カウンセリングとは、専門家との対話を通して自分の気持ちや考えを整理し、前向きに進むためのサポートを受けることです。とはいえ、実際には何を話すのか、そもそも相談してもいいのか悩む人も少なくありません。この記事では、カウンセリングの意味や必要とされる理由、不妊治療における役割について解説します。
カウンセリングとは?
カウンセリングとは、悩みや不安を専門家に話しながら、気持ちを整理していくサポートのことです。
一般的なカウンセリングの意味
カウンセリングとは、一般的に「相談」や「助言」を意味する言葉です1)。
カウンセリングでは、悩みや不安を抱える人が、専門家との対話を通して気持ちや考えを整理し、自分の中にある思いや考えに気づくことを支えます。
人間関係や仕事、家庭、将来への不安など、日常生活に関する幅広い悩みに活用されています。
カウンセリングの目的と効果
カウンセリングの目的は、悩みや不安の直接的な解消ではなく、相談者の気持ちや考えを整理し、自分らしい選択ができるよう支援することです。
気持ちを言葉にすることで、頭の中が整理され、客観的に自分を見つめ直すことができます。
実際にカウンセリングを受けることで、自分の考え方のくせに気づいたり、気持ちが整理されてすっきりしたりする人もいるでしょう。
カウンセリングは、前向きに問題と向き合う力を取り戻すサポートといえます。
カウンセリングが必要とされる理由
ここでは、カウンセリングが必要とされる理由について解説します。
不安やストレスを感じる人が多いため
令和4年の厚生労働省の国民生活基礎調査によると、12歳以上のうち約46.1%、およそ2人に1人が「悩みやストレスがある」と回答しています2)。原因はさまざまで、主に仕事や人間関係、将来への不安などがあります。
例えば、不妊治療では次のような理由から、心の負担を感じやすくなります。
- 治療の結果が出ないことへの焦り
- 気持ちを共有できない孤独感
- 治療費や通院時間などの負担
カウンセリングは、こうした不安やストレスを言葉にして整理し、心の負担を軽くするためのサポートを行います。
周囲に相談しにくい悩みもあるため
悩みや不安を抱えていても、内容によっては周囲に打ち明けられない人は少なくありません。令和5年に実施された国の調査によると、約1割の人が「相談すると相手の負担になる」と感じており、相談することを抵抗に感じる人もいます3)。
特に不妊治療では、治療の結果が思うように出ないつらさや、パートナー間の関係性の変化など、繊細な悩みを抱えやすい傾向があります。
カウンセリングでは、話しづらい内容でも専門家が守秘義務のもとで受け止めるため、安心して本音を話せる場所として利用されるケースが多いです。
第三者に話すことで気持ちが整理しやすいため
利害関係のない第三者に不安や悩みを話すことで、気持ちや考えを整理しやすくなります。
専門家は相談者が安心して話せるよう、気持ちを否定せずに耳を傾け、客観的な立場から受け止めてくれます。
また、医療機関などの専門家には守秘義務があるため、相談内容が外部に漏れることは原則ありません。
安心して本音を話すことで、気持ちが整理され、前向きな気持ちを取り戻すきっかけになるでしょう。
不妊治療のカウンセリングでは何を話す?目的や役割
不妊治療におけるカウンセリングでは、主に次のような話をします。
- 治療中の不安や悩みの整理
- 夫婦で治療に向き合うためのサポート
ここでは、不妊治療のカウンセリングでどんなことを話すのか、目的とあわせて解説していきます。
治療中の不安や悩みの整理
不妊治療におけるカウンセリングでは、患者が前向きに治療を継続できるよう、主に治療の過程で感じる不安や焦り、葛藤などを中心に話します。
実際に、国立成育医療研究センターの調査によると、高度不妊治療を受ける女性は次のようなストレスを感じていることが明らかになっています4)。
- 終わりの見えない治療への不安(28%)
- ひとりで抱え込む苦しみ(25%)
- 高額な治療費(17%)
- 自分らしさを見失う「アイデンティティの揺らぎ」(15%)
特に「終わりの見えない治療への不安」を抱える女性のうち、約70%が抑うつ症状を示したという結果もあります。
カウンセリングでは、こうした不安や悩みを整理し、前向きに治療へ向き合えるよう支援します。
夫婦で治療に向き合うためのサポート
カウンセリングでは、夫婦が同じ方向を向いて治療に取り組めるようサポートも行います。
不妊治療は身体的・精神的な負担が大きく、前述したとおり、高度不妊治療を受ける女性の約4分の1が「ひとりで抱え込む苦しみ」をストレス要因として挙げています4)。
また、男性側にも「支えたいけれど、どうしたらいいかわからない」といった葛藤が生じやすいため、夫婦で一緒にカウンセリングを受けることも推奨されています。
カウンセリングでは、夫婦それぞれの思いや考えを整理し、相手の立場を理解するきっかけをつくります。
心理的サポートを通して、治療の進め方や方針を一緒に考えられるよう支援し、前向きに治療へ取り組める関係づくりをサポートします。
不安を感じたときに相談できる窓口
不安やストレスを感じたときの相談先の例として以下があげられます。
- かかりつけ医や信頼できる医療機関に相談する
- 自治体や公的機関の相談窓口を活用する
気持ちが不安定になったり、どうすればいいのかわからなくなったりした場合は、ひとりで抱え込まず、専門家や公的な相談窓口を活用してみてください。
かかりつけ医や信頼できる医療機関に相談する
通院している医療機関がある場合は、まずは主治医やかかりつけ医に相談してみましょう。かかりつけ医なら体調の変化や治療の経過を把握しているため、状況に合わせて気持ちの整理や今後の対応をサポートしやすい場合があります。
特に不妊治療中の人は、治療の進み具合や体調の変化が心の不安につながることも少なくありません。治療の内容や結果に対して不安を感じたときに、担当医に話すことで客観的なアドバイスや、次のステップを一緒に考えるきっかけになります。
どの診療科を受診すべきか迷ったときも、まずはかかりつけ医に相談することで、今の状態に合った対処法を提案してもらえることがあります。
自治体や公的機関の相談窓口を活用する
医療機関以外にも、自治体や公的機関が運営する相談窓口があります。たとえば、市区町村の保健センターや、都道府県・指定都市に設置されている精神保健福祉センターなどでは、こころの健康や生活に関する不安などの悩みに専門の相談員が応じています。
また、全国共通の「こころの健康相談統一ダイヤル」では、電話をかけた地域の公的相談窓口につながります。
不妊に関する悩みがある場合は、都道府県や市区町村が設けている相談窓口を活用するのも一つの方法です。
たとえば東京都では、「東京都不妊・不育ホットライン」を通じて電話相談が可能です。お住まいの地域によって実施している内容が異なるため、詳しくは各自治体のホームページを確認してみましょう。
カウンセリングに関するよくある質問
ここでは、カウンセリングに関してよくある質問に回答していきます。
カウンセリングを受けた方がいい人は?
カウンセリングは、悩みに対して考え込んでしまうときや、気持ちの整理がうまくいかないときに利用する人が多いです。
不妊治療中は、検査や治療の結果が思うように出ないときや、パートナーとの温度差を感じるときなど、精神的な負担を抱えてしまっていると感じる場合は、カウンセリングの利用を検討しても良いでしょう。
カウンセリングは保険適用される?
カウンセリングは、一般的に健康保険の適用外で行われる自由診療です。
ただし、不妊治療の中で行われる指導やアドバイスなどは、保険適用の治療の一環として含まれる場合もあります。必要な相談は遠慮せずに、担当の医師や看護師に相談してみましょう。
また、自治体や公的機関で実施しているカウンセリングでは、無料で相談できるケースもあります(電話の場合、通話料はかかります)。
利用できる窓口や費用の有無については、お住まいの自治体のホームページで確認してみましょう。
おわりに
参考文献
1)厚生労働省. カウンセリングについて. 厚生労働省 こころもメンテしよう 〜若者を支えるメンタルヘルスサイト〜
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/counseling/index.html
2)e-Stat政府統計の総合窓口. 国民生活基礎調査 令和4年国民生活基礎調査 健康
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0002040959
3)内閣官房孤独・孤立対策担当室. 人々のつながりに関する基礎調査(令和5年)
https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zenkokuchousa/r5/pdf/tyosakekka_gaiyo.pdf
4)国立研究開発法人 国立成育医療研究センター. 高度不妊治療を受ける女性が感じるストレス要因が明らかに「終わりの見えない治療」が最多、治療方針をともに考える支援が必要
https://www.ncchd.go.jp/press/2023/1005.pdf

