「妊娠しているかも」と感じたとき、妊娠検査薬をいつ使えばよいか迷う方もいらっしゃるでしょう。正しい結果を得るためには、適切な方法やタイミングで妊娠検査薬を使用することが重要です。この記事では、性交から何日で妊娠検査薬が反応するのか、正確な結果を得るための使用時期や判定方法などについて解説します。
妊娠検査薬の仕組みと性交から何日で反応するか
一般的な妊娠検査薬は生理予定日から1週間後1)に使用すると正確性の高い結果が出ます。性交後の日数に応じて使用するよりかは、生理予定日からの日数に応じて使用するのが一般的です。
時期が早すぎるとhCGの分泌量が少ないため、正しい結果が出ないことも少なくありません。妊娠検査薬の判定方法や使用時期などについて解説します。
妊娠検査薬はどのように妊娠を判定している?
妊娠検査薬は尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を検出することで妊娠の有無を判定します。hCGとは受精卵が子宮内膜に着床した後、絨毛(じゅうもう:胎盤の組織のひとつ)から分泌され始めるホルモンです。主に妊娠時に分泌されるホルモンであるため、尿中にhCGが検出されると妊娠の可能性が高いと判断できます。
一般的な妊娠検査薬は、尿中のhCG濃度が50IU/L以上で陽性反応を示します。市販されている妊娠検査薬は99%以上の精度があるものが多いですが、使用時期が早すぎるとhCG量が足りず、陰性と判断されることも少なくありません。適切な時期に使用することで、より正確性の高い結果が得られます。
性交から何日で反応する?
性交から何日というカウント方法で考える場合、約3週間後が反応する目安となります。妊娠が成立するためには時間をかけてさまざまな段階を経る必要があるため、性交後すぐに妊娠検査薬が反応することはほぼありません。
一般的な妊娠検査薬を使用するタイミングは、性交後の日数ではなく生理予定日の1週間後を目安にすることが基本です。しかし、生理予定日が不明な場合や生理不順がある場合は、性交後約3週間を目安に検査するとよいでしょう。
正常な妊娠の場合、性交から受精までの期間、受精から着床までの期間、着床からhCG濃度が検出される濃度となるまでの期間を合計すると3週間が目安です。このタイミングで検査すると正確性の高い結果が得られやすいと言えます。
着床については、以下の記事でも詳しくまとめているので参考にしてください。
関連記事:着床とは?時期はいつ?着床出血や着床痛などの症状について
妊娠検査薬はいつから使えるか?妊娠検査薬の使用時期
妊娠検査薬の使用時期は、生理周期が規則的な場合と不規則な場合によって異なります。
生理周期が規則的な場合は、生理予定日から1週間後が信頼性の高い結果が得られる時期です。場合によっては生理予定日当日でも陽性が出る場合がありますが、確実性を重要視するならば生理予定日から1週間待つことをおすすめします。
生理周期が不規則な場合や生理不順がある場合は、前回の月経を基準にして1週間ほど遅れた頃を目安に検査しましょう。
妊娠検査薬をいつから使用するかについては、以下の記事でもまとめているので参考にしてください。
関連記事;妊娠検査薬はいつから反応する?使い方や妊娠判定まで解説
妊娠検査薬が生理予定日当日に陽性になる確率は?
一般的な妊娠検査薬について、生理予定日当日に陽性になる確率を明確に示している資料はあまりありませんが、海外の研究でいくつか参考となる報告があります。
非常に感度が高いhCGの検査方法を用いた海外の研究では、生理予定日の初日に10%で着床が確認できなかったとされており、最大で90%が生理予定日当日に検出できる(陽性と判断できる)と予想しています2)。
他にも海外の研究で、感度の高い妊娠検査薬(hCG検出感度が6.3 mIU/mL)の検査薬において生理予定日当日の妊娠の95%以上を検出可能と予想、25 mIU/mLの検査薬において80%を検出できるとした報告もあります3)。ただし、上記は日本の妊娠検査薬では必ずしも当てはまりません。日本の一般的な妊娠検査薬は、hCG検出感度が50 mIU/mLであり、上記の研究で使われている検査薬よりも感度が低いことになります。
日本の一般的な妊娠検査薬では、生理予定日のおおむね1週間後に使用すれば、99%以上の確率で正確とされているため、この使用方法を守ることが重要です。
妊娠検査薬のフライング検査とは?
「フライング検査」とは一般的な妊娠検査薬の推奨使用時期(生理予定日の1週間後より前)よりも早い時期に検査することです。本来の使用方法でないため、妊娠していても正しい判定がでない可能性があり、おすすめできる使い方ではありません。
フライング検査で妊娠の有無を正しく検出できる可能性もありますが、陰性となった場合でも妊娠を否定できるものではなく、再検査が必要です。できるだけ早く調べたい場合は「早期妊娠検査薬」を使用する方法もあります。早期妊娠検査薬は尿中のhCG量が25IU/L程度で反応するため、一般的な妊娠検査薬よりも早い時期(生理開始予定日の当日など)に使用できます。
ただし、産婦人科で妊娠の正式な診断が可能になるのは5週頃であり、早期妊娠検査薬で生理開始予定日に陽性と結果が出ても医療機関での正式な診断はできません。そのため無理に使う必要はないと言えます。
早期に検査薬を使用する内容については、以下の記事でも解説しているので参考にしてください。
関連記事:妊娠早期に検査薬を使うとどうなる?偽陽性のパターンや判定窓が薄い場合なども
妊娠検査薬は生理予定日前でも反応する?
妊娠検査薬を生理予定日前に使用すると反応する可能性もありますが、推奨できない使い方です。一般の妊娠検査薬は使用方法が「生理予定日のおおむね1週間後から」とされているものがほとんどであり、陰性であっても実際には妊娠している可能性も否定できません。
より感度の高い早期妊娠検査薬に分類される製品でも、「生理予定日の当日から」とされているものが多く、こちらも生理予定日前では正しい結果が得られない可能性があるため推奨できません。
原則は検査薬の正しい使い方で検査するようにしましょう。仮に生理予定日前に陽性反応が出ても、医療機関で正式な診断が可能になるのは5週頃となる点もあらかじめ知っておくようにしましょう。
生理不順がある場合
生理不順の場合は生理予定日を把握しにくいため、妊娠検査薬の使用時期の判断が難しいため、前月の月経周期を目安に検査しましょう。
たとえば、前月の月経周期が30日であれば、最終月経日から30日後を生理予定日と仮定し、その1週間後に検査します。
性交渉があった日を基準とする場合は、妊娠の可能性がある性交日から3週間以上経過した時点で検査するようにしましょう。
妊娠検査薬の正しい使い方と注意点
妊娠検査薬を正しく使用するためには、以下のポイントに注意しましょう。
- 説明書の指示に従って使用する
- 適切なタイミングで検査する
- 判定時間を厳守する
- 保管方法に気を付ける
これらのポイントを守ることで、より信頼性の高い結果を得ることができます。それぞれについて詳しく解説します。
妊娠検査薬の結果の見方
妊娠検査薬を正しく使用するためには、製品の説明書をよく読むことが第一です。各製品によって使用方法が異なるため、必ず説明書の指示内容に従いましょう。尿を採取するタイミングは朝、昼、晩のどのタイミングでも構いません。2〜5秒間、採尿部に尿をかけるか紙コップに尿を取り、約10秒間採尿部のみに尿を浸けて検査しましょう。
なお、尿をかける時間は製品によって異なるため、説明書の内容に従ってください。他にも判定時間の厳守も大切です。多くの製品は1〜3分間、平らな場所に妊娠検査薬を置いて判定を待つように設定されています。
再び採尿部に尿をかけたり、10分以上置いたりすると正しく判定できない可能性があるため避けましょう。
妊娠検査薬の結果は陽性?陰性?判定の見方
多くの妊娠検査薬は、終了ラインと判定ラインの有無で判断します。終了ラインとは検査が正しく行われたことを示す線で、判定ラインとはhCGの存在を示す線のことです。
両ラインが表示された場合は「陽性」です。仮に判定ラインが薄くても線の存在が確認できれば陽性と判断して良いでしょう。「陰性」の場合は終了ラインのみが表示されます。終了ラインも表示されない場合は検査が正しく行われていないことを意味するので、検査は無効です。
妊娠検査薬の「偽陽性」「偽陰性」について
妊娠検査薬は精度が高いものが多いですが、妊娠していないのに陽性反応が出る「偽陽性」や、反対に妊娠しているのに陰性反応が出る「偽陰性」が出ることがあります。
偽陽性の主な原因は、不妊治療のhCGの注射による影響や流産、hCGを分泌する腫瘍がある場合や絨毛がんを患っている場合などです。偽陰性の主な原因は、検査時期が早すぎることや多量の水分摂取による尿の薄さ、使用期限が切れた妊娠検査薬の使用などです。
検査結果に不安を感じる場合はもう少し日数を置いてから再検査したり、医療機関を受診したりしましょう。
再検査や医療機関受診のタイミング
陰性が出たにもかかわらず生理予定日から1週間以上遅れている場合は、さらに日を置いてから再検査しましょう。再検査時も陰性で生理が来ない場合や、何らかの症状を感じる場合は産婦人科を受診する必要があります。
妊娠検査薬は妊娠の有無は調べられるものですが、確定診断できるものではありません。また、正常な妊娠かどうかまでは判断できないため、結果が陽性の場合はできるだけ早く産婦人科を受診して診察を受けましょう。
他にも、出血や腹痛がある場合は急を要するため、自己判断せずに医師に相談することが重要です。
妊娠検査薬に関するよくある質問
妊娠検査薬を使用する際によくある疑問点についてまとめています。
検査のタイミングや後日結果が変わる可能性について、ピルを服用している際の検査のタイミングや判定ラインが薄い場合の判断などについて解説します。
Q:妊娠検査薬を性交後2週間で使うのは早い?
性交日を基準で考える場合、一般の妊娠検査薬では3週間後以降で使うことが推奨されており、性交後2週間では早いと言えます。
性交後2週間は妊娠に至る場合でも着床が完了するかどうかの時期です。通常は着床後約1週間からhCGが急増しますが、着床直後はまだhCG量が少なく場合によっては正確に検出できないことがあります。正確な結果を判定できないことがあるため、一般の妊娠検査薬の使用は推奨されません。
不妊治療中などである程度排卵日がわかっている場合は、主治医とよく相談した上で検査しましょう。生理が不規則な場合は、前月の周期に基づいて生理予定日の1週間後に調べることをおすすめします。
Q:生理予定日当日に使っても正確?
一般的な妊娠検査薬は、生理予定日のおおむね1週間後以降を正しい使用方法としているものがほとんどですので、生理予定日当日に使っても結果が正確でない可能性があります。
使用時期が早すぎると尿中のhCG量が足りないため、妊娠している場合でも陰性になる可能性があります。ただし、早期妊娠検査薬に分類される製品であれば、生理予定日当日から検出できるものが多いです。どうしても確認したい場合は早期妊娠検査薬を使うようにしましょう。
Q:妊娠検査薬で陰性だったのに後日陽性になる?
初回検査時の結果が陰性で、後日陽性になることは珍しくはありません。これは初回時はhCG量がまだ検出量に達していないことが理由です。
正常な妊娠の場合、hCG量は時間の経過とともに増加します。仮に生理予定日に検査して結果が陰性で、その後も生理が来なければさらに日を空けてから再検査してみましょう。
Q:ピル服用中に妊娠検査薬を使用できるのはいつから?
低用量ピルを服用している場合でも妊娠検査薬の結果には影響しません。いつ使用しても問題ないでしょう。
低用量ピルは正しく服用すれば高い避妊効果があるものですが、飲み忘れなどが理由で避妊効果が低下すると妊娠する可能性があります。
妊娠の可能性がある場合は、心当たりがある性交から3週間ほど空けてから検査するとよいでしょう。この時期であれば妊娠検査薬による検査で正確性の高い結果が得られます。
ピルの種類や服用状況によって判断が難しい場合は、主治医に相談することをおすすめします。
Q:判定ラインが薄い・曖昧な場合の見方は?
終了ラインが薄くても線の存在が確認できる場合は正しく検査できています。同時に判定ラインが出て入れば陽性と判断してよいです。ラインの色の濃さはhCGの濃度に関連しているため、色の濃淡ではなく線の有無を確認することが重要です。
もしも判断に迷う場合は日を置いて再検査するか、医療機関を受診して診察を受けることでより確実な診断を受けられます。
おわりに
参考文献
1)国立成育医療研究センター.妊娠したと思ったら病院へ行くタイミングはいつ?検査の流れなどを解説.国立成育医療研究センター.
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/column/itsu.html
2)Wilcox AJ, Baird DD, Dunson D, McChesney R, Weinberg CR. Natural limits of pregnancy testing in relation to the expected menstrual period. JAMA. 2001;286(14):1759–1761.
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/194261
3)Cole LA, Sutton-Riley JM, Khanlian SA, Borkovskaya M, Rayburn BB, Rayburn WF. Sensitivity of over-the-counter pregnancy tests: comparison of utility and marketing messages. J Am Pharm Assoc (2003). 2005;45(5):608-615.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1544319115316307