正常なカップルが、1回の生理周期でタイミングよく妊娠できる可能性は15%程度とされており、年齢によっても大きく変わってきます。この記事では、1回の生理周期における年代別の推定妊娠率の調査結果と、妊娠する可能性を高める方法、妊活中に気をつけたい生活習慣などを解説します。
1周期あたりの年代別の妊娠率
1回の性行為における年齢別の妊娠率の詳しいデータは多くありませんが、例として1回の生理周期における妊娠の成立しやすさを推定した研究結果があり、今回はその結果のうち自然妊娠(不妊治療を行っていない状態の妊娠)の推定妊娠率を以下に示します1)。
この調査では、最も推定妊娠率(中央値)が高かったのは24歳以下で18%であり、年齢が若いほど妊娠しやすい傾向があることが示されています。年齢を重ねるにつれ推定妊娠率は低下し、40歳以上になると1%という結果であり、妊娠の可能性は低くなります。
24歳以下と25〜29歳の推定妊娠率
24歳以下および25〜29歳の1周期あたりの推定妊娠率は、それぞれ18%、13%です。全世代の中で特に妊娠しやすい時期ですが、それでもタイミングよく1回の周期で妊娠できるのは10人に1〜2人程度にとどまります。
今回の調査における妊娠までの平均期間は、24歳以下で約6.5か月、25〜29歳で約7.0か月とされており、平均すると半年から1年以内に妊娠するケースが多い結果となっています。
30代の推定妊娠率
30代の1周期あたりの推定妊娠率は、今回の調査では30〜34歳で10%、35〜39歳では6%となっています。
一般的に30歳以降は徐々に妊娠率が下がる傾向があり、35歳を超えると顕著に低下することが知られており2)、この調査の結果でも同じ傾向が見られる結果となっています。
妊娠までの平均期間は、30〜34歳で約9.5か月、35〜39歳で9.8か月であり、20代よりも妊娠までの期間が長くなっていることがわかります。
40代以上の推定妊娠率
40代以上では1周期あたりの推定妊娠率は1%という結果であり、1回の周期における自然妊娠の可能性は非常に低くなります。
また、今回の調査では40代以上の妊娠までの平均期間は、自然妊娠で8.9か月という結果ですが、40歳以上の自然妊娠に至った対象者がわずか3人のため、今回の結果にはやや偏りがある可能性があります。
実際には、40代の自然妊娠では個人差が大きく、一般的には1年以上を要するケースも少なくないことが知られています。
女性の年齢による不妊の頻度の変化
女性は年齢によって妊娠率が低下しますが、不妊の頻度が上昇していることにもなります。
日本生殖医学会のサイトでは、不妊の頻度は25歳~29歳では8.9%であるのに対し、30~34歳では14.6%、35~39歳21.9%、40~44歳では28.9%まで上昇するとしています2)。
また、年齢を重ねると流産率も上昇することが知られています。平均的な流産率は15%程度ですが、40〜44歳の女性では50%以上になるという報告もあり3)、年齢を重ねると妊娠率に加え、流産率の面からも赤ちゃんの誕生が困難になるといえます。
1回の生理周期で妊娠する可能性を高める方法

1回の生理周期で特に妊娠しやすいとされる時期は、排卵日の2日前からとされています4)。これは、精子が女性の体内で約3〜5日間生存できる一方で、卵子の寿命は排卵後24時間程度であるためです。
排卵日の数日前から排卵日にかけて性交渉を持つことで、排卵のタイミングに合わせて精子が子宮内に待機できるため、妊娠の可能性が高まります。
妊娠のしやすいタイミングについては、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:妊娠の成功率を上げるには?妊娠しやすい時期、タイミング法についても解説
排卵日を予測する方法
前述のとおり妊娠しやすいタイミングを把握するには、排卵日を予測することが有効です。個人でもできる排卵日を予測する方法としては、以下があります。
- 基礎体温を測る
- 排卵予測検査薬を使用する
- おりものの状態を確認する
基礎体温を測る
基礎体温とは、朝目覚めてから体を動かす前に測る、安静時の体温のことです。
女性の基礎体温は、月経開始から排卵までの約2週間は低温期、排卵後から次の月経までの約2週間は高温期が続きます。
この体温の変化を毎日記録することで、自分の排卵パターンを把握しやすくなり、妊娠しやすい時期の予測に役立ちます。
ただし、体調の変化によって基礎体温が乱れることもあるため、数か月単位での傾向を見ることが大切です。
排卵予測検査薬を使用する
排卵予測検査薬は、尿中に含まれる黄体形成ホルモン(LH)の量を測定し、排卵日を予測するものです。
黄体形成ホルモンは普段から少量分泌されていますが、排卵直前に急増し、その後約40時間以内に排卵が起こるとされています。
そのため、検査薬で陽性反応が出た日とその翌日に性交渉を持つことで、妊娠の可能性が高まります。
おりものの状態を確認する
おりものは、排卵直前と排卵後で次のような変化が見られることが一般的です。
上記のような変化は、おりものの主成分のひとつである頸管粘液の変化が主な要因となります。排卵期になると頸管粘液の分泌が増えて水っぽい状態になるため、この時期のおりものも同様に量が増え、粘り気の少ないサラサラした性状となります。
ただし、個人差や体調による変化も大きいため、おりものの状態のみで排卵日を正確に把握するのは難しいです。参考程度にとどめておきましょう。
妊活中に気をつけるべき生活習慣
下記のように日々の生活習慣を整えることは、妊娠しやすい体づくりにつながるだけでなく、妊娠後の健康維持や赤ちゃんの発育にも良い影響を与えます。
- 適切な体重(BMI)を保つ
- バランスの良い食事を摂取する
- 適度な運動と十分な睡眠をとる
- 禁煙・禁酒する
妊娠に向けた体づくりとはいえ、特別なことをする必要はありません。日常の規則正しい生活を送ることが重要です。
タイミングをみて性交渉をしても妊娠しない場合はどうする?
妊娠しやすいタイミングで性交渉を行っても、期待した結果が得られない場合は、医療機関の検査を検討するようにしましょう。
ここでは、受診の目安や不妊の原因を調べる検査、治療の種類や進め方を紹介します。
妊娠しない場合の受診の目安
不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合とされています5)。
ただし、必ずしも受診まで1年待つ必要があるわけではありません。前述のとおり女性の妊孕性(にんようせい:妊娠する能力)は30歳を過ぎると徐々に低下し、35歳を超えるとそのスピードが加速します。そのため、35歳以上の人や不妊につながるような既往歴がある場合は、1年を待たずに受診を検討してもよいでしょう。
また、不妊の原因の約半数は女性側だけでなく男性側にもあるとされています。パートナーと検査や相談を行うことで、原因の特定や今後のライフプランに合わせた治療方針が立てやすくなります。
不妊症の原因を調べる検査
不妊症の原因を調べる検査として、一般的には以下のようなものがあります。
- 女性:超音波検査・AMH検査・女性ホルモン・感染症チェックなど
- 男性:精液検査・男性ホルモン・感染症チェックなど
これらの検査はブライダルチェックとして実施している医療機関も多くあります。ブライダルチェックに関しては、以下のページで詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
関連記事:女性ブライダルチェック
不妊治療の種類と進め方
不妊治療は原因や年齢、妊活の期間によって段階的に進められます。具体的には以下の順で治療を進めていきます。
- タイミング法
- 人工授精
- 体外受精 / 顕微授精
一般的にはタイミング法から始め、身体的・精神的な負担や費用を考慮し、必要に応じて高度な治療へとステップアップしていきます。
不妊治療のステップアップの流れは、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
おわりに
参考文献
1)Konishi S, Kariya F, Hamasaki K, Takayasu L, Ohtsuki H. Fecundability and Sterility by Age: Estimates Using Time to Pregnancy Data of Japanese Couples Trying to Conceive Their First Child With and Without Fertility Treatment. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(10):5486.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8161326/
2)日本生殖医学会. Q22 女性の加齢は不妊症にどんな影響を与えるのですか? 日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa22.html
3)日本生殖医学会. Q23 女性の加齢は流産にどんな影響を与えるのですか? 日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa23.html
4)日本生殖医学会. Q08 不妊症の治療にはどんな方法があり、どのように行うのですか? 日本生殖医学会ウェブサイト.
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa08.html
5)日本産科婦人科学会. 不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/