タイミング法の成功率は?妊娠率を上げるために試したいことを解説

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
上野院 院長 婦人科 生殖医療科 医師
お二人の道のりが明るく照らされるよう「理解」と「納得」の上で選択いただく過程を大切にしています。エビデンスに基づいた高水準の医療提供により「幸せな家族計画の実現」をお手伝いさせていただきます。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

タイミング法の妊娠率は1回の月経周期あたりで5%程度、継続することで累積の妊娠率は6か月で50%程度になると考えられています。妊娠を目指す上では指定されたタイミングで性交渉を持つほか、生活習慣を整えることなども気をつけたい点です。

この記事では妊娠率を上げるために試したいことや、タイミング法でなかなか妊娠できないときの次のステップなどを解説します。

タイミング法の成功率

タイミング法は、不妊治療の中でも最初のステップとして行われることが多い方法です。

タイミング法の妊娠率は、1回の月経周期あたり約5%とされています。継続して取り組むことで累積妊娠率は上昇し、半年ほど続けると50%程度が妊娠に至るとされています。その後は大きな上昇は見られず、横ばいで推移するようになります1)

そもそもタイミング法とは?

タイミング法とは、医師の指導のもとで排卵の時期を予測し、妊娠しやすいとされる排卵の1〜2日前から排卵当日にかけて性交渉をもつ方法です。不妊治療の中では身体的にも金銭的にも負担が少ない方法です。医師による指導を行う以外は通常の性交渉と変わらず、自然妊娠に近い方法となります。

排卵日を判断するためには、超音波検査で卵胞の大きさを確認したり、尿検査で排卵を促すホルモン(LH)の変化を調べたりします。必要に応じて血液検査も実施されます。一般的には、排卵日までに数回来院して排卵日の予測をし、必要に応じて排卵を促す薬(排卵誘発剤)を使用する場合もあります。

費用は1周期あたり保険適用で1万円前後が目安になりますが、排卵誘発剤の使用や種類によって変動します。なお、再診料や薬の調剤料なども別途負担となります。

タイミング法の対象となる人

タイミング法は、卵管や精子の状態に問題がなく自然妊娠をのぞめるカップルが対象です。あらかじめ不妊症の検査を行い、不妊の大きな原因がないような場合に実施される治療法です。

一方で、卵管の閉塞があったり、精子の濃度や運動率が低い、高年齢であったり不妊期間が長いなどの場合は、タイミング法を飛ばして別の不妊治療からスタートする場合もあります。

人工授精や体外受精へステップアップするタイミング

タイミング法を実施しても妊娠に至らない場合は、次の不妊治療へステップアップすることになります。一般的には人工授精が次のステップですが、個人の状況によっては体外受精に移行する場合もあります。

ステップアップのタイミングは、女性の年齢や不妊期間、卵管や精子の状態をもとに判断されます。

女性の年齢が比較的若く、不妊期間も短い場合には、タイミング法を続けることで自然妊娠を期待できると考えられています。一定期間のタイミング法を継続した上で妊娠が成立しない場合にステップアップが検討されます。

一方で、女性が高年齢(目安として37〜38歳以上など)の場合や、不妊期間が長い場合は、早い段階でのステップアップも検討されます。

タイミング法の成功率を上げるには?

タイミング法の成功率を上げるために実践したいこととして、以下のようなものがあげられます。

  • 指定されたタイミングを守る
  • 体重管理
  • ストレス対策
  • 禁煙
  • 下半身を温めすぎない(男性)

それぞれ解説します。

指定されたタイミングを守る

タイミング法の成功率を高めるためには、医師から指定されたタイミングで性交渉をもつことが重要です。

排卵日と妊娠率を調査した研究でも、最も妊娠率が高かったのは排卵の1〜2日前であることが知られており1)、予測された排卵日の数日前から性交渉を行うことが妊娠の可能性を高めることにつながります。

体重管理

適正体重の維持は妊娠成立に向けて重視される点のひとつです。

女性の場合、やせすぎだと貧血や骨粗鬆症の原因になり、肥満の場合は糖尿病や高血圧のリスクが高まるほか、妊娠率が下がることが知られています。男性の場合は、肥満になると精子濃度や運動性が低下します。

やせ・肥満の指標としてBMIが使われます2)。まずは自分のBMIを把握し、適正体重を目指すようにしましょう。

BMI=体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)

BMI 判定
18.5未満 低体重(やせ)
18.5以上25.0未満 適正体重
25.0以上 肥満

ストレス対策

妊活や不妊治療をはじめる際は、ストレス対策も意識しましょう。

女性の場合も、過度なストレスはホルモンバランスを崩し、月経不順を引き起こすことで妊娠の妨げとなる可能性があります。

男性の場合、男性ホルモン(テストステロン)はストレスの影響を非常に受けやすく、造精機能(精子量の減少や運動量の低下など)に影響が出ます。

十分な睡眠を確保して体をしっかりと休め、趣味や運動で気分転換を図り、心身のリフレッシュを心がけましょう。

禁煙

たばこは妊孕性(にんようせい:妊娠する力)に悪影響を及ぼします。

女性では、喫煙者は非喫煙者に比べて不妊のリスクが高くなると報告されています。さらに、喫煙者は閉経が数年程度早まることがあり、これは喫煙による卵胞の減少が影響していると考えられています3)

男性においても、喫煙は精子密度と運動性の低下、精子形態の異常などを招く可能性があります。

下半身を温めすぎない(男性)

健康な精子をつくるためには、精巣内の温度を体温よりも2〜6℃ほど低く保つ必要があるとされています。そのため、下半身を温めすぎないことが大切です。

具体的には、次のような工夫が推奨されます。

  • レギンスやしめつけの強い下着は控える
  • パソコンを膝の上において作業しない
  • 長時間同じ姿勢を続けない
  • サウナや長時間の入浴は避ける

日常生活の中でも、精子が熱に敏感であることを意識しながら過ごしましょう。

タイミング法でなかなか妊娠できない場合はどうする?

前述のとおり、タイミング法の妊娠率は1回の月経周期あたり5%前後と言われており、すぐに妊娠するような高い確率ではありません。指定されたタイミングを逃さずに、数回の月経周期で継続して試してみるようにしましょう。

その上で妊娠が成立しない場合は、医療機関と相談して次のステップを目指すことになります。

一方で、そもそもタイミング法がうまくできてない、指定されたタイミングでの性交渉ができていない場合は、その旨を医療機関に相談するようにしましょう。妊娠を目的とした性行為の場合は、男性側にもストレスがかかり、性行為がうまくできないことも少なくありません。

医療機関への相談で対処法やアドバイスや、次の治療法を検討することもあるため、まずは現状を共有することが重要です。

タイミング法に関するよくある質問

タイミング法に関するよくある質問にお答えします。

Q:タイミング法でも排卵誘発剤を使う?

排卵誘発剤とは、卵巣を刺激して排卵を促す内服薬や注射薬のことです。

タイミング法でも、排卵障害がある人や月経周期が不規則な人などは、排卵誘発剤を使用する場合があります。

使用する薬剤の種類は、不妊の状況や体の状態などから判断されるため、現在の状態を正確に医療機関に伝えるようにしましょう。

Q:生理不順や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でもタイミング法で妊娠できる?

生理不順や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でもタイミング法で妊娠を目指すケースがありますが、排卵日を予測するための検査や排卵誘発剤の使用が必要となります。

多嚢胞性卵巣症候群の人が妊娠を希望する場合、クロミフェンなどの内服薬が使用されることが多く、内服薬で卵胞が成熟しても排卵されない場合には、hCG注射剤を用いて排卵を促したり手術を検討することになります。

Q:性交渉から妊娠検査薬が反応するまでの日数は?

妊娠検査薬が反応するのは、月経予定日から約1週間後が目安です。

もし月経予定日が分からない場合や、月経不順がある場合には、性交後から約3週間以降が目安とされています。

不妊治療などで排卵誘発剤を使用している人は、妊娠検査薬の結果に影響を与える可能性があるため注意が必要です。

おわりに

トーチクリニックでは、ブライダルチェックや不妊検査を提供しています。恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックや不妊検査にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

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参考文献

1)日本産婦人科医会.9.タイミング.日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/lecture/9-%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0/

2)日本肥満学会.肥満度分類.日本肥満学会ウェブサイト
https://www.jasso.or.jp/data/magazine/pdf/chart_A.pdf

3)Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine; Practice Committee of the Society for Reproductive Endocrinology and Infertility. Optimizing natural fertility: a committee opinion. Fertil Steril. 2022;117(1):53-63. 
https://www.fertstert.org/article/S0015-0282%2821%2902130-0/fulltext