妊活をしている人が病院やクリニックにデビューするタイミングの目安は、妊活開始から1年経過しても妊娠しない、女性の年齢が35歳以上、不妊かもしれないと不安な場合などがあります。この記事では、これらのタイミングがデビューの目安となる理由や、初めて医療機関にかかる時に流れ、事前に準備しておきたいことについて解説します。
妊活中の病院デビューのタイミング
妊活中に病院やクリニックへのデビューをするタイミングの目安として、次のような例があります。
- 妊活開始から1年経過しても妊娠しない場合
- 女性の年齢が35歳以上の場合
- 不妊かもしれないと不安を感じる場合
以下に詳しく解説します。
妊活開始から1年経過しても妊娠しない場合
日本では、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず、1年間妊娠しないことを「不妊症」と定義しています1)。妊孕性(にんようせい:妊娠する力)に問題がないカップルが避妊をせずに性交すると、約8割が1年以内に妊娠が成立すると言われています。
もし妊活を始めてから1年経っても妊娠しない場合は、何らかの不妊の原因がある可能性が考えられるため、病院やクリニックの受診を検討する目安となります。
女性の年齢が35歳以上の場合
女性は年齢を経るにつれて30歳以降、徐々に妊娠率が下がる傾向がありますが、特に35歳を超えると顕著に下がり始め、40歳を超えるとさらに妊娠しにくくなります2)。
また、検査や治療を進める間にも年齢は上がっていくため、その影響を考慮すると早めに受診・相談を行うことで適切な対応につながりやすくなります。
妊娠を望む女性が35歳以上の場合は、妊娠しない期間が1年未満であっても、病院やクリニックへの受診を検討しましょう。
不妊かもしれないと不安を感じる場合
「もしかしたら不妊かもしれない」と漠然とした不安を感じている場合でも、病院やクリニックの受診は可能です。例えば、以下のような既往歴がある方は、早めの受診を検討すると良いでしょう。
- 生理不順がある
- 子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系疾患がある
- 過去に骨盤腹膜炎にかかったことがある など
このような状態や既往歴が原因で妊娠しにくくなっている可能性があります。検査をして原因を特定することで、適切なアドバイスや治療を受けられます。
妊活中の病院デビュー前に知っておきたい不妊症のこと
妊活中に病院やクリニックにデビューする前に不妊症の基本を知っておきましょう。検査や治療をスムーズに進められます。
そもそも不妊症とは
不妊症とは、前述のとおり「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合」と定義されています1)。
国立社会保障・人口問題研究所が2021年に実施した第16回出生動向基本調査では、不妊について心配したことがある夫婦は39.2%(3組に1組以上)、実際に不妊の検査・治療を受けたことのある夫婦は22.7%(4.4組に1組)となっており3)、一般的な夫婦においても問題となるケースは少なくありません。
アメリカの生殖医学界では、女性の年齢が35歳以上の場合は6か月で評価と治療を開始する必要があるとしており4)、日本でも年齢が高い場合には、妊娠しない期間が1年未満でも検査と治療を開始したほうがよいという考えが広まってきています。
不妊症の原因
不妊症の原因は、女性側と男性側のどちらか一方か両方が原因の場合があります。主な原因は以下のとおりです。
妊活中に初めて病院・クリニックに行くときの流れ
初めての病院、クリニックデビューは誰でも緊張します。ここでは、病院・クリニックの選び方から一般的な受診・治療の流れを解説します。
病院・クリニックの選択
不妊治療をする病院やクリニックは、それぞれ得意とする分野や治療内容が異なります。病院選びの際には以下のポイントを参考にしてください。
初回の受診の流れ
初回の受診時は、通常は以下のような流れとなります。
受付・問診票の記入
受付の際は保険証・マイナンバーカード・保険資格確認書のいずれかを準備しましょう。アプリを導入しているクリニックなどでは、事前に問診票に回答しておくことができる場合もあります。
予診
医師以外の医療スタッフが、問診票の回答内容の詳細や現在の状態などについて確認をします。
診察
医師が問診や超音波検査などで子宮や卵巣の状態などを確認します。
採血
排卵や妊娠に関連するようなホルモン値などを中心に調べます。検査結果が出たら、診察などの結果と合わせて、次に解説する今後の治療方針を決定することになります。
治療方針の相談
検査結果に基づき、医師と今後の治療方針について話し合います。不妊治療が必要と判断される場合、一般的には、タイミング法、人工授精、体外受精と段階的にステップアップしていくことが多いですが、年齢や検査結果、既往歴などを考慮して、一人ひとりに合った治療計画を立てていきます。
不妊治療のステップアップについては、以下の記事で詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。
妊活中の病院デビューの前にしておきたいこと
病院やクリニックのデビューの前に、どのような準備をすれば良いか考える人も少なくありません。ここではデビュー前に準備しておきたいことの例をあげます。
- 妊活について夫婦2人で話し合う
- 基礎体温をつける
- 生活リズムを整えておく
以下に詳しく解説します。
妊活について夫婦で話し合う
不妊治療は、パートナーと二人三脚で進めることが何より大切です。特に、男性の中には検査や治療に抵抗を感じる方も少なくありません。
まずは、お互いが今どんなことを感じているのか、将来についてどう考えているのかじっくり話し合う時間を作り、パートナーと同じ方向を向けるようにすると良いでしょう。
基礎体温をつける
病院やクリニックデビューをする前に基礎体温を測っておくと、排卵の有無や月経周期の兆候が分かり、診断に役立つケースもあります。専用のアプリや紙に記録して持っていくと、医師に正確な情報を伝えられます。一方で必ずしも必要ではないと判断する医師も多いため、無理のない範囲で記録すれば十分です。
生活リズムを整えておく
生活習慣を整えておくことも大切です。睡眠不足や不規則な生活、喫煙や飲酒、強いストレスは妊娠しやすさに影響するだけでなく、ホルモン値や精液検査などの結果を一時的に乱す原因にもなります。
生活リズムが崩れた状態で検査を受けると、本来の体の状態が正しく反映されず、診断や治療方針に影響する可能性があります。受診の前から規則正しい生活を意識することで、妊娠に向けた準備だけでなく、正確な診断につながる土台を作ることができます。
妊活中の病院デビューの際によくある質問
Q:病院デビューのときは1人で行ってもいいですか?
1人で受診することも可能な医療機関が多いです。ただし、不妊の原因は男女のどちらにも可能性があるため、男女ペアで受診することで早期に原因がわかるケースもあります。
妊娠に向けた現在の体の状態を確認するブライダルチェックについて、男女ペアで受けるメリットなどを以下の記事でまとめているので、あわせて参考にしてください。
関連記事:ブライダルチェックは男女ペアが良い?カップルで受けるメリットや検査内容について解説
Q:病院デビューのときに生理でも大丈夫ですか?
詳細な方針は医療機関によって異なりますが、生理期間に検査を受けることが推奨される場合もあります。E2(エストラジオール)、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)などの女性ホルモン値は、生理1~5日目が評価しやすいとされています。受診が推奨される日について指定されている場合もあるため、医療機関のサイトなどで確認するようにしましょう。
おわりに
参考文献
1)公益社団法人 日本産科婦人科学会.不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/
2)一般社団法人 日本生殖医学会.Q22.女性の加齢は不妊症にどんな影響を与えるのですか? 日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa22.html
3)国立社会保障・人口問題研究所. 第16回出生動向基本調査. 国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_Report04.pdf
4)Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Fertility evaluation of infertile women: a committee opinion. Fertil Steril. 2021;116(5):1255-1265.
https://www.asrm.org/practice-guidance/practice-committee-documents/fertility-evaluation-of-infertile-women-a-committee-opinion-2021/