の大きさが小さくとも自覚症状を感じやすいのが特徴です。また、子宮内膜の形が変わることで、筋層内筋腫のように着床障害や流産のリスクが高まります。
頸部筋腫
頸部筋腫は、子宮の頸部にできる筋腫です。上記3種類の子宮筋腫に比べるとまれに生じるものですが、不正出血や性交痛、月経痛といった自覚症状が起こりやすいです。また、頸部筋腫が生じている場合は上記3種類の筋腫を併発していることが多いです。筋腫が膀胱側に発育すると、膀胱の圧迫によって頻尿や排尿障害が起こります。
子宮筋腫の治療方法
経過観察
子宮筋腫は良性の腫瘍です。そのため自覚症状がない、もしくは軽微な場合は、3-6ヶ月ごとに検診を行い経過観察をします。ただし、経過観察の過程で筋腫が大きくなっていく場合などは悪性腫瘍の疑いがあるため、手術で摘出して診断を行う必要が出てくる場合もあります。そのため経過観察とはいえ、定期的な検診は欠かせません。
薬物療法
薬物療法では、ホルモンの分泌量を調整する薬(低用量ピルなど)を投与します。薬物治療の効果が不十分である場合は、根本的な治療として手術療法を行うこともあります。
手術療法
子宮筋腫を根本的に治療する場合、手術療法を選択します。子宮筋腫のみを摘出する場合は筋腫核出術、子宮ごと取り除く場合は子宮全摘術を行います。妊娠の希望がある場合は基本的に筋腫核出術を選択しますが、小さな筋腫を取り残した場合に子宮筋腫が再発するリスクがあります。そのため妊娠のご希望がない場合は子宮全摘術を選択します。
子宮筋腫の手術療法について
筋腫核出術
筋腫核出術では、子宮筋腫のみを摘出します。子宮を残すため妊娠が可能ですが、筋腫を取り残した場合の再発リスクがあります。近年では患者さんの身体の負担が少ない、腹腔鏡を用いる手術が主ですが、筋腫の場所や大きさによっては開腹手術を行います。これらの手術は一般的に1週間前後の入院が必要です。また、一部の粘膜下筋腫については、腟から挿入する子宮鏡を用いた手術が適用となります。手術による傷ができず、身体の負担も少ないため、入院期間は3日程度です。
子宮全摘術
子宮全摘術では、子宮と卵管を摘出します。そのため子宮筋腫の再発を予防できますが、妊娠できなくなってしまうのが難点です。なお、女性ホルモンが分泌されるのは卵巣ですので、手術で子宮と卵管を摘出してもホルモン分泌に影響はありません。
子宮全摘術は腹腔鏡または開腹で行い、筋腫核出術同様に1週間前後の入院が必要です。
子宮筋腫と不妊症
子宮筋腫はできる場所や大きさによっては不妊の原因となり得ます。例えば粘膜下筋腫と筋層内筋腫は子宮内膜に影響を及ぼすため、受精卵の着床を妨げることがあります。また、大きさが10cm以上の巨大な筋腫は子宮を圧迫するため、やはり不妊の原因となります。
最近生理が重いといった自覚症状がある場合、子宮筋腫の疑いがありますのでお早めに病院へご相談ください。
よくある質問
子宮筋腫の手術で準備しておいた方がよいものはありますか?
入院時の持ち物としては、一般的な持ち物(保険証やパジャマ、洗面用具など)のほかに生理用ショーツ・生理用ナプキンが必要です。これは、術後に不正出血が2週間程度続くためです。 それぞれの病院によって指示があり、説明してもらえるのでご安心ください。
子宮筋腫の手術費用はどれくらいですか?
子宮筋腫の手術費用は、病院や手術方法によって10〜30万と大きく異なります。加入している民間保険や高額療養費制度について、ご自身の治療に対する給付内容が異なりますので、事前に調べておくと安心です。また、確定申告の医療費控除によって税金の一部を還付することもできます。これらの手続きをスムーズに進めるためにも、通院の際の領収書や交通費の明細を保管しておきましょう。
おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております。
また、すでに不妊治療を受けている方々のお悩みやセカンドオピニオンにも対応しております。セカンドオピニオンを含めたクリニックへのよくあるご質問はこちらをご参考ください。