妊娠をしても流産を繰り返してしまう場合は不育症に該当する場合があります。不育症の検査はさまざまなものがあり、保険適用でできるものもあります。この記事では、不育症の検査の内容や費用・保険適用の条件、助成金について解説します。
不育症とは?
不育症は、不妊症とは異なり、妊娠自体は成立するものの妊娠の継続が難しい状態を指します。ここでは、不育症の定義や不妊症との違いについて詳しく見ていきます。
不育症の定義と頻度
不育症は、2025年に改訂された定義で「流産あるいは死産が2回以上ある状態。生児の有無は問わず、流産または死産が連続していなくてもよい。」とされています1)。
流産は妊娠22週未満、死産は妊娠22週以降に赤ちゃんが亡くなることです。流産の多くは胎児の染色体異常など、偶発的な原因で起こるとされています2)。
「不育症管理に関する提言2025」では、不育症の頻度は5%で日本には不育症に該当する女性が35万〜50万人程度いると推定されています3)。
不育症と診断されても、すべての場合で妊娠の継続が難しいわけではありません。適切な検査や治療、カウンセリングを受けることで、次の妊娠・出産に備えることが重要となります。
不育症と不妊症との違い
不育症と不妊症は、どちらも妊娠に関する問題ですが、その内容は異なります。
不妊症は、日本産科婦人科学会では「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合」と定義されています4)。
一方、不育症は前述のとおり、妊娠が成立しても「流産あるいは死産が2回以上ある状態(生児の有無は問わず、流産または死産が連続していなくてもよい)」です。
妊娠までの過程に課題があるのが不妊症、妊娠の継続が難しいのが不育症という違いがあります。
不育症の検査では何をする?主な検査項目と内容
不育症の検査では、さまざまな項目を調べて原因を探ります。主な検査は以下のとおりです。
- 抗リン脂質抗体関連検査
- 子宮形態検査
- 夫婦(カップル)の染色体検査
- 胎児(胎芽)の染色体検査
- 内分泌検査
- 着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)
それぞれ解説します。
抗リン脂質抗体関連検査
抗リン脂質抗体関連検査は、血液中に妊娠の継続を妨げる抗リン脂質抗体がないかを調べる血液検査です。
抗リン脂質抗体が体内に存在すると、血栓ができやすくなり、流産や死産、早産、胎児発育不全などのリスクが高まることがあります。ループスアンチコアグラント(LAC)、抗CLβ2GP I 複合体抗体IgG等複数の項目があります。
陽性の場合は血液が固まりにくくなる薬などを使って治療する場合があります。
子宮形態検査
子宮形態検査は、子宮の形や構造に異常がないかを調べるための検査です。
通常は経腟超音波検査を最初に行い、子宮形態異常が疑われる場合や超音波検査でわかりにくい場合は、子宮鏡検査や子宮卵管造影検査、MRIなどが実施されます。
子宮の形態に異常がある場合は、流産や子宮内胎児死亡、早産などの原因となるため、上記の検査で確認します。
異常が見つかった場合は手術などで対処する場合もあります。
夫婦(カップル)の染色体検査
夫婦(カップル)の染色体検査は、どちらかに染色体の構造異常がないかを調べる目的で行われる血液検査です。
カップルに染色体均衡型転座などが見つかった場合、卵子や精子ができる過程で遺伝子のバランスが崩れることがあり、受精卵に異常が生じやすくなり、それが原因で流産となることがあります。
近年は、体外受精による受精卵の一部を検査し、異常のない胚のみを子宮に戻す「着床前構造異常検査(PGT-SR)」が選択肢になることもあります1)。ただし、倫理的な課題や費用、長期的な安全性についても理解したうえで、医師や専門家と十分に相談することが大切です。
胎児(胎芽)の染色体検査
胎児(胎芽)の染色体検査は、流産した赤ちゃんの絨毛組織(胎盤の一部)を採取して、その中の細胞から染色体を調べる検査です。
絨毛は胎児と同じ遺伝情報を持っているため、この検査で流産の原因が胎児の染色体数の異常によるものかどうかが確認されます。
流産の原因としては最も多いと考えられており、流産の50〜80%に胎児・胎芽の染色体の数の異常がみられると考えられていますが1)、流産後の検査で実施されないことも多く、その場合は原因不明と判断されることも多くなります。
両親の卵子や精子には異常がなく不育症検査で問題が見つからない場合、主に胎児・胎芽の染色体の数の異常が流産の原因であることが多いです。そういった不育症の原因がない場合には、特別な処置をしなくてもその後の妊娠で、約88%の方が無事に出産にいたると言われています。
内分泌検査
内分泌検査は、血液検査によって体内のホルモンや代謝の状態を調べる検査です。
不育症の検査では、主に甲状腺ホルモン(FT4、TSH)や、糖尿病の指標となる血糖値やHbA1cなどを調べます。
甲状腺ホルモンの異常は、妊娠の成立や維持に影響を及ぼす可能性が知られています。
また、糖尿病は流産や死産のリスクを高めるため、血糖値のコントロールも重要です。異常が見つかった場合は、薬による治療や生活習慣の改善が行われます。
着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)
着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)は、体外受精で得られた胚(受精卵)の一部の細胞を採取し、染色体の数に異常がないかを調べる検査です。
欧米では約20年にわたりPGT-Aが行われてきましたが、日本では倫理的な課題から長らく導入されていませんでした。社会的ニーズの高まりにより、2014年から日本でも臨床研究として一部施設で開始されました1)。
現在までの調査でPGT-Aの効果については、妊娠率や流産率の改善につながらないという報告があります。一方で、胚移植できる人や体外受精をしている人に限った場合は改善した報告もあり、現在も調査が続けられている検査です。
不育症検査の費用はどれくらい?保険適用の条件や助成金
不育症検査の費用は、検査内容や保険適用の有無によって大きく異なります。
保険適用の条件と費用
不育症の検査や治療のうち、有効性や安全性が確立しているものは医療保険の対象となります。
たとえば、血液検査での染色体検査や自己抗体検査に含まれる抗リン脂質抗体検査、超音波での子宮形態検査などです。
また、2022年4月からは、流産手術後の胎児(胎芽)の染色体検査(絨毛染色体検査)も保険適用となりました。
主な不育症に関連する検査と保険点数、3割負担の費用の例は以下のとおりです(令和6年の診療報酬5))。
上記の例は、検査そのもののみの費用であり、実際には実施する検査の項目や組み合わせの内容、さらに診察料などもかかるため検査全体の費用は個人によって大きく変わります。
保険適用外になる場合
不育症検査は新しい検査法もあり、保険適用外の場合も少なくありません。たとえば、抗リン脂質抗体検査の一部やPGT-Aなどは2025年時点では保険適用外となります。
自費での不育症検査を実施している医療機関では、一般的な血液検査でのスクリーニングで40,000〜50,000円程度の費用が目安となります。
トーチクリニックでは、着床不全スクリーニング・不育症スクリーニングとして、以下の内容と金額で実施しています。
不育症検査は助成を受けられるケースもある
自治体によっては不育症検査の費用の一部を助成を受けることができる場合もあります。
東京都では、不育症検査助成事業を実施しており、不育症検査にかかった自己負担額について、5万円を上限に助成を受けられます6)。
おわりに
参考文献
1)日本不育症学会. 不育症について. 日本不育症学会ウェブサイト
http://jpn-rpl.jp/join/about-rpl/
2)東京都福祉局. 不育症とは. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.ninkatsuka.metro.tokyo.lg.jp/huiku-kisochishiki/
3)「不育症管理に関する提言」改定委員会. 不育症管理に関する提言2025. こども家庭庁ウェブサイト
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/57921560-ab1e-4032-bb58-eb62f0bce33d/e24df942/20250617_policies_boshihoken_fuiku_09.pdf
4)日本産科婦人科学会. 不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/
5)厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 令和6年厚生労働省告示第57号 別表第一 医科点数表. 厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001251499.pdf
6)東京都福祉局. 不育症検査助成事業の概要. 東京都福祉局ウェブサイト
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/josei/fuikushoukensa/gaiyou

