不妊症と不育症の違いは?不育症の原因と検査について

最終更新日時:
2024-01-30
市山 卓彦
医師
torch clinic医師

妊娠・出産を希望しているものの叶わないカップルの場合、不妊症もしくは不育症の可能性があります。不妊症と不育症は定義や原因、治療法が異なるものです。この記事では不妊症と不育症の違いについて解説します。

不妊症と不育症の違い

不妊症と不育症は、ともに妊娠や出産が困難な状態を指しますが、その原因や定義に違いがあります。

不妊症は、妊娠を望む男女が一定期間避妊をしないで性交を行っても妊娠が成立しない状態を指し、一般的には1年以上性交を続けても妊娠しない場合に診断されます。

一方、不育症は、妊娠は成立するが流産や死産を繰り返して生児が得られない(出産できない)状態を指します。一般的には、原因にかかわらず流産を2回繰り返すと不育症といわれます。

それでは、不妊症・不育症それぞれの定義や原因、治療方法について解説します。

不妊症とは

不妊症の定義

「不妊症」とは、医療の手助けがないと妊娠が成立しない状態のことで、一般的には妊娠を望む男女が一定期間避妊をしないで性交を行っても妊娠しないことを指します。一定期間とは、「1年」が一般的な定義ですが、女性の場合は排卵障害や子宮内膜症などの理由で不妊となることがあり、加齢によっても妊娠しにくくなるため、1年を待たず早めにに検査や治療を受けることが望ましい場合もあります。

最近では約5組に1組のカップルが不妊症の検査や治療を受けたことがあるとされており、妊娠を望むカップルは、まずは自分たちのからだのことを知るために、産婦人科医に相談することが大切です。

不妊症の原因

不妊症の原因は男女ともに存在し、またその要因はさまざまです。

WHOのレポートによると、女性因子41%、男性因子24%、女性及び男性因子24%、原因不明11%であったと報告されています。

不妊症は女性にだけ原因があると思われがちですが、実際には約半数で男性側の原因があることが分かっています。

女性不妊

  • 排卵因子
    健康な女性では、月経開始日の約2週間前に排卵が起こり、女性ホルモンの分泌が変化し、子宮内膜が妊娠に向けて準備されます。しかし排卵障害のある女性では、生理周期が乱れていたり、出血があっても排卵をしていないこともあります。排卵がない原因には、病気や肥満、ホルモンバランスの異常などがあり、これらの場合は自然妊娠できる確率が低く医療の手助けが必要なことがあります。
  • 卵管因子
    精子や受精卵の通り道である卵管が炎症や癒着によって詰まると自然妊娠が困難になります。クラミジア感染症にかかったことがある場合や、子宮内膜症のある場合は、卵管が詰まっていることがあります。
  • 頸管因子
    排卵期には糸を引くような透明の帯下(おりもの)が増えますが、子宮頸部の手術や炎症によって頸管粘液が少なくなると、精子が子宮内に入りにくくなり、不妊症になる可能性があります。
  • 免疫因子
    抗精子抗体という精子を攻撃する抗体を持つ女性の場合、この抗体が子宮頸管や卵管に分泌されることで精子の運動性が失われ、不妊症になることがあります。
  • 子宮因子
    子宮内膜の近くにできた子宮筋腫や子宮内膜ポリープがあると受精卵が子宮内膜へ着床しにくくなり不妊症の原因になります。また、生まれつきの子宮の形態異常や過去の子宮手術の影響が原因になることもあります。

男性不妊

  • 造精機能障害
    精子の数が少ない、運動性が低い、または精子が作られない場合は妊娠が難しくなります。精子がうまく作られない原因は様々で、精索静脈瘤のような治療ができる疾患が原因のこともありますが原因が分からない場合もあります。
  • 精路通過障害
    精巣で作られた精子がペニスの先端にたどり着くまでの道が詰まっていると、精子が作られても精液中に精子が排出されず、妊娠が難しくなります。精巣上体炎などの過去の炎症や鼠径ヘルニア手術によって精管が詰まることがあります。
  • 性機能障害
    有効な勃起が起こらない勃起障害(ED)や、勃起はしてもうまく性行為で射精ができない膣内射精障害などがあります。これらの原因には糖尿病などの病気もありますが、最も多いのはストレスや不妊治療によるプレッシャーなど、心因性のものとされています。

不妊症の検査と治療

女性側の不妊症の検査には、経腟超音波検査や血液検査、子宮卵管造影検査などがあります。これらの一般的な検査で疾患が疑われる場合は、腹腔鏡検査や子宮鏡検査、MRI検査などの特殊な検査を行うことがあります。

男性側の不妊症の検査には、精液検査があります。マスターベーションで精液を採取し、精液量や精子の状態を調べます。

不妊症の主な治療法には、タイミング法、排卵誘発法、人工授精、さらに体外受精などの生殖補助医療があります。不妊の原因を取り除くために内視鏡手術(子宮鏡・卵管鏡・腹腔鏡)が行われることもあります。妊娠が達成されない場合、必要に応じて高度な治療へのステップアップを検討します。

不育症とは

不育症の定義

不育症とは、妊娠は成立するが流産や死産を繰り返して生児が得られない状態であり、流産を2回繰り返すと診断されます。ただし、ここでの流産は超音波検査で子宮の中に胎嚢が確認された後の流産を指し、生化学的妊娠の流産(妊娠反応が陽性となった後、超音波で胎嚢が確認される前に流産となること。「化学流産」と呼ぶことがあります)は数えられません。

流産を2回繰り返す頻度は約5%、3回以上繰り返す頻度は約1%といわれています。また近年は妊娠女性の高齢化により、流産率は高まっています。

不育症の原因

夫婦どちらかの染色体異常

夫婦のどちらかに染色体の構造的異常がある場合、卵や精子の形成過程において一定の頻度で染色体異常が起こります。そのため流産が頻発したり、染色体異常を持つ子供が生まれることがあります。

胎児(胎芽)の染色体異常

女性の加齢とともに、染色体の分離が不均等に起こり、染色体数の少ない(22本)または多い(24本)卵子が形成される頻度が高くなります。胎児(胎芽)の染色体異常は妊娠初期の流産の約80%を占めます。

子宮形態異常

子宮形態異常には先天性のものと筋腫や子宮腔癒着(ゆちゃく)による後天性のものがありますが、不育症との因果関係がはっきりしているのは先天性のものです。着床障害などによる胎児・胎盤への圧迫で、流産のリスクが高まります。子宮形態異常は早産や骨盤位(逆子)とも関係します。

内分泌異常

ホルモン分泌の異常のことです。甲状腺機能異常や糖尿病が不育症につながることがあります。

血液凝固因子(血栓性素因)異常

抗リン脂質抗体症候群やプロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症などによる血栓症が引き起こされ、血流が低下し、赤ちゃんに十分な栄養が届かず、流産や死産を繰り返すことがあります。

  • 抗リン脂質抗体異常
    抗リン脂質抗体という自己抗体が原因となる病気です。この抗体によって胎盤に血栓を引き起こし、不育症を起こすといわれています。
  • プロテインS欠乏症/プロテインC欠乏症
    プロテインSやプロテインCは、血液凝固を防ぐ作用があります。しかし、プロテインSやプロテインCが減少すると、血液凝固が起こりやすくなり、血栓塞栓が発生しやすくなります。妊娠中は、プロテインSの量が低下しやすいため、血栓症のリスクが高くなります。

不育症の検査と治療

不育症のスクリーニング検査には、以下のものがあります。2回以上の流産や死産、早期新生児死亡を繰り返した場合に、検査がすすめられます。

子宮形態検査

子宮に形態異常があっても、それが直接健康に影響を与えることは少なく、必ずしもすぐに手術が必要なわけではありません。治療の優先順位や手術の必要性、手術方法は、個々の状況や背景を考慮した専門的な判断が必要です。

内分泌検査

血液検査により、甲状腺機能亢進・低下症や糖尿病などの疾患がないかを検査します。

夫婦染色体検査

血液検査によって夫婦の染色体異常の有無を調べることができますが、検査実施前には十分な遺伝カウンセリングが必要です。染色体異常があった場合に、夫婦のどちらに異常があるのかを特定せずに結果を聞くという選択肢もあります。

抗リン脂質抗体検査

4つの抗リン脂質抗体(抗カルジオリピンβ2 グリコプロテイン I(CLβ2GPI)複合体抗体、抗カルジオリピン(CL)IgG 抗体、抗カルジオリピン(CL)IgM 抗体、ループス アンチコアグラント)のいずれか1つ以上が陽性で、12週間以上の間隔をあけて再検査しても再度陽性となる場合に、抗リン脂質抗体症候群と診断されます。