妊娠4週未満の早期に妊娠検査薬を使用すると、尿中のhCG量が検査薬に反応する量まで達していないため、正しい結果が得られない可能性があります。検査の時期は「生理予定日の1週間後」以降が適切とされています。間違った使い方をした場合や、お母さんや赤ちゃんの状態によっても、正しい結果にならない場合があります。判定結果が疑わしいときは、1週間後に再検査をするか、産婦人科を受診するようにしましょう。
妊娠検査薬の情報や原理など
妊娠検査薬は、尿中のhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)の有無を調べ、妊娠を判定する試薬です。
hCGは、妊娠すると胎盤の絨毛という組織から分泌されます。受精卵が着床して、成長する過程で胎盤が形成されてhCGが分泌され、その結果、尿中にhCGが排出されます。こういった原理で、妊娠検査薬で妊娠判定ができるのです。
妊娠検査薬はいつから使える?
一般的な妊娠検査薬では、生理予定日から1週間後に使用するのが望ましい1)です。妊娠検査薬が検出できるhCGの濃度(50IU/L)に達するのが、妊娠4週頃であるためです。
排卵が遅れる可能性や判定の精度を考慮すると、生理予定日から1週間後が検査をするには望ましいといわれています。赤ちゃんを待ち望み、早く検査をしたいと思う方もいるかもしれませんが、妊娠4週より前に検査すると、正しい結果が出ない可能性があります。正しい結果を得るためには、妊娠検査薬は適切な時期に使用することが大切です。
妊娠検査薬の使い方
妊娠検査薬は、検査スティックに尿をかけて判定します。
検査スティックは、個包装を検査直前に開封して取り出します。スティックを取り出したあと、採尿部に尿をかけるか、尿の入った紙コップなどに浸します。尿をかける時間は、製品の指定時間を守りましょう。スティックは平らな場所に置き、1〜3分(製品によって異なる)待ちます。
判定窓にラインが出た場合は陽性で「妊娠反応あり」となります。色が薄くても縦のラインが現れたら陽性です。判定窓にラインが出ない場合は陰性で「妊娠反応なし」と判定します。
主な注意点
妊娠検査薬は、正しく使用すれば精度の高い結果が得られます。しかし、妊娠初期では、人によってhCGの量が非常に少ないこともあり、明らかな結果が得られない場合もあります。その場合、1週間後に再検査をすることをおすすめします。
妊娠検査薬で陽性となったときは、最後の生理から6週間後を目安に必ず産婦人科を受診し妊娠の確定診断を受けてください。妊娠5週以降になると病院の経腟超音波検査で、胎嚢が確認できます。子宮外妊娠や流産の可能性を確認するためにも重要です。
結果が陰性であっても、お腹の痛みがあったり、3か月以上生理が来ないときは治療が必要なことがあるため、医師の診察が必要です。
妊娠の早期(4週未満など)に検査薬を使うとどうなる?
一般の妊娠検査薬は、妊娠4週未満に使用すると、妊娠していても陰性を示す可能性があります。hCGが尿中に排出されていても、検出できる量に達していないためです。また、水分の摂り過ぎによって、尿中のhCGの濃度が低くなることもあります。
尿中のhCGは妊娠4週頃に50IU/L程度となり、5〜6週間後に急上昇、8〜12週では100,000〜200,000IU/Lと高くなります。その後下降し、20週〜分娩時までは50,000IU/L前後で経過します。
フライング検査とは
フライング検査とは、「生理開始予定日の1週間後より前」に検査することをいいます。市販の妊娠検査薬は、生理開始予定の1週間後以降(妊娠5週目以降)を判定可能な時期としています。一般的な検査薬で判定できるhCGの基準値は50IU/Lであり、早い時期に使用すると、正しい判定が出ない可能性があるのでおすすめできません。
早期妊娠検査薬ならフライング検査でも検出できる場合も
最近では、一般的な妊娠検査薬の他に「早期妊娠検査薬」が販売されています。一般的な妊娠検査薬との違いは、生理予定日の検査が可能である点です。hCG量が通常の妊娠検査薬と比べて半分の「25IU/L」で反応するように作られています。
ただし、産婦人科で妊娠の正式な診断が可能になるのは6週目頃であり、無理に使う必要はないでしょう。
早期妊娠検査薬は市販で買える?
早期妊娠検査薬は、医療用体外診断用医薬品に位置づけられています。そのため、調剤施設のある薬局で、薬剤師から購入する必要があります。高額なため、妊娠の可能性を確認するだけであれば、無理に購入しなくても良いでしょう。
偽陽性(陽性の結果が間違い)となるのは?
妊娠検査薬で偽陽性となるのは、以下のとおりです。
- 尿をかけすぎた場合
- 化学流産の場合
- 不妊治療でhCG注射を受けている場合
- 糖尿病や膀胱炎の場合
- hCG産生腫瘍の場合
- 閉経前後の場合
ひとつずつ詳しく解説します。
尿をかけすぎた場合
妊娠検査薬に尿を多くかけてしまうと、正しい結果が得られない可能性があります。尿をスティックにかける時間や、採尿部を尿に浸す時間は、製品ごとに決まっています。説明書をよく読み、正しく使用しましょう。
化学流産の場合
化学的流産の場合、偽陽性となる場合があります。化学的流産とは、赤ちゃんの胎嚢が確認される前に、流産となる状態です。
早期妊娠検査薬を使用すると、hCGが低めでも陽性となる可能性があります。妊娠検査薬の感度が高くなったことで、これまで認識されなかったような、ごく初期の妊娠が認識されるようになったのです2)。
不妊治療でhCG注射を受けている場合
不妊治療でhCG注射を受けたあとに妊娠検査薬を使用すると、陽性反応を示す場合があります。hCGがしばらく体内に残るためです。治療後すぐに検査をすると、妊娠していなくても、陽性となるときもあるため、検査をするタイミングは、医師と相談するようにしてください。
糖尿病や膀胱炎の場合
尿中に高濃度のタンパクや糖が出ていると、陽性反応を示す場合があります3)。膀胱炎や糖尿病の方は、判定結果に注意が必要です。
また、採取した尿を放置すると尿中の成分が分解し、検査結果に影響を与える可能性があります。採尿後は速やかに検査することが重要です。
hCG産生腫瘍の場合
hCG産生腫瘍の場合、hCGの上昇によって陽性反応を示す場合があります。hCG産生腫瘍とは、妊娠していなくてもhCGが高くなる腫瘍で、卵巣がんが代表的です。この他、膀胱がんや腎臓がんといった妊娠とは関わりのない臓器のがんでも、hCGが高くなることがあります。
閉経前後の場合
閉経前後の女性は、年齢とともにhCGが上昇するため、妊娠検査が陽性となる場合があります。更年期障害の治療でホルモン剤を使用している人も、尿中にhCGが出て、反応が現われるときがあります。
偽陰性(陰性の結果が間違い)となるのは?
妊娠検査薬で偽陰性となるのは、以下のとおりです。
- 検査のタイミングが早すぎたり正しく使用できていない場合
- 尿の濃度が薄くなっている場合
- 尿中のhCG値が高すぎる場合
ひとつずつ詳しく解説します。
検査のタイミングが早すぎたり正しく使用できていない場合
検査のタイミングが早すぎる、正しく使用できていないなどの場合、妊娠しているにも関わらず陰性となるケースがあります。一般的な妊娠検査薬は、妊娠4週目ころからhCGに反応するように作られているためです。
尿をかける部位を間違えたり、尿の量が多すぎたり少なすぎたりしても、陰性になる場合があります。使用期限が切れた検査薬を使用した場合も正しい結果が得られません。使用方法や使用期限を守りましょう。
尿の濃度が薄くなっている場合
水分を摂り過ぎると尿中のhCG濃度が低くなり、陰性となる場合があります。検査前は水分を過剰に摂らないよう注意しましょう。おすすめの検査のタイミングは朝起きたときです。
尿中hCG値が高すぎる場合
尿中のhCG値が高すぎても、陽性とならないケースがあります。異常妊娠の場合や胎児異常の場合、胞状奇胎などで大量にhCGが分泌された場合です。
妊娠検査薬の値段や購入方法
妊娠検査薬の多くは、300〜1,500円程度で販売されています。ほとんどは第2類医薬品であり、病院などで処方箋をもらう必要はありません。薬局やドラッグストア、インターネットの通信販売で購入できます。
早期妊娠検査薬は、薬剤師がいる薬局やドラッグストアでないと購入できません。薬剤師による説明が義務づけられているためです。値段は一般的な妊娠検査薬より高めです。
妊娠検査薬に関するよくある質問
判定や妊娠検査薬についてよくある質問をまとめました。
Q:判定窓の濃さは週数に関係ある?
判定窓のラインは、尿中のhCG量により、濃くなる場合や薄くなる場合がありますが、必ずしも週数に比例するわけではありません。通常は5週以降であれば、ラインが濃くなります。
濃さは個人差もありますし、そのときの体調によっても左右されます。色が濃くても薄くても、ラインが出ていれば陽性と判断できるでしょう。
Q:判定窓の陽性のラインが薄い場合は?
正しい方法で検査ができていれば、ラインが薄くても陽性と判断できます。しかし、判定のタイミングによっては「蒸発線」が現われることもあり、注意が必要です。
蒸発線とは、妊娠検査薬で判定を行なう際、指定の時間以上置いた場合に見られる線です。尿の水分が蒸発し、濃縮された尿の成分が判定窓に残ることが原因と考えられます。10分を過ぎてから現われる線は、正しい結果ではありません。判断に迷う場合は数日後に再検査をすることをおすすめします。
Q:早期妊娠検査薬と通常の妊娠検査薬の違いは?
早期妊娠検査薬と通常の妊娠検査薬の違いは、hCGホルモンの検出感度です。市販の妊娠検査薬は「50IU/L」で反応する製品が大半です。
一方早期妊娠検査薬は、半分の濃度の「25IU/L」で反応するように製造されています。hCGの分泌が少ない時期でも反応するため、早い時期での検査が可能なのです。
Q:妊娠検査薬の結果が間違いの場合はありますか
妊娠検査薬は、正しい方法で検査を行わなかったり、特定の状態であったりするときは、間違った結果が出る可能性があります。
例えば、不妊治療でhCG注射を行なったあとです。妊娠していない場合でも、陽性となるケースがあります。また、絨毛性疾患や胞状奇胎などのときも陽性を示すときがあります。妊娠検査薬の結果のみで判断せず、きちんと医師の診察を受けることが重要です。
Q:妊娠検査薬で陽性となったらどうすれば良い?
妊娠検査薬で陽性となった場合は、最後の月経から6週間後を目安に産婦人科を受診し、医師の確定診断を受けましょう。
一般的な妊娠検査では、問診票の記入、尿検査・血液検査、経腟エコー検査などが行なわれます。最終月経や月経周期、妊娠・出産経験の有無などを事前にメモしておくと、問診票を記入する際に役立ちます。
妊娠後のスケジュールと費用について
妊娠が確定したら、出産まで定期的に妊婦健診を受けることが推奨されています。妊娠してから出産までの妊婦健診は14回程度です。費用は基本的に全額自己負担ですが、お住まいの自治体で公的な補助や助成を受けられるケースが多いです。妊娠届を提出することで、補助や助成を受けられるので、早めに提出しましょう。
妊婦健診の標準的なスケジュール例4)を下記に示します。
※こども家庭庁 出生前検査認証制度等啓発事業.妊娠中の検査に関する情報サイト.妊婦健診の検査.“検査の内容は?”.こども家庭庁ウェブサイトより作図
https://prenatal.cfa.go.jp/pregnancy-and-childbirth/
妊娠中や産前産後は、自治体や職場からさまざまな支援を受けられます。お住まいの自治体や職場、加入している健康保険組合などに確認しましょう。
おわりに
トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。
トーチクリニックは恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。
また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。
参考文献
1)国立研究開発法人国立成育医療研究センター.“妊娠したと思ったら病院に行くタイミングはいつ?検査の流れなどを解説”.国立研究開発法人国立成育医療研究センターウェブサイト
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/column/itsu.html
2)日本産婦人科医会.No99.流産のすべて”1.生化学的妊娠(Biochemical pregnancy)の扱い方
https://www.jaog.or.jp/note/1.生化学的妊娠(biochemical-pregnancy)の扱い方/
3)厚生労働省.登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和6年4月).第3章XVI 一般用検査薬.厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/content/001243494.pdf
4)こども家庭庁 出生前検査認証制度等啓発事業.妊娠中の検査に関する情報サイト.妊婦健診の検査.“検査の内容は?”.こども家庭庁ウェブサイト
https://prenatal.cfa.go.jp/pregnancy-and-childbirth/