ピルの副作用とは?血栓症になりやすい人の特徴と予防について

最終更新日時:
2024-01-30
市山 卓彦
医師
torch clinic医師

避妊効果や生理諸症状の緩和などが期待できる低用量ピルですが、吐き気などの軽い副作用や、血栓症のリスクもあります。しかし、低用量ピルで血栓症を引き起こす確率は非常に低いものです。副作用を過剰に恐れる前に、まずは正しくリスクを理解しましょう。

ピルの副作用は?

低用量ピルの主な副作用には以下の症状があります。

  • 不正出血
  • 吐き気
  • 頭痛
  • 腹痛
  • 胸(乳房)の張り
  • むくみ
  • 眠気

上記の症状はマイナートラブルと呼ばれ、1~3ヶ月程度服用を継続するとホルモンバランスが整い、自然に症状が治まっていくケースが多いです。症状が長く続く場合は、医師に相談しましょう。

「ピルを飲むと太る」といった声が聞かれることもありますが、低用量ピルと体重増加の間に因果関係はありません。ただし、低用量ピルに含まれるホルモンにより、むくみ・食欲増進が見られることがあります。その場合は、食生活の改善や適度な運動などを心がけましょう。症状が強い場合は医師に相談し、薬の種類を変更することも可能です。

また、わずかながら子宮頸がんと乳がんのリスクが高まるとも言われています。低用量ピル服用の有無に関わらず、定期的にがん検診を受けることが大切です。[^1]

これらの軽い副作用に加えて、低用量ピルには血栓症というリスクの高い副作用があります。 発症確率は低いものの、そのリスクについて理解しておくことが大切です。

血栓症とは

血栓症とは、なんらかの原因で血液中に血のかたまり(血栓)ができ、血管がつまることで障害を引き起こす病気です。 低用量ピルの服用では、血栓症の一種である静脈血栓症(VTE)のリスクが高くなります。巷でよく耳にするエコノミークラス症候群も静脈血栓症に分類されます。

低用量ピルによって血栓症のリスクが上昇する理由

低用量ピルに含まれるエチニルエストラジオールというエストロゲン(卵胞ホルモン)には、血液凝固作用があります。 その上、体内の水分が不足することで脱水症状を起こした場合に血液が濃縮され、血栓症のリスクが高まってしまうのです。[^2]

血栓症のリスクが高い人の特徴

低用量ピルは誰でも服用できるわけではありません。血栓症や心筋梗塞等のリスクが高まるため、低用量ピルを服用できない方や、医師の管理下で慎重に服用しなければいけない方もいます。

以下に当てはまる方は、低用量ピルを服用することができません(絶対的禁忌)。

  • 35歳以上で1日15本以上タバコを吸う人
  • 50歳以上、もしくは閉経している人
  • 前兆を伴う片頭痛のある人
  • 重度の高血圧の人
  • 血栓症に関連する病気にかかったことがある人
  • 重度の肝障害のある人
  • 乳がんにかかっている人

以下に当てはまる方は、服用にあたり注意が必要です(相対的禁忌)。

  • 喫煙者
  • 40歳以上の人
  • 肥満の人(BMIが30以上)
  • 前兆のない片頭痛のある人
  • 軽度の高血圧の人(妊娠中の高血圧の既往も含む)
  • 糖尿病や脂質異常症などにかかっている人
  • 家族が血栓症に関連する病気や乳がんにかかったことがある人
  • 授乳中の人

その他の疾患等により処方できない場合もあります。必ず医師と相談し、服用を検討してください。

低用量ピルにより血栓症が起こる確率

低用量ピルの服用によって血栓症を発症する確率は、年間1万人に3~9人とされています。 一方、低用量ピルを服用していない場合に血栓症を発症する確率は、年間1万人に1~5人です。これらを比較すると、低用量ピルにより血栓症のリスクが高まっているといえます。

しかし、血栓症を発症するリスクは妊娠中や産後ではより高く、妊娠中では年間1万人に5~20人、産後12週間では年間1万人に40~65人と報告されています。 つまり、低用量ピルによる血栓症のリスクは、妊娠中や産後に比べると非常に低いのです。

また、低用量ピルの服用により血栓症を起こし、かつ死に至るのは10万人に1人と報告されています。これは交通事故で死亡する確率よりも低い値です。

血栓症が起こりやすいタイミング

低用量ピルの服用によって血栓症が起こりやすいのは、服用開始から3~4ヶ月以内の期間です。 長期的に服用することで、血栓症のリスクは低下します。

また、低用量ピルの服用を一度中断し再度服用する場合は、ピルを飲み始めたときと同様に血栓症のリスクが高まります。

血栓症の初期症状

血栓症の症状には以下のものがあります。

  • 足の痛み・むくみ・しびれ、ふくらはぎのだるさ(片脚だけに見られることがほとんどですが、両脚にみられることもあります)
  • 激しい胸痛や腹痛、突然の息切れ
  • 激しい頭痛、前兆(目がチカチカする)のある頭痛、めまい
  • 舌のもつれ、喋りにくい
  • 目がかすむ、視野が狭くなる

これらの症状が見られたら、直ちに低用量ピルの服用を止めて、医療機関を受診しましょう。その際、低用量ピルを服用していることを医師に必ず伝えてください。

血栓症の予防方法

日頃から以下の点を気をつけることで、血栓症を予防することができます。

  • 定期的に検査を受ける 血栓症は予期しづらいため、早期発見が大切です。そのため、半年~1年に1度は検査を受けることをおすすめします。 [^3]
  • 適度に運動する 移動中やデスクワークなどで長時間同じ姿勢でいると血流が滞り、血栓症が引き起こされます。定期的に軽い運動やストレッチを行いましょう。ふくらはぎの筋肉を動かすことで、脚の静脈の血行がよくなり、血栓ができにくくなります。
  • こまめに水分を取る 脱水状態になると血液が固まりやすくなるため、アルコール以外の水分を十分に補給しましょう。
  • 喫煙を控える タバコを吸っている人が低用量ピルを服用すると、静脈血栓症、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まります。禁煙する、もしくは喫煙量を減らしましょう。

低用量ピルの服用にあたり、血栓症などの副作用について不安に感じるかもしれません。しかし、低用量ピルによって血栓症を引き起こすリスクは極めて低く、正しく服用し日常生活で予防を心がければ、問題なく服用を続けることができます。 大切なのはむやみに副作用を恐れず、正しくそのリスクを理解することです。 低用量ピルにはさまざまなメリットがあります。「避妊効果を高めたい」「生理痛やPMSを軽減したい」などの悩みがある場合は、ぜひお気軽にtorch clinicを受診してください。 忙しくて来院の時間が取れない方や、遠方にお住まいで来院が難しい方には、torch clinicのオンラインのピル処方もおすすめです。

注釈

[^1]子宮頸がんについては、エストロゲン(E)とプロゲステロン(P4)による炎症性サイトカイン産生の抑制、すなわちHPVを排除する宿主免疫系の抑制によりリスクが上昇するとされています。乳がんについては、従来のエストロゲン含有量30μg以上の中用量ピルではリスクが上昇しますが、現在普及している低用量ピルについては、リスクは有意差なしという報告もあります。

[^2]日本産婦人科学会のOC・LEPガイドラインによると、低用量ピルによる血栓症リスクの機序は、低用量ピルに含まれるエチニルエストラジオール(EE)による①エストロゲン(E)内服の初回肝通過効果(薬物が全身を循環する前に肝臓を通った際、肝臓から出ている代謝酵素によって薬剤が代謝されること)によるもの、②凝固抑制系のプロテインSやTFPI(組織因子経路インヒビター)これらの蛋白の低下によるもの、とされています。

[^3]検査による血栓症の予期はできないとされており、血栓症の有症状時に検査が推奨されています。ただし、実際には年に1回程度、血液検査によりDダイマーという物質の量を確認することも多くあります。予防よりも、早期発見のために定期的な対面診療による症状確認が望まれます。