セカンドオピニオンとは、主治医とは別の医師に意見を求めることで、不妊治療でも重要な役割を果たすケースがあります。本記事では、セカンドオピニオンを受けるべきタイミングや基本的な流れ、メリットや注意点のほか、セカンドオピニオンを受ける医療機関の選び方のポイントなどをわかりやすく解説します。
そもそもセカンドオピニオンとは?不妊治療における役割
セカンドオピニオンとは、現在の主治医とは別の医師に、治療方針について意見を求めることです1)。
不妊治療では、思うような結果が得られず、治療が長期化するケースも少なくありません。「本当に自分に合った治療なのか?」という不安や疑問が出てくることもあります。セカンドオピニオンは、そのようなときに「第2の意見」を得る手段となります。
他の医師の意見を聞くことで別の視点が得られたり、選択肢が広がったりすることがあります。また、現在の治療への理解がより深まるケースもあります。
不妊治療におけるセカンドオピニオンは、自分が納得して治療を進めるための大切な選択肢のひとつです。
不妊治療でセカンドオピニオンを検討するタイミング
現在の治療に疑問がある場合、セカンドオピニオンを検討するタイミングとなりえます。
例として以下のような場合があげられます。
- 治療を続けていても妊娠に至らないとき
- 主治医の説明や治療方針に不安があるとき
- 勧められた治療に疑問があるとき
すべての人に必要ではありませんが、治療への不安や迷いが続く場合は検討の目安といえるでしょう。
具体的なタイミングについて解説します。
治療を続けていても妊娠に至らないとき
セカンドオピニオンを検討するタイミングとして、治療が長期化しているケースが挙げられます。
不妊治療を長期間続けているのに成果が出ないと、「今の方法以外に選択肢はないのか」と不安になることもあるでしょう。
セカンドオピニオンを受けても、結果として現在の治療法を続けることが最適という結論もあります。しかし、別の医師からも同じ意見をもらうことで、納得感を持って治療に臨めるというメリットがあります。
主治医の説明や治療方針に不安があるとき
主治医の説明や方針に不安があるときも、セカンドオピニオンが選択肢となります。
「もっと詳しく聞きたい」「別の方法もあるのでは」と感じることは珍しくありません。
たとえば、説明が理解しきれなかったり、質問しづらい雰囲気がある場合、他の医師に相談することで理解が深まり、不安が解消されることがあります。
勧められた治療に疑問があるとき
勧められた治療に疑問がある場合も、セカンドオピニオンを検討するタイミングのひとつといえます。
費用が高額であったり体への負担も少なくない治療の場合、すぐには決断できないことも少なくありません。
「今進むべき?」「他に方法は?」と感じ担当医と充分話し合っても解消できなければ、他の医師の意見を聞くことで判断材料が増えることもあるため、セカンドオピニオンを検討してみてもよいでしょう。
不妊治療では納得感が重要
不妊治療は長期間に及ぶことも多く、患者側の納得感は重要といえます。
NPO法人が実施した不妊治療に関するアンケートでは、全体で77.4%の人が「転院した(あるいはしたい)」という回答をしています。
転院の理由は「妊娠しなかったから」が52.9%と最も多い反面、「医師の対応がよくなかったから」が48.6%、「ここではやっていない治療を受けたかったから」が33.2%など、治療内容だけでなく、医師とのコミュニケーションや治療方針への納得感も大きく影響していることが分かります2)。
現在の診療内容や治療方針に不安や疑問がある場合、そのままにすると納得感を損なう可能性があります。別の医師から意見を聞くことで理解が深まり、納得につながることもあるため、必要に応じてセカンドオピニオンを検討する方法も有効です。
不妊治療でセカンドオピニオンを受けるメリット
セカンドオピニオンを受ける最大のメリットは、治療に対する納得感が高まり、前向きに治療を進めやすくなることです。
不妊治療は、長期間にわたって通院や治療を重ねることが多く、不安や迷いを抱える場面も少なくありません。
他の医師の視点を取り入れることで、自分の状況を客観的に整理し、新たな選択肢を知れる可能性もあります。また、自分自身の思い込みや不安がやわらぎ、「このまま治療を続けていいんだ」と安心にもつながるケースもあるでしょう。
不妊治療でセカンドオピニオンを受けるときの注意点
セカンドオピニオンはメリットも多いですが、受ける際にはいくつか注意しておきたい点もあります。
まず、セカンドオピニオンは転院して別の医師のもとで治療を受けることではありません。診療や治療方針について意見を求めるためのもので、治療を継続する場合は現在の医療機関で受けることが一般的な流れとなります。
費用の面でも注意が必要です。多くの場合は自由診療となるため、費用負担が増えます。また、紹介状や検査データのコピーなどが必要な場合もあり、準備に数日〜数週間ほどかかるケースもあるでしょう。
また、相談先の病院探しや予約に時間がかかれば、その間に治療を一時中断する可能性もあります。
セカンドオピニオンを検討する際は、費用や受診の流れ、必要書類などを事前に確認することが大切です。
主治医へどう伝える?セカンドオピニオンの切り出し方
セカンドオピニオンを受けたい場合は、まずは主治医に紹介状を書いてもらうのが一般的ですが、主治医へお願いしにくいと感じるケースもあるかもしれません。
主治医にセカンドオピニオンを受けたいことを伝える場合は、自分が不妊治療の理解を深め、納得感を持って治療をすすめたいということを正直に伝えるのがよいでしょう。
主治医の先生側も、紹介状を作る場合は資料を準備したりすることで負担がかかることがあるため、誠意を持って伝えることを心掛けましょう。
セカンドオピニオンの基本的な進め方
セカンドオピニオンを受ける際は、主に以下の流れで進めていきます。
<セカンドオピニオンの進め方>
- ファーストオピニオンをよく理解する
- セカンドオピニオンを受ける病院を探す
- 必要な手続きを確認し主治医に紹介状などを依頼する
- セカンドオピニオンを受ける
- 結果を主治医に報告し、今後の方針を決める
受診先の選び方から受診後の対応まで、基本的な流れを順を追って解説します。
1. ファーストオピニオンをよく理解する
セカンドオピニオンを受ける前に、まずはファーストオピニオンである現在の主治医の意見や治療方針を理解することが重要です。
ファーストオピニオンの内容の理解を深めることで、自分がなぜセカンドオピニオンを受けたいのかを改めて確認することができます。また、主治医ともしっかり話し合うことで、不安が解消されたり、結果としてセカンドオピニオンが必要なくなる可能性があります。
まずは今の状況をしっかり把握し、本当にセカンドオピニオンが必要なのかも含め、しっかりファーストオピニオンを理解するようにしましょう。
2. セカンドオピニオンを受ける病院を探す
セカンドオピニオンを受ける意思が固まったら、受ける病院・クリニックを探しましょう。
不妊治療に対応していることはもちろん、相談内容に適した診療科や専門性があるかも確認が必要です。主治医との関係性が悪くない場合は、セカンドオピニオン先も相談してみるのもよいでしょう。
病院のウェブサイトや相談窓口を利用して、対応状況や費用、予約方法などを調べておくとスムーズです。
3. 必要な手続きを確認し主治医に紹介状などを依頼する
希望する病院・クリニックが決まったら、問い合わせて必要な手続きを確認しましょう。
予約や受診の方法、費用、準備する書類などを確認する必要があります。
紹介状や今までの検査データなどが必要となることが一般的であるため、主治医に相談してこれらの書類を準備してもらうようにしましょう。
4. セカンドオピニオンを受ける
セカンドオピニオンを充実させるには、事前の準備が大切です。限られた時間の中で的確なアドバイスを受けるために、聞きたいことや確認したい点を整理しておきましょう。
「今の治療を続けてよいのか」「他に選択肢はあるのか」といった疑問をメモに書き出すと、当日スムーズに相談できます。
また、受診にはパートナーも同席するのが理想です。医師の説明について一緒に理解を深めることで、今後の方針をより具体的に考えやすくなります。
セカンドオピニオンは、ふたりが納得して治療を選択していくための大切な機会です。しっかりと内容を理解し、自分たちが納得感を持って進められるようにしましょう。
5. 結果を主治医に報告し、今後の方針を決める
セカンドオピニオンで得た情報は主治医に共有しましょう。
セカンドオピニオンは、主治医以外の医師から病気や治療法に関する意見を聞く場であり、新たな治療が開始されるわけではありません。
大切なのは、得た意見を今後の治療に生かすことです。他の医師の意見を踏まえ、どのような治療が望ましいかを主治医と共に検討してください。医師にゆだねるだけでなく、自分が納得し選択できる不妊治療にしていきましょう。
不妊治療でセカンドオピニオンを受ける医療機関を選ぶポイント
セカンドオピニオンを受ける際は、信頼できる医師や医療機関を選ぶことが大切です。自分の希望や状況に寄り添ってくれるかどうかも重視したい点です。
ここからは、医療機関選びで押さえておきたいポイントを解説します。
セカンドオピニオンを実施している医療機関を探す
まずは、医療機関の候補を見つける必要があります。セカンドオピニオンを実施している医療機関であるかは、ホームページなどを確認したりすることで調べることが可能です。
地域の不妊治療を実施している病院やクリニックを調べたり、現在受診している医療機関にセカンドオピニオンを実施している病院やクリニックを聞くなどの方法で探してみましょう。
不妊専門相談センターを活用する方法もある
自分で探すのが難しかったり、受診している医療機関には聞きづらいなどの場合は、地域の不妊専門相談センターを活用する方法もあります。
不妊専門相談センターは、不妊について悩む夫婦などを対象に、医師や助産師などの専門家が相談に乗ってくれる公共機関のサービスです3)。
医療機関の相談ができるほか、不妊専門相談センターへの相談自体がセカンドオピニオンの役割になるケースもあるため、セカンドオピニオンを受けるべきか悩んでいる場合や、手軽に相談したい時なども選択肢となります。
全国の不妊専門相談センターは以下のページから確認できます。
参考サイト:全国の不妊専門相談センター一覧(こども家庭庁)
医療機関の方針や費用なども確認する
セカンドオピニオンを受ける医療機関の候補が決まったら、その医療機関の方針や費用も確認しておくようにしましょう。
医療機関がどのような考え方や方針で診療を行っているかは、セカンドオピニオンを受ける上でも重要な点です。セカンドオピニオンの目的はよりよい担当医を探すためではなく、現在の診療や治療方針が適切であるかの意見をもらうことです。
自分が納得できる意見をもらえそうか、という点に着目して確認してみるのもよいでしょう。
また、不妊治療のセカンドオピニオンは原則は保険適用外となるため、金額面もしっかりと確認しておきましょう。
不妊治療のセカンドオピニオンに関するよくある質問
不妊治療のセカンドオピニオンを検討する際に、よくある質問をまとめました。
セカンドオピニオンの費用はどのくらい?
前述のとおり、セカンドオピニオンは自由診療(保険適用外)となるのが一般的で、費用は医療機関により異なります。
目安として、5,000〜10,000円程度の価格帯が多くなっています。
トーチクリニックでは15分につき5,000円でセカンドオピニオンを実施しています。
おわりに
参考文献
1)厚生労働省. セカンドオピニオン. 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳. 厚生労働省ウェブサイト.
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1628/
2)松本亜樹子. 「納得の治療」とは~患者が求める「支援対話」を考える~ 支援対話研究. 2014;2:61-73.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jadcs/2/0/2_61/_pdf
3)こども家庭庁. 不妊に悩む夫婦への支援について. こども家庭庁ウェブサイト
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/funin/tokutei

