体外受精(不妊治療)の注射とは?自己注射の種類やメリットを解説

最終更新日時:
2024-01-30
市山 卓彦
医師
torch clinic医師

不妊治療で行う自己注射

自己注射とは

不妊治療(体外受精)においては、排卵誘発剤を用いて卵巣を刺激することでより多くの卵胞の発育が望めるため、排卵誘発剤を用いることが一般的です。なかでも、自己注射は、排卵誘発剤を自分で注射する方法であり、頻繁に通院することが難しい患者さんにおすすめです。

病院で自己注射の手順についての指導を受けた後に、その場で自己注射を実践していただくので、手順は煩雑ではありません。また、注射のために通院していただく場合と比べても、注射の回数や副作用は変わりません。

排卵誘発剤の注射

不妊治療(体外受精)においては、排卵誘発剤を用いて卵巣を刺激することでより多くの卵胞発育が望めるため、排卵誘発剤を用いることが一般的です。

排卵誘発剤には経口薬と注射薬がありますが、医師と相談のうえで、どのような薬剤を使用するのかを決めていきます。一般的には、注射薬の方が刺激が強く、育つ卵胞の数が多くなります。

注射を打つ頻度

排卵誘発剤の注射は、月経が始まってから約1週間~2週間にわたり、卵胞の大きさを確認しながら使用します。注射に用いる薬剤の投与量や使用頻度は医師の指示によりますが、強い刺激を与える場合は連日注射を行い、中等度の刺激を与える場合は隔日注射を行います。

卵胞の発育が十分な大きさになったら、卵子を成熟させる注射を採卵2日前の指示された時間に自己注射していただきます。

自己注射の種類

hMG/rFSH注射(ゴナドトロピン製剤)

hMG/rFSH注射(ゴナドトロピン製剤)は排卵誘発の注射薬で、卵胞の成長を促進します。無排卵周期症や無月経に対して使用されるほか、複数の卵胞発育が必要な体外受精にも有効です。hMG/rFSH注射にはFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体ホルモン)が含まれ、多数の卵胞の発育を促します。効果的な排卵誘発を行う重要な薬剤ですが、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群のリスクがあるため、医師が投与量や投与日数などを指導したうえで使用します。

GnRHアンタゴニスト製剤

GnRHアンタゴニスト製剤は、軽度から中等度の視床下部性排卵障害がある場合に使われる排卵誘発の注射薬です。hMG/rFSH注射と併用し、卵胞の発育を調整することで質の高い卵胞を採取することが可能です。卵胞が排卵する際に上昇するLH(黄体ホルモン)を抑制し、より成熟した卵子を採卵するなどの調整ができるのです。副作用は少ないですが、多胎妊娠の報告がわずかにあります。

hCG注射

上述の注射によって卵胞の発育が十分な大きさに達した後、卵子を成熟させるためのhCG注射を行います。hCG注射にはLH(黄体ホルモン)作用があり、その作用で卵子がより成熟し、よりよい卵子が獲得できるようになります。通常、採卵2日前の指示された時間にhCG注射を行います。

自己注射のメリット

通院時間や費用の節約

不妊治療に自己注射を導入した場合、通院回数を約3分の1まで減らすことができます。頻繁な通院が不要となるため通院にかかる時間と費用を節約でき、仕事と治療を両立しやすくなります。

自分のタイミングで打つことができる

病院の予約や待ち時間が不要となり、患者さんの都合に合わせて自由なタイミングで注射が可能です。ただし、注射によっては医師の時間指定がありますので、その時間は守るようにしてください。

生活スタイルを維持できる

自己注射は仕事や家事にほとんど影響を与えないため、生活スタイルを維持しやすいことも利点です。そのため忙しい患者さんに最適で、時間的・経済的負担を軽減できます。

自己注射をする際の注意点

注射を毎日行う場合は、同じ場所を避けて針を刺すようにしましょう。連続して同じ場所に打つと、組織への影響に加えて針が入りづらくなる可能性があります。激痛や血液の逆流が生じた場合は即座に針を抜き、別の場所に注射してください。体調の変化があれば治療を中止し医師に相談してください。また、注射器の廃棄方法は医療機関により異なるため、医療機関の指示に従って処理してください。

よくある質問

自己注射は痛いですか?

自己注射痛の針は細いので、一般的には痛みを感じにくいです。また、痛みを和らげる方法はいくつかあり、注射前に保冷剤で注射部位を冷やしたり、薬液が冷たい場合は逆に手のひらで少し温めてから注射すると刺激を感じにくくなります。薬液をゆっくり時間をかけて注射することも大事です。

自己注射の副作用を教えてください。

排卵誘発剤の注射は、卵胞が複数個育つことを目的に使用しますが、発育卵胞数が多すぎると、卵巣過剰刺激症候群を引き起こすことがあります。卵巣過剰刺激症候群は、多数の卵胞が発育することによって卵巣が腫大し、増加したホルモンの影響で腹水が貯留したり、血液濃縮による血栓症を生じることがあります。

怖くて自己注射できません。どうしたらいいですか?

初めは自己注射に不安を感じる方も多いですが、自己注射の指導を受けていただくと多くの方はスムーズに実施できるようになります。また、ペン型の注射器には自己注射しやすいようにあらかじめ薬がセットされています。お腹や太ももに自分で注射するだけなので、慣れてしまえば難しくありません。どうしても怖い場合には、受診した医療機関に相談してください。無理をせず、ストレスを溜めないことも大切です。

注射するのを忘れました。どうしたらいいですか?

排卵誘発剤に関しては、予定時間を超過して1日以内であれば、気付いた時点で注射を打っていただければ問題ありません。ただし翌日になるまで打たなかった場合や、指定された時間を過ぎてしまった場合は、受診した医療機関に連絡してください。