生理が始まったと思ったら血が出ないとき、それが一時的なものなのか、妊娠や病気のサインなのか不安になる方も多いでしょう。
この記事では、生理で血が少ない・少量の時に考えられる原因や病気、妊娠との見分け方、セルフケアや対処法、受診の目安を解説します。
生理が始まったと思ったら血が出ない…これって病気なの?
生理が始まったと思ったら血が出ない、もしくは量が少ない場合、月経異常のサインかもしれません。
正常な生理は、25〜38日周期で3〜7日間の出血があり、経血量は20〜140ml程度が一般的とされています1)。
月経異常には、出血が2日以内で終わる「過短月経」や経血量が極端に少ない「過少月経」などがあり、ホルモンバランスの乱れや排卵障害、子宮・卵巣の疾患が原因となることがあります1)。
一時的な体調変化で済むこともありますが、同じことが繰り返される場合は注意が必要です。
生理が始まったと思ったら血が出ない時に考えられる理由
生理が始まったと思ったら血が出なかったり、経血の量がいつもより少ない時に考えられる理由として、以下のようなものが考えられます。
- 痩せすぎ
- 肥満
- 強いストレス
- 加齢に伴う卵巣機能の低下
- 排卵出血(中間期出血)
ここでは、それぞれの原因について見ていきましょう。
痩せすぎ
生理の量がいつもより少ない原因として、痩せすぎによるホルモンバランスの乱れが挙げられます。
特にBMIが19以下、体脂肪率21%未満の痩せ体型は、月経不順・無排卵・無月経のリスクが高まり、20代であっても卵巣年齢の高齢化を引き起こす可能性はゼロではありません2)。
また、痩せすぎは子宮内膜症や骨密度の低下、将来的な不妊症や低出生体重児のリスクとも関連します。
BMIは「体重(kg) ÷ 身長(m)2」、体脂肪率は家庭用体組成計などで測定可能です。
見た目だけでなくBMIと体脂肪率を確認し、必要があれば体重や栄養状態を見直すことが大切です。
肥満
生理が始まったと思っても血が出ないと感じる場合、肥満も一つの原因です。
脂肪組織が増えると、エストロゲンの過剰産生やインスリン抵抗性が起き、排卵がうまくいかなくなります。
BMI25以上の肥満体型では、ホルモンバランスの乱れによって無排卵周期や過少月経が起こりやすく、月経周期が乱れることも報告されています2)。さらに、体脂肪率28%以上の場合は、卵巣年齢の加速や将来的な妊娠率の低下にも影響する可能性があります2)。
生活習慣の見直しによって排卵機能が改善するケースも多いため、体重管理と食生活の調整が重要です。
強いストレス
生理の量が少ないと感じる原因の一つに、強いストレスの影響があります。
ストレスを受けると、脳の視床下部が影響を受け、性腺刺激ホルモンの分泌が抑制されることで、排卵や月経のリズムが乱れます3)。これにより無排卵や過少月経、さらには一時的な無月経が起こることもあるのです。
特に、受験・就職・転職・人間関係などの精神的ストレスだけでなく、過労や睡眠不足などの身体的ストレスも影響します。
加齢に伴う卵巣機能の低下
生理が始まったと思ったら血が出ない、経血の量が少ない原因の一つに、加齢に伴う卵巣機能の低下があります。
40代以降は女性ホルモンの分泌が徐々に減少し、排卵が不安定になることで、経血量の減少や周期の乱れ、不正出血が見られることも珍しくありません。
閉経が近づくにつれて、月経のパターンも大きく変化するため、変化が気になる場合は婦人科で相談してみましょう。
排卵出血(中間期出血)
生理の量がいつもより少ない原因の一つに、排卵出血(中間期出血)が挙げられます。
排卵の前後にはホルモンの急激な変化によって、1〜2日程度の少量出血が起こることがあり、月経と区別しにくい場合もあるでしょう。
排卵前後の出血は「異常子宮出血」に含まれますが、妊娠中の出血や子宮頸部からの出血(不正性器出血)とは異なります4)。
排卵出血は病気ではないことが多いものの、頻繁に起こる場合は婦人科を受診して確認すると安心です。
妊娠の可能性はある?着床出血との違いやセルフチェックのポイント
生理の量が少ないと感じたとき、妊娠の可能性を心配する方もいるでしょう。特に妊娠初期には、着床出血やホルモン変化による体調の変化が起こることがあります。
ここでは、生理との違いや見分け方、セルフチェックのポイントを解説します。
着床出血との見分け方
着床出血は妊娠初期に見られる軽い出血で、生理と見分けがつきにくいことがあります。見分けるポイントは、出血の時期・量と基礎体温です。
妊娠初期は子宮頸部の血管が発達するため、出血しやすくなります。受精後1~2週間ほどで受精卵が子宮内膜に着床すると、少量の出血や点状出血が起こることがありますが、大きな問題を示すものではありません5)。
基礎体温が高温期のまま継続している場合は、妊娠の可能性が高まります。生理と着床出血との見分け方が気になる方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:着床出血はいつ起こる?色や量と生理との違いについて解説
妊娠検査薬の使用タイミングと注意点
妊娠の可能性があり、生理が始まったものの量が少ないときは、妊娠検査薬の活用も一つの方法です。
市販の検査薬は、生理予定日の1週間後からの使用が推奨されています。結果が陰性でも生理が来ない場合は、数日おいて再検査してみましょう。
ごく初期の妊娠では「生化学的妊娠」が確認されることもあり、異常とは限りません。不安が続く場合は、医療機関でより詳しい検査を受けると安心です。
妊娠初期のその他の症状
妊娠初期には、微熱(基礎体温の高温期が続く)、乳房の張りや痛み、強い眠気、倦怠感、情緒の不安定さなどが現れることがあります。
こうした変化はホルモンバランスの変化によって起こるため、着床出血と合わせて妊娠のサインとして現れるケースもあります。
生理の量が少ないと感じたときは、妊娠の可能性も視野に入れて他の症状にも目を向けることが大切です。
生理で血が出ない・少量のときに考えられる病気
生理で血が出ない、あるいは生理の量がいつもより少ない原因には、病気が関係している可能性も全くないとはいえません。
代表的なものとして、以下のような病気が挙げられます。
- ホルモンバランスの異常による病気
- 子宮や卵巣の病気
- その他の内分泌疾患
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ホルモンバランスの異常による病気
生理で血が出ない、あるいは生理の量がいつもより少ない原因の一つに、ホルモンバランスの異常による病気が関係していることがあります。
具体的には、以下のような病気が代表的です。
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 高プロラクチン血症
- 早発卵巣不全(POI)
これらの病気では、無排卵周期が続いたり排卵がうまく起こらなかったりすることで、子宮内膜が十分に厚くならず、経血量が極端に少なくなる・止まるなどの症状がみられます。
中でも早発卵巣不全(POI)は、40歳未満でも卵巣機能が低下して無月経(3か月以上月経がない)になる状態で、放置すると将来的な妊孕性(にんようせい:妊娠する力)にも影響する可能性があり、早期の受診と検査が重要です。
子宮や卵巣の病気によるもの
生理の量が少ない原因として、子宮や卵巣の病気が関与することがあります。
特に、子宮内腔癒着症では、手術や炎症の後に子宮内膜が癒着し、経血量の減少や無月経を引き起こすことがあります。また、子宮発育不全や子宮奇形など、先天的な子宮の形態異常でも、過少月経や不正出血が見られることがあります。
気になる症状があれば、早めに婦人科で検査を受けることも検討しましょう。
その他の内分泌疾患によるもの
生理の量がいつもより少ない原因には、甲状腺や下垂体など内分泌系の病気が関係していることがあります。
たとえば甲状腺機能低下症では、代謝の低下により月経周期が長くなったり、経血量が減ったりするケースは少なくありません。また、下垂体機能低下症では性腺刺激ホルモンの分泌が抑制され、無排卵や過少月経の原因になると考えられています。
こうした疾患は、血液検査によってホルモン値を調べることで発見できるため、不調が続く場合は早めの相談が大切です。
生理で血が出ないときのセルフケア・対処法
生理で血が出ない、あるいは経血量が少ないと感じるとき、妊娠などの原因がないときには、生活習慣や体調の変化を振り返ることも大切です。
例えば、基礎体温を記録して体の変化を把握することも有効な方法です。ホルモンバランスの乱れは日常生活の影響を受けやすく、セルフケアによって整えられる可能性もあります。
次に紹介する方法を参考に、できることから見直してみましょう。
基礎体温を記録して体の変化を把握する
生理の量が少ない、あるいは血が出ないと感じたときは、基礎体温を記録して排卵の有無を確認するのがおすすめです。
基礎体温には、排卵前の低温期と排卵後の高温期があり、これらの二相性が見られるかどうかで排卵の有無をある程度推測できます。
生理が少ない周期でも、体温のパターンを毎日記録しておくことで、医師に症状を正確に伝えやすくなります。診察時に基礎体温表を提示すれば、より的確な判断につながるでしょう。
生活習慣を整えてホルモンバランスを整える
生理の量が少ない、または血が出ないと感じるときは、生活習慣の乱れがホルモンバランスに影響している可能性があります。
特に栄養不足や睡眠の質の低下、急激なダイエットや体重増加、過度な運動などは、脳の視床下部にストレスを与え、排卵や月経のリズムを乱す要因になります。
生理を整えるためには、まず1日3食を意識し、睡眠と運動のバランスを保ちながら、心身のストレスをため込まないことが大切です。
生理で血が出ない・少量のときの受診のタイミング
「生理が始まったと思ったら血が出ない」といった状態が一時的なものであれば、様子を見るのも一つの選択です。
しかし、2周期以上続くようであれば、月経異常のサインとして婦人科を受診することが勧められます。自己判断で放置せず、早めに相談することで、将来の妊娠に向けた体の準備にもつながります。
婦人科を受診する前には、以下の情報をメモしておくと診察がスムーズになります。
- 基礎体温
- 出血の開始日
- 出血量
- 持続日数
- 痛みや不正出血などの有無
- 服用中の薬剤など
- 体重増減や環境変化などストレスの有無
特に、将来的に妊娠を希望している場合や、排卵障害やホルモン異常が疑われるようであれば、早めに受診しましょう。
おわりに
参考文献
1)厚生労働省,働く女性の心とからだの応援サイト,月経について
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menstruation.html
2)厚生労働省,働く女性の心とからだの応援サイト,体型について。やせすぎ、太りすぎのリスクと対策
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/column-9.html
3)厚生労働省,雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会,働く女性の健康課題とその対策
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001233454.pdf
4)公益社団法人日本産科婦人科学会,異常子宮出血と不正性器出血
https://www.jsog.or.jp/citizen/5710/
5)American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG),Bleeding During Pregnancy
https://www.acog.org/womens-health/faqs/bleeding-during-pregnancy