体外受精の採卵では、採卵前や採卵当日、採卵後などの手順やスケジュールが決まっており、過ごし方の注意点などもあります。この記事では採卵の具体的な手順やスケジュールなどについて解説します。これから採卵を受ける予定がある場合や、採卵後の過ごし方などを確認したい場合は参考にしてください。
採卵とは
採卵とは、体外受精を行う際に、女性の卵巣から成熟した卵子を取り出す医療行為です。
超音波で卵胞の位置を確認しながら、一般的には腟から細い針で卵子を吸引して採取します。採取された卵子は、体外で精子と受精させます。
そもそも卵子とは
卵子は女性の生殖細胞であり、精子と受精することで受精卵となります。受精卵は赤ちゃんとなる細胞です。
卵子は子宮の左右にある卵巣に保存され、ホルモンの働きで毎月その中の1つが成熟して、卵巣から飛び出します。これがいわゆる「排卵」です。
卵子の総数は胎児期に約700万個と最も多く、生まれたときに約200万個、思春期には約30万個程度にまで減少します。卵子は女性が生まれたときに一生分が決まり、それ以降は増えません。年齢とともに日々減少し、閉経時には約1,000個以下になっています。
卵子の数や質は妊娠に影響するため、不妊治療を考える上で重要な要素です。
採卵の方法|経腟的採卵と経腹的採卵
多くの場合は、経腟的採卵という方法で採卵が実施されます。経腟超音波(エコー)で確認しながら、腟から細い針を押し当て、卵胞液を吸引して卵子を回収します。
一方、卵巣や子宮筋腫などの腫瘍、子宮内膜症や子宮腺筋症などの癒着がある場合は、腹部から卵子を取り出す経腹的採卵が選択されることもあります。
採卵と体外受精
体外受精とは、採卵によって卵胞から取り出した卵子を、体外で精子と受精させる方法です。受精によって得られた胚(受精卵)は、数日間体外で育て、発育の良いものを子宮内へ戻します。
体外受精を行うケースとして、一般不妊治療(タイミング療法、人工授精)で妊娠できなかった場合や、卵管の状態(閉塞など)から妊娠が難しいと判断された場合、抗精子抗体を持っている免疫性不妊、男性側の原因による不妊などが挙げられます。
体外受精については、以下の診療内容ページでも詳しく解説しているので参考にしてください。
関連ページ:体外受精
体外受精の採卵手順とスケジュール
体外受精では、卵巣刺激によって卵胞を育て、採卵2日前の夜に薬剤を投与し、卵子を成熟させます。採卵後、卵子と精子の状態を確認して胚移植の方法を決定します。
ここではトーチクリニックにおける体外受精の採卵手順とスケジュールなどについて解説します。
採卵2日前〜前日の手順とスケジュール
採卵2日前の夜(採卵予定時間の約36〜38時間前)に、hCGの注射もしくはアゴニスト製剤の点鼻スプレーを行います。この手順は、卵子を成熟させるため(排卵する直前の状態)に必要であり、時間を厳守する必要があります。
採卵前日は、麻酔時に食べ物や胃酸が肺に流れ込むことを防ぐため、食事は23時までに済ませていただきます。また、排卵を抑える座薬を7時、15時、23時に挿入していただきます。
採卵当日の手順とスケジュール
採卵当日は、採卵前・採卵時・採卵後それぞれで手順が決まっています。
採卵前
7時に自宅で座薬を挿入していただき、指示された時間に来院していただきます。
採卵
採卵室へ案内後、酸素モニター・心電図・血圧計を装着し、局所麻酔もしくは静脈麻酔をして、採卵を行います。
採卵後
麻酔からの覚醒後、安静室で1時間程度休んでいただき、問題なければ採尿後に点滴を抜きます。
超音波で採卵後の体の状態と、採取した卵子・精子の状態を確認し、治療方針を決めます。その後、次回の診察予約を取り、帰宅となります。
採卵の手順やスケジュールに関しては、以下の診療内容ページでも詳しく解説しているのであわせてご確認ください。
関連ページ:採卵術
動画でも解説しています。
関連動画:採卵と当日のスケジュール
卵巣刺激
生理1日目〜3日目の間に受診し、卵胞を育てる飲み薬もしくは注射を開始します。その後、卵胞の大きさにあわせて採卵2日前の夜に、卵胞を成熟させるホルモン剤の服用(注射か点鼻スプレー)をしていただきます。
成熟卵を得るために非常に重要な過程ですので、指定された服用時間を忘れたり遅れたりしないようにしましょう。
採卵
採卵当日は、あらかじめ7時に排卵を抑える座薬を挿入していただきます。その後来院していただき、採卵を行います。採卵の際に静脈麻酔といって、眠っている間に採卵が終わる麻酔方法を選ぶこともできますので、担当医と相談してください。1時間ほど休んでいただき、体に問題がなければご帰宅いただけます。
採卵の時間について
採卵の時間は、採卵の個数にもよりますが、平均5~10分ほどで終わります。麻酔がある場合は、前後に麻酔の時間が加わります。
採卵の個数について
排卵誘発によって成熟した卵胞の数で採卵の個数も変わりますが、平均すると10個前後です。採卵数が少ない場合は局所麻酔のみで採卵することができますが、多い場合には静脈麻酔をおすすめします。
採卵の痛みについて
腟壁はもともと痛みを感じにくい部位ですので、採卵の個数によっては麻酔が必要ない場合もあります。局所麻酔では痛みは少ないことが多いものの、鈍痛を感じる方もいらっしゃいます。静脈麻酔を行う場合は、眠っている間に採卵が終了するため、痛みはありません。
関連ページ:採卵は痛みがある?痛みの理由と痛みを和らげる方法
採精
卵子は、体外に出て時間が経つほど受精能が低下するため、採卵当日には精子も必要となります。そのため凍結精子をあらかじめ準備していない場合は、当日朝にマスターベーションで採取していただき、精子を持参していただきます。
受精
採卵で取り出した卵子を受精させるには、体外受精と顕微授精という2種類の方法があります。受精障害がある場合や、精子の状態によっては、顕微授精が推奨されることがあります。
体外受精(IVF)
体外受精では、培養した卵子に精子をふりかけることで受精を促します。顕微授精に比べ高度な技術が不要で、価格も安価です。精子自体の力を利用するため、自然に近い受精方法ともいえます。
詳しくはこちらもご参考ください。
関連ページ:体外受精
顕微授精
顕微授精では、卵子に細いガラス針を刺して精子を直接卵子に注入します。顕微鏡下で行う高度な授精法であり、体外受精ではうまく受精できない場合に行われます。
詳しくはこちらもご参考ください。
関連ページ:顕微授精
胚培養
採卵した卵子を受精させて子宮に戻すまでの間、培養器で受精卵を育てます。通常は採卵後3〜6日間行われます。卵管で通常行われる受精卵の成熟を模す必要があるため、体内環境に近づけた状態で培養を行います。
関連ページ:胚培養
胚移植
採卵で得られた卵子を受精させた後、子宮内に受精卵を戻すことを胚移植といいます。採卵した月経周期内にそのまま行う新鮮胚移植と、一度凍結した受精卵を別周期内で移植する凍結胚移植があります。移植には、培養3日後の初期胚または培養5日後の胚盤胞を用います。
詳しくはこちらもご参考ください。
関連ページ:胚移植
妊娠判定
受精卵が着床すると、特定のホルモンが分泌されます。このホルモンを血液検査で検出できた場合、妊娠が成立したとみなします。移植1回での妊娠率は、年齢にもよりますが、約23%とされています。
詳しくはこちらもご参考ください。
関連ページ:妊娠判定と予定日の確定について
体外受精の採卵後の過ごし方
採卵後1時間ほど安静にしていただき、検査で問題がなければそのまま帰宅できます。当日は激しい運動や性交渉を避け、湯船には浸からずシャワー浴にしてください。また、麻酔を行った場合は、当日の車の運転は避けてください。
なお、採卵後に注意したい症状のひとつとして、排卵誘発剤の副作用でもある卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が挙げられます。
排卵誘発剤により、卵胞が過剰に刺激されて卵巣がふくれ上がり、お腹や胸に水がたまるなどの症状が起こることを卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼びます1)。重症だと点滴や、入院管理が必要となることがあります。
排卵誘発剤の使用後に「お腹が張る」「お腹が痛む」「吐き気がする」「急に体重が増えた」「尿量が少なくなる」などの症状に気がついたら、すぐに医師に相談してください。
採卵に関連するよくある質問
採卵に関してよくある疑問点などを解説します。
Q:採卵の痛みはどれくらいありますか?
採卵の際の痛みの感じ方は個人差がありますが、一般的には、発育した卵胞数が多いと穿刺の回数も増えるため、痛みが強くなります。鎮痛薬や麻酔を使用することができます。また、子宮内膜症などの既往歴や卵巣の位置によって、痛みが強くなる場合もあります。
Q:採卵後に痛みがあります。どれくらい続きますか?
採卵後の痛みは徐々に軽減しますが、つらい場合は鎮痛剤を服用しても問題ありません。ただし、痛みが持続する場合や強くなる場合は、採卵に伴う合併症の可能性がありますので、必ず医師にご相談ください。
Q:採卵後生理はいつ来ますか?
採卵後は、約1〜2週間で生理が起こることが一般的です。採卵にむけて、卵胞発育目的のホルモン剤を使用するため、ホルモンバランスが崩れて生理周期が乱れることがあります。
採卵後の生理に関しては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
関連記事:採卵後の生理はいつくる?いつもと違う生理の原因を解説
Q:体外受精と人工授精の違いは?
体外受精と人工授精の大きな違いは、受精(授精)方法が異なる点です。人工授精は受精が卵管内で自然に起こるのに対し、体外受精は体外で受精させ、できた受精卵を子宮内に戻す方法です。
人工授精は、採取した男性の精液を医療機関で処理をしてから注射器で子宮内に直接注入します。その後、自然妊娠と同じように子宮内で受精・着床を促します。
体外受精は排卵誘発剤で育てた複数の卵胞から卵子を採取し、精子と同じ容器に入れ受精するのを待ちます。受精卵になったら数日間培養して子宮に戻します。この一連の治療が体外受精です。
おわりに
参考文献
1)厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 卵巣過剰刺激症候群(OHSS). 厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1r01-r03.pdf