体外受精の成功率を上げる方法は?生活改善や食べ物について解説

最終更新日時:
2024-01-30
市山 卓彦
医師
torch clinic医師

体外受精は高度生殖医療のひとつで、卵巣で発育した卵子を採卵術で体外に取り出し、精子と受精させる治療です。受精方法は2種類あり、体外受精(c-IVF:Conventional-IVF)と顕微授精(ICSI:Intra Cytoplasmic Sperm Injection)に分けられます。

IVF(アイブイエフ)は卵子と精子を同じ培養液に入れ、精子自らの力で受精させる方法で、ICSI(イクシー)は顕微鏡を使って精子の形態や運動性を見ながら良好な精子を選択し、卵子の中に細い針で直接精子を注入する受精方法です。

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この記事では、I​​VFとICSIの両方を併せた体外受精の成功率や、妊娠率を上げる方法について解説します。

体外受精の成功率

日本産科婦人科学会の報告によると、2020年に日本では体外受精を用いた治療が449,900周期分行われています(採卵周期については、IVFは82,883周期、ICSIは151,732周期で、ICSIの方が多い状況)。

また、胚移植あたりの妊娠率は33.9%で、出生率は13.1%と報告されています。

体外受精の成功率が下がる理由

卵子の質の低下と減少

女性が有する残りの卵子の数は決まっています。というのも、卵子の元になる卵母細胞はすべて生まれる前に作られ、その後新たに作られることはありません。そのため排卵される卵子の年齢は実年齢とほぼ同じであり、加齢によって卵子の質が低下することで妊娠率の低下につながります。

これは体外受精を行う場合でも同様であり、33歳頃までの治療あたりの妊娠率は約3割ですが、その後徐々に低下し40歳では1~2割と報告されています。

精子の老化

女性だけでなく男性も、35歳以降では生殖補助医療による出産率が低下すると考えられています。

加齢は精子運動率や精子正常形態率に影響を与えるといわれており、精子の機能低下は体外受精における妊娠率の低下にもつながります。

体外受精の成功率を上げる方法【生活改善編】

ストレスを溜めない/解消する

ストレスにより女性の妊娠に関わるホルモンのバランスが乱れ、月経周期や卵子の質の低下に影響を与えることがあります。また、ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、不妊症や不育症の原因となることもあります。同様に、男性でもストレスを溜めることで、精子の量や質に悪影響を及ぼす可能性があります。妊活中はストレスを溜めないよう、自分に合った適切な解消方法を見つけることが重要です。

質の良い睡眠を取る

睡眠障害や短い睡眠時間が妊孕性(にんようせい:妊娠する力)に悪影響を与えるという報告もあり、質の良い睡眠を取ることは妊娠するためにとても重要です。規則正しい生活や体を温めることを意識しましょう。

体を冷やさない(女性の場合)

冷えは月経困難症などの症状にも影響するため、体を冷やさないよう心がけましょう。

適度な運動をしたり、温かい飲み物やショウガなどの根菜類を摂ったりすることで、冷え性を改善できます。

下半身を温めすぎない(男性の場合)

男性の場合は、精巣を温めることが精子に悪影響を与えると指摘されています。頻回のサウナや、膝の上にノートパソコンを乗せて長時間作業をするなど、原因となる行動はできるだけ控えましょう。

体外受精の成功率を上げる方法【運動編】

有酸素運動のような適度な運動は妊娠率の向上につながると考えられています。ただし、過度な運動は逆効果をもたらすこともあるため、注意が必要です。

また、BMIが30(kg/m2)を超えるような肥満が、妊娠率や流産率、男性の場合は精液所見に悪影響を与えるという報告もあります。

男女関係なく、日頃の適度な運動と体重コントロールを心がけましょう。

おすすめの運動

妊娠率を上げる適度な運動とは、ウォーキングや、ストレッチ、ヨガなどがあげられます。

ウォーキングの場合、汗ばむくらいの早歩きを毎日30分程度行うことがおすすめです。

ストレッチやヨガは、自律神経を整えてストレスを軽減するほか、女性なら血流が良くなることで子宮内膜に好影響を与えることを期待できます。

体外受精の成功率を上げる方法【食べ物編】

タンパク質の摂取

タンパク質は体の組織や体内のホルモンを作るのに重要な働きをするため、妊娠においても重要な栄養素です。

タンパク質は肉類・魚介類・卵類・大豆製品・乳製品に多く含まれています。

糖質を控える

糖質はエネルギー源となる栄養素ではあるものの、肥満・糖尿病は不妊症や不育症につながることがあるため、摂りすぎには注意が必要です。

白い糖質である白米や食パンなどよりも、茶色い糖質(玄米や全粒粉)のほうが血糖の上昇がゆるやかです。

妊娠に必要な栄養素の摂取

ビタミンD

ビタミンDが足りている女性は、体外受精での着床率が高いことや、卵巣予備能(卵子の残りの数)が高い傾向があることが報告されています。ビタミンDはきのこ類、魚肉(マグロ、サケ、サバ等)、卵黄などに多く含まれます。食事での十分な摂取が難しい場合は、サプリメントを活用しましょう。

葉酸

葉酸が不足することで、二分脊椎などの神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれる可能性が高まります。妊娠を希望する女性は、妊娠前からサプリメントを用いて積極的に葉酸を摂取しましょう。

鉄分

貧血のまま妊娠をすると、胎児が酸素不足により低出生体重児になる可能性があります。また鉄分は、子宮内膜を厚くしたり卵巣の老化を防ぐ働きもあります。鉄分はビタミンCと一緒に摂取することで、吸収率が高まります。

亜鉛

亜鉛は血中銅濃度を下げる作用があり、着床しやすい子宮環境を整えます。また男性の場合は、亜鉛が不足すると男性ホルモン(テストステロン)の合成や分泌機能、精子形成能力が低下します。亜鉛は牡蠣、豚レバー、牛の赤身肉、鶏肉、カニなどの魚介類に多く含まれます。

妊娠に関するビタミン・ミネラルについて詳しくはこちら

体外受精の成功率を上げる方法【医療編】

早めに不妊治療を行う

加齢は妊娠率の低下につながります。

加齢による卵子の質の低下により、女性の妊娠率は20代後半をピークに低下し、35歳を過ぎるとそのスピードが加速、40歳を過ぎると急激に低下します。

先述のとおり、体外受精においても加齢とともに妊娠率は低下します。

妊娠を希望する場合は、早めに不妊治療専門の医療機関を受診することをおすすめします。

自分に合った卵巣刺激法を行う

体外受精では多くの場合、卵巣刺激を行います。卵巣刺激とは、本来は1周期に1つずつしか育たない卵胞(卵子を含む液体の袋)を、排卵誘発剤を使用することで複数個育てて成熟させることです。

卵巣刺激の方法は、主に「高刺激法」と「低刺激法」に分けられます。

高刺激法では、採取できる卵子の数を増やすことで、一度の採卵術で妊娠につながる良好な受精卵(主に胚盤胞)を獲得できる可能性を高めます。また、場合によっては妊娠を終えた後の2人目・3人目のお子さんの妊娠に向けた胚の凍結保存ができることもあります。一方、デメリットとしては、使用する薬剤の量が増えて注射の回数が多くなることや、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まることがあります。

低刺激法は高刺激法と比べ注射の回数は少なく、OHSSのリスクは低いですが、獲得卵子数が少ない傾向にあります。

一概にどちらの方法が良いといえるわけではなく、torch clinicでは患者さまそれぞれに合わせて卵巣刺激法を決めております。