ブライダルチェックは男性も必要?おすすめされる理由や検査の内容・費用、保険適用の有無、やり方などを解説

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
上野院 院長 婦人科 生殖医療科 医師
お二人の道のりが明るく照らされるよう「理解」と「納得」の上で選択いただく過程を大切にしています。エビデンスに基づいた高水準の医療提供により「幸せな家族計画の実現」をお手伝いさせていただきます。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

ブライダルチェックや妊娠に関わることは女性の問題と思われがちですが、不妊原因の約半数は男性にもあることが知られています。将来の妊娠を考えるうえで男性の体の状態も重要になります。

この記事では男性でもブライダルチェックを受けることがおすすめされる理由や検査内容、費用、保険適用からやり方まで解説します。

ブライダルチェックとは

ブライダルチェックとは、現在の健康状態や将来の妊娠に関わる病気の有無などを確認するための検査です。

夫婦やカップルで受ければ、妊娠に向けたそれぞれの体の状態を知ることができます。不妊治療が必要となってからではなく、妊活開始前に健康状態をチェックすることができるため、万が一問題があった場合には早めに対応できるメリットがあります。

男性のブライダルチェックでは、精子の状態を確認する精液検査や、ホルモンの状態などを確認する血液検査が主な検査内容となります。

ブライダルチェックは男性も必要?なぜおすすめされる?

不妊の原因の割合
不妊の原因の割合

前述のとおり、ブライダルチェックは男性にも必要な検査です。

世界保健機関(WHO)の報告によると、不妊の原因は男性側が24%、男女双方が24%とされています。つまり、不妊の原因の約半数に男性が関与しているのです。現在、不妊に悩むカップルは4.4組に1組ともいわれており、男性側の要因を調べることも重要であるといえます。

妊娠や出産のイベントに積極的に関わるという意味でも、男性がブライダルチェックを受ける理由となります。不妊治療における女性のメンタルヘルスを調べた調査では、女性のストレス要因として、「ひとりで抱え込む苦しみ」が25%という結果であり、これは「終わりの見えない治療」(28%)に次ぐ多い要因としてあげられました1)

不妊治療に進んだ場合、女性は「女性にばかり負担が大きいことへの不満」や「自分で決断することが多く負担」など、ひとりで抱え込む苦しみを感じることも少なくない結果と言えます。そのため、妊娠や出産のスタート地点となるブライダルチェックから、パートナーの男性が参加することは大きな意味があります。

このように不妊の原因が男性側にもある点や、男性が主体的に妊娠や出産のイベントに関わることで女性のメンタルヘルスの維持につながり得る点などから、男性もブライダルチェックを受けることが推奨されます。

男性不妊の主な原因の詳細は

男性不妊の主な原因は、造精機能障害、性機能障害、精路通過障害の3つに分類されます。

1つ目は造精機能障害です。造精機能障害は元気な精子がつくれない状態のことを指し、男性不妊全体の約8割を占めるといわれています。原因不明なケースが多いですが、精巣やその周囲の静脈が拡張する精索静脈瘤をもつ人は造精機能は低下するとされています。

2つ目は勃起や射精に問題があり、性行為がうまくいかない性機能障害です。妊娠や性交渉へのプレッシャーなどさまざまなストレスが要因のひとつです。

3つ目の精路通過障害は、精子の通り道が詰まったり狭くなったりすることで精子が排出できない状態のことです。生まれつき精子の通り道である精管がない場合や、炎症により精子の通路が詰まっていることが原因と考えられています。

男性不妊の主な原因について詳しい内容を確認したい場合は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:男性不妊の原因|検査内容や費用、治療法についても解説

ブライダルチェックにおける男性側の費用

ブライダルチェックは病気の検査や治療を目的としておらず、原則として保険適用外となります。

そのため全額自己負担となり、精液検査やホルモン検査、血液検査など医療機関ごとに料金が設定されています。

精液検査のみであれば5,000〜10,000円前後、ホルモン検査や感染症検査などを追加すると20,000〜28,000円前後が比較的多い価格帯です。

ブライダルチェックの価格や検査項目は医療機関によっても異なるため、事前に確認するようにしましょう。

男性のブライダルチェックも提供している東京のトーチクリニック

トーチクリニックにて提供している男性ブライダルチェックは以下のとおりです。

分類 検査項目 ライトセット 妊活セット フルスクリー
ニングセット
¥4,650 ¥22,150 ¥44,150
精液検査 一般検査
一般+DFI検査
一般+DFI+TAC検査
血液検査 男性ホルモン
基礎値
クラミジア
抗体検査
風疹抗体検査
感染症検査
(HIV等)
医師によるカウンセリング

※DFI:DNAに損傷がある割合
TAC:酸化ストレスに対する抵抗力

トーチクリニックの男性ブライダルチェックについては、以下のページで詳しく解説しているので合わせてご覧ください。

関連ページ:男性ブライダルチェック

トーチクリニックは恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。

ブライダルチェックにおける男性側の検査の内容

男性のブライダルチェックにて実施されている検査の内容について解説します。

精液検査

精液検査は男性不妊症においても重要な検査とされています。

精液量や精子濃度、運動率、総精子数、前進運動数などを調べることが可能です。

以下はWHOの精液検査の基準値です2)

検査項目 下限基準値
精液量 1.4mL以上
総精子数 3,900万/射精以上
精子濃度 1,600万/mL
総運動率 42%以上
正常形態率 4%以上

これらは自然妊娠に至った男性のデータをもとに、下位5%の値を基準として設定されています。

なお、精液検査の結果は変動が大きく、1回の精液検査ですべてを判断することは難しい場合もあります。仮に1回目の精液所見が不良であっても、再検査をして23%が正常と判定されるという研究報告もあるため3)、1度の検査結果で過度の心配はせず、必要に応じて複数回の検査を受けるようにしましょう。

精液検査については以下のページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

関連ページ:精液検査

その他の検査

精液検査以外にブライダルチェックで実施されることが多い検査として、以下のようなものがあります。

男性ホルモン基礎値検査 ・LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、T(テストステロン)、
PRL(プロラクチン)などを検査する
・脳の下垂体から分泌されるホルモンのバランスが崩れると、精子が作られにくく
なる可能性がある
クラミジア抗体検査 ・不妊の原因となるクラミジア感染症の有無を検査する
・感染者数の多い性感染症であり、女性でのクラミジア感染症が女性不妊の原因と
なるため、パートナーを含めた治療へつながる
風疹抗体検査 ・風疹ウイルスを検査する
・妊娠中の女性が風疹になると胎児に障害が起きるリスクがあり、結果によっては
予防接種が推奨される
感染症検査(HIV等) ・HIV感染症や梅毒、B型肝炎、C型肝炎などを検査する
・人工授精および体外受精を希望する場合には必須の事前検査

検査結果によっては、パートナーにも検査や治療が必要となる場合があります。

例えばクラミジアなどの性感染症は、男性の生殖器に炎症を起こし、性行為を介して女性にも感染し、卵管炎や子宮内膜炎などの原因となることもあるため注意が必要です。

自身の健康だけでなくパートナーのためにも、女性だけでなく男性もブライダルチェックを受けましょう。

男性のブライダルチェックのやり方は?どうやって実施する?

男性のブライダルチェックは精液検査と血液検査が主なものとなります。

精液検査

精液検査は、禁欲期間後にマスターベーションにて採精(精液を採取)し、精液カップに精液を入れて医療機関に提出します。

採精の具体的なやり方は、以下のとおりです。

・手を石鹸などで洗い、マスターベーションにて精液カップに全量を採取する(潤滑剤やコンドームの使用は原則避ける)
・カップの蓋を閉め、記入事項などがあれば医療機関のルールにしたがって記入する
・タオルで巻くなどして20〜37℃程度を保ち、採精後数時間以内を目処に医療機関に提出する

トーチクリニックでは禁欲期間として2〜3日、採精後は2時間以内を目安に持参いただくことをお願いしています。

血液検査

男性ブライダルチェックの血液検査のやり方は、一般的な健康診断などの血液検査と大きく変わりありません。

医療機関にて採血し、医療機関の検査室や外部の検査機関にて測定・分析が行われます。

ブライダルチェックの内容によっては血液検査が含まれない場合もあります。

トーチクリニックの男性ブライダルチェックについては、以下のページで詳しく解説しているので合わせてご覧ください。

関連ページ:男性ブライダルチェック

男性のブライダルチェックは保険適用される?

ブライダルチェックは原則として保険適用されません。これは何らかの症状がない状態での検査は、保険診療の対象から除外されるためです。

ブライダルチェックは将来の妊娠に向けた体の状態を調べるものであるため、費用は自己負担となります。

ただし、保険適用に該当する症状がありブライダルチェックの検査項目に含まれていた場合には、部分的に保険適用となる場合があります。保険適用になると保険証が必要ですので、念のため持参しておきましょう。

男性のブライダルチェックは助成金の対象となる?

男性のブライダルチェックはお住まいの自治体によって助成金の対象となる場合があります。

東京都を例にあげると以下のような助成事業があります。

  • 不妊検査等助成事業
  • TOKYOプレコンゼミ

不妊検査等助成事業は、子どもを希望する夫婦やカップルが不妊検査を受け、必要に応じた治療に取り組めるよう、不妊検査および治療の費用を一部助成する制度であり、精液検査なども対象となります4)

ただし、ブライダルチェックの中でも将来の妊娠に向けてヘルスチェックを行いたい、といった検診目的で受けたものは対象にならない点には注意しましょう。

TOKYOプレコンゼミは、性や妊娠に関する講座を受講し、都が指定する登録医療機関で対象の検査を受け、アンケートに回答するなどの条件を満たすと助成を受けることができます5)

不妊検査等助成事業と異なる点として、TOKYOプレコンゼミは結婚の有無にかかわらず参加できる制度です。都内在住で対象年齢の18〜39歳の方であれば受講が可能です。

ブライダルチェックに関連する助成金については、以下の記事にて詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

関連記事:ブライダルチェックで使える助成金とは?東京・神奈川・埼玉・千葉の制度や保険適用について解説

おわりに

トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

ウェブで予約する

また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考にしてください。

ブライダルチェック
ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

参考文献

1)国立成育医療研究センター. 高度不妊治療を受ける女性が感じるストレス要因が明らかに「終わりの見えない治療」が最多、治療方針をともに考える支援が必要 プレスリリース. 国立成育医療研究センターウェブサイト
https://www.ncchd.go.jp/press/2023/1005.html

2)World Health Organization. WHO Laboratory Manual for the Examination and Processing of Human Semen. 6th ed. World Health Organization; 2021.
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/343208/9789240030787-eng.pdf

3)Blickenstorfer K, Voelkle M, Xie M, Fröhlich A, Imthurn B, Leeners B. Are WHO recommendations to perform 2 consecutive semen analyses for reliable diagnosis of male infertility still valid? J Urol. 2019;201(4):783-791. 
https://www.auajournals.org/doi/10.1016/j.juro.2018.11.001

4)東京都福祉局. 不妊検査等助成事業の概要. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/funinkensa/gaiyou

5)東京都福祉局. プレコンセプションケア. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/preconceptioncare