人工授精

最終更新日時:
2023-10-04
医師
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torch clinic医師

人工授精とは

人工授精(AIH)とは、排卵の時期に合わせて子宮の入口からカテーテルを挿入し子宮内腔へ処理された精液を直接注入する方法です。タイミング療法と異なる点は以下の通りです。

  • 精子が受精地点まで到達する距離が短くなります。
  • 採取された精液から動きの良い精子を濃縮して子宮内に届けられます。

「人工」と名前がついていますが、体外受精のように採卵手術をしたり、受精卵を子宮に戻したりする工程は必要なく、精子を子宮に注入する方法であるため自然妊娠に近く女性の身体への負担は少ない不妊治療です。

人工授精の適応

人工授精の適応については以下の要件があります。そして、人工授精を実施する際はパートナーの承諾が必要です。

  • 複数回のタイミング療法不成功例
  • 軽度の乏精子症(torch clinicでは精液中の総運動精子数が200万個以上の方)
  • 性交障害・ED・性感染症・仕事の都合などで性交渉がとれない場合

上記が主な適応となります。

人工授精が向いている場合

性交障害・ED・性感染症・仕事の都合などで性交渉がとれない場合

人工授精は排卵時期に合わせて精液を子宮内に直接注入する方法であるため、性交渉がうまくとれない場合にも有効です。

タイミング法を複数回行ったものの、妊娠を得られなかった場合

不妊の原因が治療で改善されている、もしくは原因不明不妊であり、タイミング法で妊娠を得られなかった場合は、ステップアップとして人工授精が選択肢のひとつに挙がります。

精液検査異常

・軽度の乏精子症(総運動精子数が200万個以上)

・運動率50%未満の精子無力症

・精液量1ml未満の乏精液症

人工授精が向いていない場合

両側の卵管に障害があり、かつ治療を行えない/行わない場合

人工授精での妊娠は比較的自然妊娠に近い方法であり、精子と卵子は卵管で出会います。そのため、卵管の通りに問題がある方では体外受精での治療をおすすめすることがあります卵管の通りを良くするための手術を行うこともありますが、予想される効果の程度や、体への負担に個人差があるため、方針については医師とよく相談する必要があります。

重度の乏精子症や精子無力症の場合

精子無力症とは、精子の運動率がとても低い状態のことです。
人工授精での妊娠が望めないほど重度である場合は、人工授精は行わず、体外受精や顕微授精を行います。

抗精子抗体が不妊の原因となっている場合(特に抗体価が高い場合)

抗精子抗体は精子を攻撃する抗体のことで、これがあると精子の運動性が失われ、不妊症になることがあります。男性も女性も抗体を持つことがあり、抗体価が高い場合には、人工授精での妊娠成立は難しく、体外受精・顕微授精の適応となります。

患者様のご希望に合わせて治療方法をご提案いたします。

院長の思い

この20年でセックスレスのカップルは増加傾向にあり、51.9%にものぼるという報告があります。愛情と性交渉は別物であり、排卵日に合わせて性交渉をとるのが難しいことは不自然なことではありません。排卵日には人工授精を選択する、あとは自由にコミュニケーションとして性交渉を持ってもいいと思っています。そうすると却って性交渉の機会が増えてくるカップルもいらっしゃいます。保険適用によってぐっと価格がおさえられたこともあり(1回の治療費は5,460円)治療の手段として選択していただきやすくなりました。

妊娠率

人工授精1回あたりの妊娠率は、約5〜10%とされています。最初の3–4周期までは累積妊娠率が徐々に上がり、累積妊娠率は5〜6回で横ばいになると報告されています。また、1周期中に授精を1回行う方法と2回行う方法がありますが、成績に大きな違いがあるという十分な報告はありません。1周期中に2回授精を行う場合、多胎妊娠のリスクがあるため妊娠合併症のリスクも高くなると言われており、当院では1回法を原則採用しております。

通院スケジュール

1周期あたりにかかる通院回数 :3〜5回タイミング療法より1回多くなります)
1回あたりの通院時間:15〜60分(院内の状況によって多少前後する場合がございます)

人工授精の精子処理

密度勾配遠心法にて精子を濃縮します。また、精子頭部の密度の違いから成熟した精子と未成熟の精子を分けます。

人工授精の方法

処置前の注意点

  • 処置による感染を防ぐため、感染症の検査(B型肝炎、 C型肝炎、 HIV、 梅毒、およびクラミジア)を患者様ご本人およびパートナーの方にお受けいただきます。

人工授精当日までのスケジュール

STEP① 月経期の診察

月経1〜5日目にご来院いただき、超音波検査や血液検査で今周期が人工授精に適しているかを検討します。この受診の際に排卵誘発剤をお渡しします。

STEP② 卵胞期の診察

月経10日目~14日目頃に来院いただき、超音波検査で卵胞の大きさ、子宮内膜厚を計測します。卵胞が十分な大きさ(20mm前後)に発育していることを確認したら、排卵誘発剤の注射と人工授精を行う日程を決めます。

STEP③ 人工授精前日

自宅またはクリニックでhCG注射による排卵誘発を行います。hCG注射を打つと約36時間前後で排卵するとされています。

当日のステップ

  1. 当日採精した精液をお持ちいただきます。(凍結精子を使用する場合もあります。)
  2. 精液の濃縮を行います。(所要時間:約60〜90分)この間は、院内でお待ちいただいても、院外でお待ちいただいても構いません。院外でお待ちいただく場合は医療スタッフへ一言お声掛けください。
  3. 外来診察室(内診台)にて、卵胞の状態や子宮の傾きを経膣超音波で確認します。
  4. 腟内に腟鏡(クスコ)を挿入します。
  5. 腟内を洗浄します。
  6. 子宮内に細いカテーテルを挿入し精液を注入します。(細いカテーテルを使用するため疼痛を伴うことはまれです。)カテーテルが入りにくい場合は鉗子を使用することがあります。

処置後の注意点

  • 処置後は特別に安静にしていただく必要はなく、運動や性交渉にも制限はありません。
  • 処置後に腟内から液体が漏れ出てくることがありますが、おおよそが洗浄液の為ご心配はせずにお過ごし下さい。

副作用・リスクについて

副作用・リスクについては以下のことが挙げられます。

  • カテーテルの挿入や鉗子の刺激により、出血を認めることがあります。
  • 人工授精の前に十分な洗浄を行いますが、カテーテルの挿入や精液の注入によって子宮内感染や腹膜炎を起こすことがあります。感染を起こした場合は抗菌薬の投与などを行います

回数とステップアップについて

4〜6回、人工授精をしても妊娠にいたらなかった場合は、体外受精や顕微授精を含めた治療方針の見直しを検討しましょう。必ずしも6回トライする必要があるというわけではなく、お二人のその時の希望・長期的なプランなどに合わせて方針を決定していきます。

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